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水を掻く原理

 今日はA氏との研究稽古であった。ゴールデンウィークの日曜日であるがなんとも清々しい天気であった。気のせいかもしれないが、日曜日らしく感じられる景色の色を感じてしまう。

 密度の濃い稽古であった。まず、杖における現在の身体の使い方の説明と実践。居着きを消すには軸足が無防備であってはならない。初めから終わりまで、移り変わる軸足とともに腹に意識をおいた、浮きが重要である。この操法は半年前の自分とは全く別物であるため、杖における稽古内容も、稽古指導もずいぶん変わることになる。これは杖術にとどまらず、。抜刀術でも剣術でも同じ操法である。この中心部(下丹田)のまとまりをどう扱うかということが、現在の私の核となる部分であり、おそらくこの部分に関しては変わることはないだろう。

 居着かず焦らず滞らず水を掻く原理で、相手と馴染むように間合いから速さから力加減を自然に最適となるようにおこなう。むずかしいテーマであるが、このことに気付いたのは、真剣での袈裟斬りによる素振りからで、その力と刀の関係から、水を掻くようにかき回す感覚が沸き起こり、己のみの速さや力だけでは思うように動かせないことに気付いた。重心の崩しや、構造的による関節の崩し、とは違う、浸透した最適な加減というものがあるように思えた。人体の60%~70%は水分であるため、その水分と水分をどのように浸透させ、最適な加減を、構造と技術で扱えるかということが、大きなテーマであるが、私が実感として気づいたキッカケである真剣からの感覚にあるように、真剣でなくとも、剣術稽古や杖の稽古でその感覚に近づけるのではないかと思っている。

 組杖稽古で私自身「そう変わってきたか」と実感できたのは、ある型において予測した現象を再現しようとしないことである。予測通りになればそれはそれでいいが、事細かに、間合いや歩数、突きの角度まであえて決めていないので、その状況に応じて居着かず焦らず滞らず自然に自分がどう動いたかということが重要で、そこに対する意識が自然にできていた。これは、杖の稽古でまさに居着かず焦らず滞らずに連動性を持ち続けおこなったことが身体に記憶されていたのだろう。もちろん、そのための脚足の使い方というものがもっとも重要な点ではあるが。

 抜刀術においては、左脚が前に出る「抜き付け」である。これは鞘引きをしようと鞘を前に出すと危険であるし、鞘を割る可能性もある。右脚を支点に踏んだまま左脚が前にでても斬撃力は全く生まれない。かといって左右の差し替えになってしまえば、速さはでるが、抜き付けというよりは斜刀になるだろう。この最近の「抜き付け」は、重心が前方に移動するのと、身体が沈み込むのが同時におこなわれ、その斬り終えた残心の姿は、まるで猛禽類が得物に襲い掛かかる直前に頭を下げたような格好である。

 「趺踞」からの抜刀も、腹の感覚を練るのには有効な稽古である。さらにタオル抜刀(右手でタオルを落とし床に着くまでに抜刀して打ち当てること)で実際に抜刀しなくても、タオルを持つことで、そこから抜刀が成功する準備を身体が整えようと細かく動き出す。呼吸も薄く小さく無意識の内に変わっている。これは極めて身体から引き出す感覚を掴むのに良い稽古だと思う。実際に、抜刀で成功したのは数えるほどしかないのだが(以前公開されていた動画にあったのだが、現在は削除されてしまっている)とにかく、趺踞からタオルを手首で上に投げることなく、ただ摘んだものを離してから抜刀するのは他に成功した人を見たことがない。もちろんやろうとする人もいないだろう。ただこれは、現在の身体の使い方を検証するためのひとつの手段であり、これを成功させるための稽古にしてしまうのは本末転倒になるだろう。ただ、繰り返して言えば、タオルを持つだけで身体があちこち調整をし始める。

 剣術ではA氏のおかげでいろいろと検証することができた。まず、下段からの表交差と裏交差による間合い感覚の違いである。人間は危機感の度合いで間合いの遠近を感じるのではないだろうか・・・・・・
 
 鍔競りからの胴斬りにおいては、思っていた以上に有効であった。圧力を変えずに、近間だからこそ相手から見えない脚足の使い方がこの場合効果的であった。重心移動にともなう胴斬り(横斬り)が体幹の威力とともに、相手の間合いから外れながら斬れることも分かった。

 このようにさまざまに検証できた稽古であったが。いちばんの収穫は、現在おこなっている研究稽古の方向性と内容が、こういった使える人との久しぶりの稽古でも生きてくるということが実感できたことだ。

 形をなぞるのではなく(初めはそこから入ってもいいが)自分の身体と向き合って、探し出せていけるようになると、稽古の進展と楽しさが格段と上がるだろう。私自身、まだまだ気づきもしない身体の使い方や、原理など、どのようにして自分の身体に取り入れるか、道は果てしなく遠いが、その道しか見えていない。


2013-04-28(Sun)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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