身体の直感の因果

 今宵の満月は見事な存在感。空気が澄んでいたのだろうか、中秋の名月から約二ヶ月経過しているが綺麗であった。

 昨日月曜日は高田馬場でT氏と稽古。私の事情で一月半ほど間が空いてしまったのでT氏には申し訳なかったが、こうして月曜日は確実にお越し頂けるので私としても互いの稽古における感が途切れないのは有り難い。金山剣術稽古会では基本的に毎週参加される方を対象に稽古をおこなっているが、お仕事の事情などで月に一回であったり、しばらくお休みされる方もいる。しかし私としては、何かのついでではなく、この場を主として武術稽古に心掛け励んで頂く方を望んでおり、共に研究し高い目標の中で稽古が出来る人との出会いを求めている。私の活動も以前に比べれば多少なりとも関心を持って下さっている方もいらっしゃると思われるので、いつしかご縁の中で自然と形になっていくものだと思っている。

 昨日の稽古では、T氏にお伝えしながら私はゆっくりと動いていた際になにやら自身の身体における変化をどこからともなく感じた瞬間があった。それはなんとも形容しがたいのであるが、柔らかいような温かいようなそれは心というよりは身体の雰囲気から感じたものであり、特に掌から感じた不思議なものであった。何もしていなくても「何かいつもと違うな…」と思える手の雰囲気であったが、妙に納得している自分もあり、一瞬であったがそのような瞬間を感じていた。

 「身体への信頼。」これはここ近年特に意識させられていたものであるが、無意識の能力に委ねる、といった確証の無いものから実感を得られることを体感し、いつしかそれが当然の思考の働きとなった。

 それが、ここ最近はより実感が強くなり始め、まるで嗅覚が鋭くなったかのように、何かしらの匂いに敏感になってきた気がする。それを気のせいと感じるか、身体の直感の因果を信じられるか、そこには余計な心が介在しないほうがいい。直感にも因果が働いていると思われるので、ただそれに従い感じ決定して行く事で、自然と成って行くものと思える。

 どうしてそのような因果が起こりうるのかは解らないが、武術稽古における身体と心と思考と、そのほかにもさまざまな要素が入り組んだ中で意識的にも無意識的にも因果に向って物事は作用しているものだと思える。そうしたことは歳を重ねるごとに信じられるものとなってきた。

 一体私が何を言っているのか不明な方が多いと思われるが、言葉にしてもしなくても、文字にしてもしなくても、伝えなくても伝わるものが在り、それも不思議なものであるが、そうしたことは随分前から感じていたことである。武術稽古とは、そうした因果を実感する場でもあり、何かを信じることへの導きがあるようにも思える。

 人は生を受け、どのように生きていくのかを考える。さまざまな所にその人の居場所があるのだと思うが、その居場所を探せないで苦労している人も多い。おそらくその人にとっての居場所とは、辛くて苦しい中で死守するものではないだろう。見栄やプライドや過剰な欲求を取り除けば、時間は掛かっても本来のその人にあった居場所が見つかる筈である。見栄やプライドや過剰な欲求のために人生を捧げて来た人は、その後が苦しいだろう。そのようなものはシースルーであり、まったく余計なものでしかないので飾ることをやめ、心身に訪れる因果は誤魔化せないので、そこと向き合う事でしか本質的な部分は救済されないのだろう。そこに気が付けるかどうかは、人間である以上非常に難しいものであるが、武術稽古というその時代においての最重要課題を念頭に身体を観ていく稽古は、いつの時代においても必須なものであり、もはやそれは武術稽古というカテゴリーには収まりきれないものがある。

 憑依的な文となってしまったが、私も一行下がどのような文面になるのか不明なままキーボードを叩いている。しかし勿論その文面の意識は私の中にあるものなので、全く勝手なことを書いているつもりは毛頭ない。
 
 
 さて、本日火曜日は午前中の「クラーチ剣術教室」で講習をおこなってきました。今日は久しぶりにIさんがお越しになられ全員参加となりました。病状が軽くなられたときにお越しになられますので私も安心いたします。講習では少し脚部を鍛える内容をおこない、その後久しぶりに「杖主転廻」を稽古いたしました。これは杖を主体に回転軸と回転速度を変えずに体が転じて廻るというもので、短い動きの形ですが皆さん熱心に、気が付けば四十分間休憩無しでした。時間には気が付いていたのですが、皆さんの表情と様子を観察しながらキリの良い所にて休憩といたしました。

