身体にまかせ心にまかせ穏やかに過ごせる厳しさを

 昨日月曜日は夜から高田馬場でT氏と稽古。最近解った横方向のエネルギー伝達手順を受けていただいた。今後は手順の理解からさらなる他の部位の使い方と手順を探る稽古となる。出来た感動もこの程度では直ぐに冷めてしまう。次に木刀を使っての「峰返し潰し」をおこなった。苦手としていたT氏であるが、形と、間を短くするといった言葉により普通に立っていれば沈み込む所まで潰せるようになった。これは杖の「お辞儀潰し」と同様、私のオリジナルの技であるが、それだけに違いを検証するのは興味深い。もうこれはいいかなと思っていたところに新しい手掛かりが見つかり、長く続いてきている。見た目の崩れ方に対し接触部の当たりが優しいので暫くこの技は工夫しながら続けていくだろう。

 先日の杖術特別講習会でもおこなった「旋風」をおこない、その中で重心操作を心掛けることにより動きが変わり、そうした脚足の重心コントロール感覚を養う稽古にも向いていることが分かった。これは受け側の操作も独特のタイミングで「馬突き」の受けよりも複雑になっている。互いに滑らかに動けるようになれば身体が心地良さを覚えるだろう。

 抜刀術では久しぶりに速くおこなう「巴抜き」をおこなった。私自身もこれは今年になって初めて取り組んだ。今年になって初めて抜いた技が幾つかあるが、それは今年の2/26におこなった演武撮影に向けて傷めた右肘を守るために抜かなかったということもあり、多少言い訳になるが、演武に備えて存分に抜刀術の稽古が出来ていたわけではなく、寧ろ抜かずに我慢していた。おかげで撮影当日には随分回復していたが、抜かなかった微妙な鈍さは身体で感じていた。それでも酷い時には木刀ですら抜き打ちに抜刀することが出来なかったので撮影が終わってホッとしている。しかしながら、最後にスタジオでおこなった抜刀で右肘を悪化させてしまい、再び以前ほどの痛みではないものの幾つか技に支障をきたす傷みが再発した。

 そういうことがあって、抜かない抜刀術の技が幾つかあるが、徐々に具合を見て解禁していくつもりである。以前右手首を傷めた際には1年間抜かなかった技もある。ついでに言うが、オーバーワークにより両足のふくらはぎを傷めてしまったが、特に右足は肉離れしていて、関西に旅立つ前日の講習会で乳酸が溜まってカチカチの状態でジャンプしたところ右片足着地の際に傷めてしまったのである。翌日早朝新幹線で向かわなければならない前日に現実逃避したい気持ちとなったが、大丈夫である根拠の無い自信はあった。結果歩く道中はずっと足を庇いながら歩いていたが、講習では全く気にならなかった。(前日の傷めたその日は稽古中もどうにも歩きづらかったが…)これで一つ学んだ事は、ふくらはぎへの負荷の強い鍛練稽古は常時動ける状態にすることが一番であり、特に負担の強い「蛙」や「飛石」もっとも負荷の掛かる「蛙の真っ向」は避けるべきである。これは床を蹴る動きは意図的にはおこなわないようにしているが、結果として床を蹴ることと同じ筋肉の使い方になる状況において、筋肉の動きに対し相性が悪いと思われる。これは以前からなんとなく感じていたことであるが、大きな原因が自重を強く掛ける際のふくらはぎへの負荷と、爪先で床を蹴るような際のふだんあまりおこなわない伸展収縮の動きに結果として動けない身体になっていっているように感じたのだ。私の場合動けなければ話にならないので、常に平気で10km位は走れる身体でならないと思っているし、その準備は常におこなって来ている。これからも、自分の身体の声を無視せずに自分で感じて使える部位とそうでない部位とを見極め稽古して行かなければならない。

 そういう意味では、蟹と雀は故障知らずと言える。やはり大腰筋や背中など大きな幹(樹)の筋肉を使うことは身体の枝葉の筋肉と比べ故障のリスクが少ない。昨日の稽古の最後におこなった剣術での「連続斬り返し」もそういう意味では疲労度に比べ枝葉への負担は少ない。昨日はT氏が訪れる前の一人稽古でも斬り返し六回をおこなったが、あらためて足がどうなっているのかは分からない、考えようとも出来ないし確認も出来ない。六回となると足だけに留まらず、手もどのようにおこなっているのかあやふやなのである。確かに六回やったような気がするけど、果たして本当に六回おこなったのか自分でもハッキリしないのである。つまり、ある段階以上の速さを求められる動きというのは、どこか違う部分に任せてしまわなければ動けないところがある。操作を意識していてはとてもじゃないが間に合わないし、そのための動きと言うのを考えようとしても、意識出来ないものは考えられないのである。甲野先生が「影抜き」などの技の瞬間に「一瞬気を失っている。」と仰られていたのを、著書でも記されていたと思いますが、実際に撮影現場でも編集者の方に説明されていたのを受けとして体感しその時の瞬間が鮮明に記憶に残っております。

