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足袋の効用

 捨てるものを増やしていく。これは昨日の打ち合わせで伺った言葉であったが、捨てるものを増やし捨てていた時間を取り戻すということにも繋がってくる。安易で便利となった世の中は、余計なものに目を向けやすくなってしまう。しかし、そこで少しでも断ち切ることが出来れば、日々の余分なストレスは開放されるだろう。SNSもそうだがテレビも同様。あらためて本がいいなあと思うのである。


 さて、本日は戸越体育館でGold Castleの講習をおこないました。今日はこの六年近くで初めて足袋を忘れてしまい裸足でおこないました。とはいえ、金山剣術稽古会では昔は高田馬場や住吉の稽古は裸足でおこなっておりました。武術を始めた当初はずっと裸足が当たり前であり、足袋を履いておこなうという考えは全くありませんでした。

 当時学んでいた鹿島神流の剣術でもそうであり、足袋を履いておこなっているほうが少ないかもしれません。私が足袋を履き始めたのは、当時の会を離れ独立し、一人稽古に明け暮れる日々の中で、これまで刀を持っていた両手の間を寄せる研究が進んだのだと思います。独立してもずっと甲野先生の所へは変わらず稽古に参加させていただいておりましたので、そうした影響もあったと思います。

 しかしながら、両手を寄せて剣を持つというのは、これまで離して持っていた感覚からすれば、違和感が強くこれをやろうという気にはなかなかならないものでした。独立して一人稽古に没頭することが今を生きる術でしかなかった私にとって、ジックリ時間を気にせずに取り組める中で、いつしかそうした一人稽古が私を次に進めるためには必要な時期だったのだと数年経って気づくことになりました。今では贅沢な時間であったと思います。

 そうした一人研究稽古の日々は発見の連続でもありました。両手を寄せて持つということは、つまり半身の体を転回させる使い方から体を前方へと移動させる使い方に切り替えなければならないということが解りました。そのため、両足はつま先を外側に向けたソ之字立ちから、つま先を真っ直ぐか時にやや内側へ向ける立ち方となり、歩幅も一直線上にあった前後の位置が、両足の間に足が二足分納まる位の幅に広がりました。

 それにより、以前までの半身から前足を一歩踏み出し後ろ足をその場で開いておこなう体捌きから、向え身から前足を1.5歩分前に出したことで自然と同側の肩と腰が前に出るぐらいの構えとなったことで、前足が一歩踏み出した際に後ろ足を寄せる働きがこの構えでは必須になってきます。

 つまり床を滑っていくような「縮地」というものに近い歩の伸び方が全ての動きに関わっているのだと、両手を寄せることで足の向きが変わり、それに応じた腰と背中の働きを活かすために両足が地を滑る動きが特徴であるのだと思います。そして、この身体の使い方は半身での操法とは全く異なりますので、混ざることの無い流儀であると言えるのではないでしょうか。そうした両足の移動法が、私が独立して最初に取り組んだ解体からの組み立てであり、胸を伸ばして腰を反っていたのも流儀が変わったことで、胸を凹ませ背中を張り腰はやや後傾させるようになりました。爪先を外に開き腰を反ることで、半身での体捌きにおける股関節の働きを活かすことになるのですが、爪先を開かずに骨盤を後傾させることで、逆に股関節を働かせないようにロックさせ、張った背中と共に身体を纏めて構造を強く維持して移動いたします。そのため、床を後ろ足で蹴ってしまいますと、纏まった身体の構造が一旦前に進む側と、後ろに蹴り出す側とで開いてしまい、体が整わない状態で移動いたしますので身体の働きは活かせないことになってしまいます。そのため、前足は引き上げるように使い、後ろ足は蹴らずに速やかに寄せる、或いは慣性に任せて引かれるようにおこなうようになりました。そうしたさまざまな脚足の運用法、移動法が非常に重要なものでしたので足袋を履くに至ったという訳であります。

 床を蹴る癖がついておりますと、滑る床の上で足袋を履くと心理的にも緊張が伴うものです。しかし、これが普段から履いておりますと床を蹴ると危ないということになりますので、自然と意識しなくても蹴らない足使いに切り替わっていきます。おそらく、滑らずに動き続けるには無意識レベルで脚足のさまざまな部位が働いているものと思われます。剣道は裸足でおこなっておりますが、滑る床で足袋を履いておこなうと、これまでの脚足の使い方が仇となると思いますので、そうなった状況ではどのように動かれるのか興味深いところです。

 
 今日の講習では、背中が引かれる正面斬りをお伝えいたしました。袈裟斬りも同様に残り身が引かれるようにお伝えし、かなり時間を割いておこなったように思います。意識して操作していることと無意識で自然とおこなっていることなどに目を向け、視覚の集中配分を極力減らして感覚と知覚に委ねるように観察することで新しい発見を自ら手に入れることに繋がってくるものと思われます。すなわちそれは、自己を分析し掘り下げる学びの時間でもあるのです。

 型稽古では、「劉之型 月」をおこないました。小太刀から得たこれまでになかった剣の使い方に私自身不思議な感じがいたしますが、このところよく書いている「実感予測」に対する実際の実感が、判定の是非を決めてくださっております。

 最後は「連続切り返し」をおこないましたが、この稽古は体全体で剣を扱うための身体を作りながら同時に操作精度を高める稽古にも繋がっております。さらには浮き身の稽古にもなりますので、脳の手続き処理能力の向上も含め、総合的に効果的な稽古法であると私自身は感じております。

 型稽古も重要ですが、こうした動きの基盤を向上させていく稽古法は自らと向き合う時間にもなりますので欠かすことの出来ない稽古であります。

 さあ、明日も品川区総合体育館剣道場にて15時から講習をおこないます。今日も暑い一日でしたが、お越しいただいた皆様ありがとうございました。来週の土曜日は『剣術 特別講習会』を開催いいたします。他流の方や初めての方も歓迎しておりますのでご連絡お待ちしております。


 金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』

(2019年5月20日より発売中)

2019年8月24日(土)『剣術 特別講習会』(お申し込み受付中)

金山剣術稽古会ホームページ(お問い合わせ受付中)

2019年8月 武術稽古日程

2019年9月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文


2019-08-18(Sun)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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