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杖術が思いがけぬ展開に

 本日月曜日は、雨のあがった夕方から高田馬場で竹田氏と稽古。今日も会場へと向う道中で新陰流兵法の先生とバッタリ遭遇。「よくお会いしますね。」とまだお名前も伺っていなかったことに後から気が付く。会場まで一緒に向かい、自然とそれぞれの流れに入る。

 17時に竹田氏が訪れるまでの10分程、杖術で先週木曜日に気が付いた「燕打ち」と一昨日土曜日に気が付いた「大燕打ち」と「攻防一体」を確認していた途端、身体がまさかと思える感覚に芽生え始めた。

 それは、杖を両手寄せで操作するというものである。


 これは講習会や稽古会、またはこうした稽古記事などでお伝えするために奇をてらったことをやろうとしたものではなく、また、剣術と同様に両手を寄せておこなってみようなどと安易な発想からではない。もしそうだとしたら数年前からとっくにやっている筈である。

 なぜ、これまで杖を両手で寄せて扱うことを試みもしなかったのだろうか…

 おそらくそれは、杖は滑らせるものであるという強い意識が根幹となって働いており、それを基盤に技というものを考えていたから、滑らせることありきで全てがおこなわれていたのである。もう一つは、杖の手触りと形状から、これを寄せて持つのは道具の働きを活かしきれていないという手之内の感覚が、自然とそのようにさせていたのだろう。まして中途半端に滑らせると利きが悪くなってしまうため、より滑らせることに対する執着が今の今まで私が私に言い聞かせていたのだ。

 では、どうして両手を寄せる試みを始めたのか?

 それは先週の木曜日からの流れがあり、渡部氏とA氏が互いに向き合っておこなう、杖の突きを見ていた際に、突如として「燕打ち」の動きに気が付いた。それは手之内を滑らさないものであり、この発見に至ったキッカケは、このところしきりに言葉にも文字にもしている目の使い方と表と裏の事が、潜在的に動きを考える上で、裏の一手間に気が向うようになったからではないかと思うのである。

 つまり、これまでの技や操法というのは、淀みなく瞬間的におこなえるものとして審判していた。しかし、それは表の動きを素早くおこなうという事だったのかもしれない。裏の動き、裏の眼、表裏一体となって実と成す、という自分で考えたフレーズであるが、裏の部分に眼を向けることで、これまで考えていなかった手間が、実は表を活かすものであり、まさに表裏一体となる動きとなるのだと思う。さらには、裏の部分というのは目で捉え難いものなので、手間を掛けても、そうした裏の動きから繋がる表の動きは読みづらく、如何に素早い動きであっても、表表のつながりは目で捉えやすいものであり、表裏の動きはよく解らないのである。

 何をもって、表なのか、裏なのかは、実感としての判断であるが、現時点のレベルにおける捉えられる動き、目で確認出来る動きが表であり、捉えられない、目で確認しづらい動きが裏の動きである。さらに言えば、動きというものは表裏一体であり、表があるから裏があり、裏があるからまた表になって行くということ。その表と裏の境目は身体で感じるものであるが、それは見るのではなく観る感覚が求められる。

 少し説明が長くなってしまったが、そうした裏の動きに目が向かうようになり、手間を使ってもそれが良く解らない捉え難い動きであり、それが今までにない操法の扉を開いてくれたような気がしたのであった。

 そして一昨日土曜日の金山剣術稽古会でまたしても突然「大燕打ち」が生まれ、よくこんな手之内に迷い無く断定的な形が生まれたものだと驚いたが、こうした突如として生まれたものというのは、稀に訪れるが、身体の使い方や手之内に全く迷いが無く、身体が先に知っており、それを教えてくれているような不思議な感覚なのである。

 その「大燕打ち」を渡部氏におこなってもらい、私がそれを杖で受けながら威力を確かめようとしたところ、これがなかなか強力で、手之内がビリビリと痛くなるので、思わず両手を寄せてみようと試したところまるで平気なのであった。