 講習の最後は先日のGold Castleでもおこなった「横鹿威し」をおこないました。これは差し出された木刀に誘われやすいため、どうしても大振りになったり、力が入り過ぎてしまうものです。如何に自らを見失わないように事に当れるか。刃と刃を打ち合わせるものですが、誘われない意識を持つ事の方が稽古になります。

 皆さん最後まで集中して稽古されておりました。先ほどのIさんも、歩幅はとても小さいのですが木刀同士ががよく当っておりましたので、刃と刃を真っ直ぐに当てる事は難しいものですが、当たる毎にニコニコと笑顔が見られ楽しんで終える事が出来ました。


 講習後は、一年振りに三軒茶屋に行き、玉川屋履物店で雪駄を購入しました。ここでは毎年この時期に来年の元旦から履きおろす高下駄を作って頂いているのですが、今年は朴歯の密度が高いのか履き潰せずに一年を終えそうなので、高下駄の注文はせず、先日傷んで裂けてしまった雪駄を購入したのでした。ここは女将さんが切り盛りされており、毎年職人でもある女将さんに鼻緒を前ツボ20㎜ですげて頂いており、履き潰すまでにこの鼻緒がビクともしないのには毎年驚かされております。

 一年ぶりにお店に伺ったところ、甥っ子の男性が見習いとして鼻緒をすげるようになっており、女将さんの血筋なのか同じく人柄の良い気持ちの良いお人柄でした。玉川屋履物店はこれからも続いてくれることを願っております。

 今日はその裂けた雪駄の変わりに、以前ある方に頂いた雪駄を初めて履いて行ったのですが、実は凄く良い雪駄であることが女将さんと甥っ子の男性から知らされ、帰りの道中は歩くのが勿体無いと思えるようになってしまい、何とも現金なものだと歩きながら苦笑してしまいました。確かに足元は疎かに出来ないのですが、安い雪駄でも、高価な健康サンダルよりも歩き易く耐久性もあり、演武も出来るほど足に馴染みますので、普段履きはやはりこれまでの物が最適であると思っております。

 帰宅後、夕方からはこれもまた一年振り位にA先生に身体を観て頂きました。

 もうかれこれ十数年になりますが、私が武術を始める前からお世話になっていた治療院の院長先生が昨年移転され、診療内容がこれまでと変わり、完全個人予約で一時間集中的に身体を観てもらえるようになりました。随分あとから知ったのですが、実はA先生はある流派の武道を伝承されている総師範でもあり武術雑誌の特集やDVDなども出されております。今となっては私もそうなのですが、世間は狭いというか、不思議なご縁を私は感じております。しかし、私も存分に稽古が出来るのもA先生の手によって身体を観て貰うことが出来るからであり、これまでに何度も身体の不具合を助けていただいたことからも、また先生のご性格からも信頼しきっております。贅沢を言えば毎月でも行きたいと思うのですが、私も杖整体操を考案してからというもの、酷く調子が崩れることが無くなって来ましたので、中々行く機会を失っておりました。しかし約一年振りに身体を観て頂いて、調子が悪くなくても定期的に観て頂くことは必要かなと感じました。悪くないからこそ今のうちに手を打っておくという事も身体を有効に使う仕事を主とするものとしては大事なものであると考えます。

 一旦帰宅した後、インフルエンザの予防接種へ。

 私の場合、日々人と会い接する仕事をおこなっていますので、あまり注射等はしたくないのですが、この対策は万全でなくともしておかなければなりません。クラーチでも入館時にはマスク着用となりましたので、これから暫く用心が必要になってきます。

 
 諸々用件があった一日でしたが、普段と違うところに行ったり人と合うのは楽しいものです。病院で「金山さんはいつもオシャレさんですね。」と帰りの支払いの際に受付の女性に言われてしまいまいましたが、私としては一年を通じて2パターンしか着ていないので、オシャレも何も無く、稽古のため高下駄を履くには作務衣が私の場合いいだろうと思ったことからいつも同じものを着ているだけなので、別にオシャレをしているつもりも毛頭無く、毎日の事なので、たまにジロジロと二度見三度見、先日は四度見され、何故人が見ているのか眼光鋭くなりそうな時もありますが、よくよく考えますと自分の格好の事を完全に忘れているというか、普通としか思っていませんので、人に見られることを好んでこういう格好をしているとだけは思って欲しくないところです。

