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感覚から通じ合うもの

 昨日は、先日連絡をいただいたIさんと久しぶりに稽古をおこなった。右の肩甲骨がひどく痛むという状態にもかかわらず参加されることに、僕も嬉しさとともに「このような身体の状態が稽古してみてどのような現象になるのだろうか」という把握しておきたおい部分でもあった。

 だがじっさい僕が思ってた以上にIさんは痛そうであった。Iさんいわく「この感じはかるい肉離れかもしれません」と言われていたが、見た目にも身体のバランスが傾いて固まっている様子であった。この日は脚足部の使い方などを重点的に稽古していこうと考えていたので、膝行や水鳥の足による杖を使った手の内との連動、また杖術においては、初動から足を動かすことに重点を置き、それらを活かした組杖稽古をおこなった。また、抜刀術においては、まず手足の連動を感覚として身につけるために、歩きながらの巴抜きをおこなった。

 僕の場合、杖の稽古でとくに重要にしているのは「足」である。同時に手之内も連動してくるが、居つかないこと、支点を固定しないこと、滞りながら力を溜めて合わせる動きにならないことなど、全てにつながる動きの質を練っていくためにも、動きのなかに意味がなければならない。

 この日も、打太刀仕太刀による組杖稽古をおこなった。与えられた型稽古をおこなう場合、その技をいかにして使えるようになるか(互いに現象を引き出せるか)ということを研究するのだが、型を新たに作る場合や、変更する場合は、その意味(理合い)がなければならない。だが、このことについては、組太刀稽古などでのもっとも難しいところであり、こうやった方が手っ取り早いということは多々ある。しかし、それは互いに相手のおこなうべき動きをあらかじめ把握しているからでもあり、「じゃあこうきたらこの方がいい」「それに対してはこうしよう」などと続けていくとキリがない。

 目先の勝ち負けにこだわった組太刀の型になってしまうと、身体を練っていくための稽古が、想定内だけの工夫になり、より厳しい条件の体捌きの研究が損なわれてしまうおそれもある。

 かといって、打太刀がわざと技にかかってしまうのも、同じく相手の動きをあらかじめ把握しているから、負けまいと太刀筋を変えるのと同様に、負けなければ空気が悪くなると自ら崩れてゆく。どちらにしても、忘れてはならないのは、自分は何をするために動いているかということでその一手一手に最高の動きが求められる。打太刀仕太刀ともにそのような理合いに沿った動きの中で、型が導く現象を互いに感じられることがもっとも重要であろう。

 組杖稽古から話がだいぶ逸れてしまったが、やはり相手をつけた稽古は、間合いや相手との打ち合いに求められる手之内や足捌き、それに加え蹴らない歩法と浮きをかけた打ち込み、さらには股関節の屈曲による潰しなど、自分のペースで出来ないため、集中力など相手から引き出されるものが多い。気がついてみると、Iさんの右肩甲骨がだいぶ解れてきたようだ。やはり杖はこういった身体の不調時でも、逆に調子が良くなる使いかたもあるように思う。
 このように、相手が付いた稽古の場合、状況設定から互いに引き出せる稽古法にしていかなければならないと感じた。そのためにも、得物を使った稽古は極めて効果的だと思う。

 抜刀術では「巴抜き」をおこなった。ブログの映像リンクにある抜刀術の四番めの型である。この巴抜きは相手が上段に構えていつでも真っ向に斬り下げることができるという状況設定であり、術者としてはまず斬り上げにて相手の左腕を切断した刹那切っ先が閃き大袈裟にて相手の右腕を斬り落とすという太刀筋である。

 Iさんに伝えたことは、斬り上げの際の右手の使い方と右腕の支点の移動。だけど、そのカラダの使い方はあくまでも感覚的なものであって、その言葉になぞってしまうと、刀の軌道に角がでてしまうので、僅かな操作による刀のバランスの変化からなる、刀自体の軌道に任せるように取り扱ってみてはというような内容の言葉しか伝えていなかったのだが、驚くべきことにIさんは難しいとされる斬り上げからの切っ先の閃きに連動した力感のない斬り下ろしが出来た。これは、今まで私が会にいたころ指導して出来たひとはまだ誰もいなかった。それは、当時の私の未熟さもあったのだろうが、それ以外にも原因はあり、いろんな情報を詰め込むことで、感覚というものより、頭で理論を考えその通り遂行して結果を待つといったような、文章や言葉といった、すべてではない情報から、伝えきれない部分を感じさせる稽古空間でなかったのかもしれない。文章や言葉には、実は惑わされている部分があって、それらはすべて例えの表現にすぎないと思ってしまってもいいほどの、解釈のズレがあり、そこにおちいってしまうと、余計なものを消し去ることが困難になってくる。だからIさんとの例は非常に稀なケースだが、感覚の部分で伝え、感覚の部分で吸収し、その日のうちに刀の軌道が理解できたということに感動と驚きがあった。もちろんIさんのセンスによるところが大きいのだが、今後のいろいろな方への伝え方として、人により解釈は違い、自分では的を得た文章や言葉だと思っていても、それが理解を遅らせる場合もあれば、間違った解釈により、余計な時間がかかってしまうこともある。だが、すべて、感覚で伝えていくのもダメである。相手との気持ちの通じ方が、その都度臨機応変的に、表現されていくものなのかもしれない。Iさんのお陰で実のある稽古が出来た一日であった。


2013-03-13(Wed)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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