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時代を越えて継続していくもの

 さまざまな事は想定内にあり、お人好しも冷たさもその想定内における対応でこれまで生きてきた。器用に物事を進めていく人には、それに伴い嫉妬という邪魔な抵抗者が生まれてくる。これは、ある意味しょうがないと思う。何かを得るには、必ずそれに関わる何かが副作用として起こりうるように思う。これはこれで自然の法則としてバランスされているのであろう。その者が自滅の道に進まないように、良いバランスに持って行くにはなかなかセンスのいることである。

 さて、本日の「高齢者のための剣術教室」では、毎回一番始めにおこなう杖の体操「肩甲骨の開閉運動」から入る。これは、頭の重さ(約5㎏)で首が下がり背中が丸くなった姿勢の習慣化と、その姿勢と合わせて女性がなり易い骨粗しょう症により骨が弱くなったことによる圧迫骨折などのリスクを軽減させるためには、頭部は前に落ちないために胸を伸ばす姿勢が求められ、そのためにはここが重要であるが、肩甲骨を寄せる力が重要になってくる。日常において、手や腕を使っても肩甲骨はあまり動かせていないので、こうした杖を使ってピンポイントに肩甲骨を開閉して筋力の増強と可動域の向上が必須であると、この教室を務めさせていただいた中で第一に感じたことである。

 次に杖の「片手回し片手止め」をおこない、掌と杖の接触感覚をより高めることを目的としたものであり、下げながら滑らせながら、または上げながら滑らせながらというのを、シンプルな動作の中で人間の持っている高度な計算力の働きを引き出せるように最近取り入れたものである。今日はいつも元気なSさんがこのことに気付かれ納得されたことから、もう少しこの内容を続けて皆さんが感じられるようになればと思う。昔からおこなっている左右の持ち替えも、簡単に出来るようになってしまえば、もうこの講習ではおこなう必要がないので、皆さんの出来具合をみながら、講習内容を整理していく必要があるだろう。

 杖を使っての深呼吸は、これが終わった後の皆さんの集中力が高まるので今後も継続しておこないたい。休憩後「水車」をおこない特に指先の繋ぎと離れを意識しておこなっていただく。それにしても、この教室で最高齢85歳のDさんはこの教室の中でももっとも姿勢が良く理解も早く只々驚くばかりである。あと半年ほどするとどこまで出来るようになるのか楽しみである。近い将来テレビや新聞などで取材していただいた時には、きっと視聴者の方や読者の方も驚かれるのではないかと密かに楽しみに思っている。もちろんDさんだけに限らず、世話人を務めてくださっているご婦人Oさんも、多くの方の励みとなるだろうし、ご夫婦で仲良く参加されているOさんも夫婦円満の秘訣がご主人のユーモアさで語られると非常に面白いだろう。巴御前のSさんとOさんご主人との掛け合いも毎回漫才のようで大笑いしてしまう。真面目に真剣に取り組まれる方の感想は、同年代の方々や同じ苦労に苛まれている方々には共感を持ってもらえる言葉であると思う。

 このクラーチ剣術教室以外にも少しずつであるが、高齢者の方とのご縁も生まれてきた。古武術介護は今ではかなり有名になり、介護師の方の負担を減らし介護を受ける方の負担も減ってきた。現代の高齢者は、社会環境や、食事、医療の発展などにより、見た目と実年齢に驚くことも珍しくなくなってきており元気で若い方が多い。そういった方々がこれからの超高齢社会(高齢者65歳以上の方が人口の21%以上の割合)が進んでいく中、(2014年は25.9%で総人口の4人に1人は65歳以上となる)戦力として身体を動かすことが社会の中で求められ、益々年齢ということに関する価値観が変わってくるのではないかと思う。おそらくいろいろな事に関する仕組みも約束事も変わり、個人としての強さが求められるようになるだろう。まさか、普通の方までスポーツジムに通いプロテインを飲んで怪我のリスクとともに筋力をつけるようなことは続かないだろうが、それらに代わったさまざまな謳い文句の運動系ビジネスが盛んになってくるだろう。私の思いとしては、古の先人達が伝えてきた剣術(杖術や抜刀術なども含めて)を現代でも受け継いでおこなうことは、日が昇っては沈んで行き、月が出ては消えて行くという変わらぬ天のサイクルが継続したまま現代の時代となった今でも、どこかで繋がっていることを感じながら、決して現代人が最先端の知識や情報のなかで進化してきたという誤った自負を持たず、むしろ身体を使うことに関しては、先人達に比べどんどん退化してきている現状に気が付かなければならない。なればこそ、これからの超高齢社会を生き抜いていくには、文明の進化と相反する身体使いの退化をどのようにして補っていくかということが切実な問題となってくるだろう。指導者に対しても、知識や理論、技術や権威など、それが大きな狂いを生じさせる原因にもなるので、己の欲のためにだけでなく志を持った生き方が求められるだろう。自分の事を棚に上げ書いていて恥ずかしくなってくるが、成長したい思いがあるから、常に自分自身に校正をかけるように見つめなおしていく必要がある。