 そういう意味でも、この連続斬り返し六段は私にとってあらたな感覚、何かに任せなければ出来ないといった、その何かを掴む手掛かりとして今後も取り組んで行きたい。

 そして本日火曜日は「高齢者のための剣術教室」をおこないました。あらためて、これから高齢者の割合が増えてくる中で、どういう運動が望ましいかという事を考えた時に、不安を煽らせることもなく、今の状況で楽しめる運動を継続的におこなえる毎回の場が新鮮で心が通じるものであることが数値には表れない(表れるものもありますが)部分への結果に繋がります。これはどのような指導者にも言えることかと思いますが、商売(利益を出すことを前提とした)の体系にしているのか、人を見て人と対話し想いのなかで得るものを求める体系にしているのか、長くおこなうことの責任と、その先の付加価値というものを考えた時に、やはり、運動、心、身体、輪というものが一体になって育つことが私の求めるものには関わってきます。

 今日は86歳のKさんの髪の毛が黒くなりはじめて驚かされました。おそらくこの教室で毎週ワイワイとHさんなんかと漫才のようなやり取りをしながら楽しんで運動されておりますので、何かしらの変化が毛髪に表れたのだと思います。全て白髪だったのですが、後ろ側に黒くなっている部分が多く見られ、笑いながら気が付いたら一時間半結構な運動量をやっていたといういつもの内容が、Sさんが念願だった太腿の筋肉アップにも繋がったり(熱心にやってますので)肩甲骨の可動域が増えたことでHさんの腕が今までよりも上がるようになったり、講習としては、技に対する方法をお伝えしているのですが、結果として技以外にそうした副産物的な身体の変化が起きております。私自身といたしましては、講師として飽きることは全く無く、それがどうしてなのか今記事を書いて初めて考えて見ますが、自分でも不思議に思えます。それは、いわゆる武道場と違った場所で講師を務めさせて頂けることへの感謝と、私よりも遥かに先を生きる人生の先輩諸氏との時間にはそれなりに緊張感も感じますし、そうした中での笑いを如何に取れるかというアンテナは常に張っております。それと何より大事なことは、どの講習会でも稽古会でも同じことですが、指導する側と伝えられる側との心のやりとりが感じられることにあります。これなくしては、私は指導が出来ませんので義務的なものとした稽古空間を脳裏に刻むことは決して許されません。

 人の心と言うのは良くも悪くも本当によく見えるものです。私の対応はそうしたものに関連して変化して行きますので、甘えや依存と言ったものは大敵であると考えておいた方が懸命かと思われます。おそらく私は自分に対しても人に対しても厳しい人間であると思います。ですが、厳しさとはゆとりを作るためには必要なバランスであり、厳しさなくして秩序もユーモアも通じません。己のエゴに気が付く意識を持ち、日々の思考の癖、そうしたものに目を向けたときに、どういう判断となるのかでその人の価値と可能性が見えてきます。甘えは、自らを変えることが出来ません。変わることが出来ないということは、修理の出来ない機械と同じで、いつもどこかでトラブルが起き易くなってしまいます。トラブルが起きるということは、変えられない甘えを甘えと感じなくなってしまったエゴの強さにあります。そこを見直さなければ先に進めない段階の人もどこかに存在しているかと思われます。

 最近の私は、稽古を通じてその辺りの心の問題に具体的な関心を示すようになってきました。それはおそらく元来あった私の生き方の部分と、稽古を通じて身体と心の関係を実感していく中で練られたものもあり、先の神戸での講習会や凱風館での内田樹先生と門人の方々の稽古を拝見させて頂いた事で未だに頭の中の意識はその事に占領されております。


2018年6月9日(土) 抜刀術 特別講習会
(お申し込み受け付け中)

金山剣術稽古会  

2018年5月 稽古日程

2018年6月 稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文


2018-05-16(Wed)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


松聲館 剣術技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


――――――――――――――

1975年生まれ
福岡県 北九州市出身
東京都 世田谷区在住

1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより俳優デビュー。他分野では、マンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などの活動をおこなってきた。

2006年
小林照子先生とのご縁から  『 からだ化粧 』のモデルを務める。

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む。

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し身体の使い方を研究しながら、『 抜刀術 』『 剣術 』『 杖術 』『 体術 』などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている。

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく
『 Gold Castle 殺陣&剣術スクール 』を立ち上げる。

2014年
甲野善紀先生より
『 松聲館 剣術技法研究員 』という名称を頂き、自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている。
 
高齢者向け住宅にて
『 高齢者のための剣術教室 』をおこなっている。

日信工業株式会社の製品『 SAMURAI BRAKE 』のプロモーション活動をおこなう。

2015年
『 金山剣術稽古会 』を立ち上げ、現代における武術稽古の必要性を、身体と心で学べる場として活動している。

2018年
『 関西特別講習会 』として人との繋がりを大事に遠方での講習会もおこなっている。

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