 昨年から髪の毛を伸ばし現在完全に長髪となってしまいましたが、昨年2月に撮影したWEB動画「かざあな。」を終えて、どういう訳か、「ああ、もう短髪はこれまでだな」と思うようになり、毎月切りに行っていた髪も、四ヶ月間隔になり、お陰で髪を切りに行く手間が減少したことと、経済的にも負担が少なくなったこと、そして更衣室で藍染めの稽古着を着ていても剣道の人達に間違えられなくなったことが大きな利点です。高下駄で歩いていても、髪もこんな感じであれば上も下もで中和される感じがあり、抜け毛の長さが気になる以外はこれで良かったのだと思っております。しかしながらおそらく、髪の毛を解いた姿と洋服(作務衣にTシャツは別として)を着ている姿を人前に見せることは無いでしょう。尤も洋服は殆んど捨てましたので着れるものがあるのか分かりませんが…

 その「かざあな。」予告編、杖術編、剣術編、抜刀術編、すべての音楽を制作してくださったTAMTAMのMariさんとTakaさんの音楽映像がこちらの記事のリンク先から視聴できます。
tamtam25周年special企画のnew音楽映像up 


 話は変わり、(いつものことですが…) 2020年からGold Castle 殺陣&剣術スクールの時間割に、不定期ですが土曜日に「殺陣基礎クラス」を追加したいと考えております。現在土曜日は「剣術クラス」と「杖術クラス」を隔週毎におこなっておりますが、こちらはこのまま継続しもう一コマ追加分として「殺陣基礎クラス」をおこなう予定です。

 会場予約の都合で毎週とは行きませんが、現在一月と二月は二週ずつ確保出来ております。内容は、読んで字の如く「基礎」を重点的におこなうものといたします。日曜日のクラスでも基礎をおこなった後に立廻り抜き出し稽古等をおこなっておりますが、品川区開催が増え殺陣クラスでおこなう基礎稽古の時間が少なく感じられるようになったことと、新しい生徒にとってもジックリと基礎に時間を費やせるクラスが必要であると思い、以前おこなっていた土曜殺陣クラスを不定期ですが復活させようと思います。ただ、以前は土曜日も立廻りを取り入れておりましたが、今度は基礎的な形と動き、それらを身に入るまでおこないたいと思います。ですので、生徒の皆様にとりましても、チョット休みが続いて基礎を集中しておこないたいという方や、立廻りにまだ身体が付いていけないと思われている方にとっては朗報と言えるものとなるでしょう。私としましても、生徒を伸ばすことが主宰者としての使命でありますから、そうした状況を受けて変化して行かなければなりません。

 金山剣術稽古会の「土曜日稽古会」を12/28の稽古納めを持って暫く中断し、その枠をGold Castleの生徒達に使いたいと思います。

これによりGold Castle 殺陣&剣術スクールのクラスのバリエーションも、
日曜日 【殺陣&剣術】 【殺陣&杖術】 【殺陣(深川開催)】
土曜日 【剣術】 【杖術】 【殺陣基礎クラス】

このようにバリエーションが広がりましたので、入会されてご自身の好みに合ったクラスに調整してお越しいただくことも可能です。
大まかには、「全部やりたい人」、「殺陣だけをやりたい人」、「殺陣以外を全部やりたい人」、「殺陣の基礎をやりたい人」、という風に分かれていくようになると思います。しかしながら、殺陣だけでは動きの質が変わらず上達いたしませんので、同時に剣術や杖術を受けていただきたいと思っております。そうした中で、「自分は人よりも遅いタイプかもしれない」と思われている方は、土曜日に不定期開催する予定の【殺陣基礎クラス】で存分に納得出来るまで基礎に励んでいただきたいと思います。このクラスは立廻りをいたしませんので、望まれる方は日曜日にもお越しください。


 一つの記事にいろんなことを書き過ぎてとっちらかってしまいましたが、書ける内に何とか書き収めました。今夜(未明?)はこの辺で就寝したいと思います。


 金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


2019年12月07日(土)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

金山剣術稽古会

2019年11月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文


2019-11-13(Wed)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
北九州市門司区出身
世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者住宅 クラーチ溝の口
クラーチ剣術教室講師

パークシティ溝の口
杖術 巴の会主宰

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