 「これはなんだ?」と、不思議に思い、もう一度両手を離して構えた状態に打ち込んでもらったが、やはり手が痺れる。あらためて寄せてみると平気だ。そこで手之内を含め色々検討してみたところ、まず、杖の握り方が大事であることが解った。次に解ったことは、両手を寄せることで支点が支点たる働きとなり、相手の力を自然に流してくれる作用がある。この手之内の使い方と支点の使い方は、新たな両手寄せの受け方として得るものがあり、さらにその働きを活かした「攻防一体」なる動きが誕生した。この日、土曜日に得たものはとても大事な芽であった。

 そして本日の稽古で、両手寄せの受けの形や攻防一体の動きをおこなっていた時に、「そうか、両手を寄せても杖は出来るのだ!」という事に身体が気付いたところで竹田氏が訪れ、その興奮冷めやらぬ瞬間を説明して稽古に入ったのであった。

 
 稽古では、「燕打ち」や「大燕打ち」「攻防一体」などをおこなったが、この「攻防一体」が体捌きのための稽古だと思っていたが、抜き技に使えば十分技になることが判明し、そこでまた両手寄せによる操法の新展開に身体が、新しいジグソーパズルを手にしたような、最初のうちに埋められるピースをドンドン埋めようとしているような身体の状態で、今後しばらくは取り憑かれたように没頭するだろう。12/7の杖術特別講習会では、「攻防一体」「燕打ち」「大燕打ち」の三本柱が急に生まれたので、これをメインにお伝えすることになりそうだ。

 今日は竹田氏から、「杖を打ち込むときは手之内を強く握り締めていますか?」と質問があり、お応えする形で実際に握り締めた場合と、指関節で締め込んだ場合とで打ちの強さを比べてみた。

 どちらも大して変わらないものだとお伝えしたかったのであるが、どうやら握り締めた方が身体が使えず弱くなってしまうことが判明した。これは昨日おこなった体術稽古で、「蠢動」の利きが良いのは、身体に不安なほど何もさせない方が良いのと同様であるということだ。しかし、「蠢動」をかけなければ、何もさせていない身体の状態は脆いものであり、杖で強く打ち込む際にも、身体の働きが無ければ、手之内を強く握り締めた方が、指関節で締め込んだ場合に比べ腕の力が使いやすく強力であろう。ただし、それでは身体の他の部分が働かないように止められてしまうので、身体の使い方によって身体の状態というのは臨機応変に合わせて行かなければならないということである。

 もう一つ「今ごろ気が付いたか」と思ったのは、「鯉口を切る」ことの意味である。大体は鎺(ハバキ)で締まっている鯉口部分から少し抜き出してすぐに刀が抜けるようするためだと思われるが、それだけでなく鯉口を握る左手の置き方に、鯉口を切る空間が必要であることが今更ながらに解ったのであった。もちろん、解ったからと言って何も変わる訳ではないが、下手な人が抜けずに引っ掛けてしまう場合、左手の置き所と鯉口の切り方が宜しくないと思いますので、鯉口の切り方から、鞘を引いた最後の左手の形、指の抜き方など工夫できるところは多々あります。

 竹田氏との稽古が終った後、30分ほど杖の一人稽古をおこなった。もちろん両手寄せである。

 さっきまで道場内が寒く身体も冷えていたが、一人稽古を始めて10分程で目が開け辛くなるほど汗が吹き出た。その間にまた新たな動きも生まれた。支点を使いこなすことが両手寄せ操法のカギであり、その分変化も多彩で全てが速い。その変化に脚足が導かれるようにこれまでとは違う動きの流れに、身体も喜んでいるようだ。自らの顔面を打ちそうな怖さもあるが、従来の滑らせる操法に比べ、支点からの多彩な変化と攻防一体の流れ、両手寄せにより打ち込みの威力も上がるので、今後興味を持って取り組むであろうこの杖術は何とも異質な動きである。今後、これが剣術にどう影響するであろうか、もしかすると体術にも何らかの影響があるかもしれない。だが、今はただ杖術の稽古に没頭したい。そんな気分である。


 金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


2019年12月07日(土)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

金山剣術稽古会

2019年12月 武術稽古日程

2020年1月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-03(Tue)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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