 午後からは高田馬場にてgold castle 殺陣&剣術スクールの生徒であるMさんに個人指導をおこなった。この武道場は私がもっとも稽古をした場所でもあり、現在も一人稽古をおこなっている大事な場所である。まず、杖の打ちと突きを脚足の使い方とともにおこなった。足運びは以前に比べかなり改善されてきたが、杖の打ち込みや突きに対して、上体と下体との繋がりがまだ見えてこない。そのため、先週イオンでマンツーマン指導した際の、壁に肩と頭だけをつけて持たれ掛かり、内腿に力を入れることで反動を付けずに身体が壁から離れる際の脚部の使い方を掴んでいただき、先ほどの打ち込みと突きに用いる脚足の使い方をおこなったところ、歩幅が改善され、身体の纏まりも少し良くなり、杖の先のブレも減少した。つまり、ただ後ろ足を引き寄せるだけでなく、爪先をやや上げ、内腿を緊張させながら大腿部を上げるようにおこなうことで結果として身体は下方向に強く働くのである。その意識があれば、膝が伸びたり、足幅が揃ったり、上体が折れたりすることは無くなるようだ。

 この高田馬場では個人稽古ということもあって自然と会話が多くなってしまう。それはこの日記に書いているような内容であったり、日記に書けない具体的なことであったり、そういう日々思っているということは、いったん栓を抜けば止め処も無く出てしまう。

 後半は袋竹刀を使って、私が正面斬りをおこなうのに対しMさんが袈裟に斬り込む稽古をおこなった。特に女性の場合、素振りだと芯が入らない方が多いので、動きを引き出すには打太刀をつけてその剣を打っていくほうが効果的である。相手が付くとどうしても対象物に身体が意識してしまい、動作が大きく崩れてしまう。こういった稽古により、ただ素振りをして時間を費やすよりも、袋竹刀で実際に打ち込むというのは身体を練るにも間合いを掴むにも有効であり、何よりパーンと気持ちよく打ち込めた時の感覚は他では味わえないものがある。この袋竹刀(ふくろしない)というのは、剣道の竹刀に革を被せたもので、柔らかいベーグルのような鍔をつけて使用する。怪我を防ぎかつ存分に技が出せるように工夫された武道具である。

 ただ私が危惧しているのは、こうした身体の使い方を技として身に付け始めてしまうと、剣の扱いの精妙さと同時に身体の面白さや奥深さ、無理のない効率のよい体の使い方を身体が理解したときに、無駄の無い自然な動作の美しさを知り、それを鏡ではなく、実感として得られた時に、殺陣をおこなっている人は、似て非なる現実を突きつけられいろいろ考えてしまうのかもしれない。だが、そこでいろいろ考えることがこれからの発展に繋がっていくと思うので、何が良いのかということについてそれぞれが考え理解し学ぶ必要がある。

 今日はMさんの体の硬い部分が分かり、ここが変われば背骨を通じて全体の可動に関わってくるので、今日おこなった杖の体操でどういった変化が起きるのか楽しみである。Mさんのお話の中ですでに変化があったのは、ウォーキングで40分掛かっていた所が、30分となり10分時間が短縮したという報告を受け、どうやら、股関節の可動域が向上したため歩幅が大きくなったようである。最近の稽古でも足運びが以前に比べ良くなり、1月18日の世田谷区総合運動場でおこなった講習で膝の落とし方の気付きから大きく崩れることが無くなった。その話を聞いて今日の講習で、巴を私がおこなっているキツイやり方でおこなっていただき、Mさんも身体に効いている感じがあるようなので、ジックリと取り組んでいただいた。おそらく明日は大腿部の付け根辺りが筋肉痛になっているかもしれない。

 今は高田馬場での個人指導も、仕事の関係などで参加される方が少なくなった。真剣に稽古に取り組んでいきたい方は下記にリンクしてある2月の稽古日程に、スケジュールが記されているのでご縁のある方とは稽古したいと思う。
≪2月稽古日程≫http://kanayamatakayuki.blog.fc2.com/blog-entry-414.html


2015-02-10(Tue)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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