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この三日間の稽古

 記事が滞ると、その内容のカテゴリを分類するのに困ってしまう。だが、昨日の夜の稽古は私のこれまでの中でも濃密に身体が記憶した稽古となった。それについての詳細は差し控えるが、その想いの強さからカテゴリは武術稽古にした。

 まずは、月曜日の稽古から。

 この日は夜からT氏との稽古。我々も含めて六人程しか居ないため、自然と会話が増えてくる。それはおそらく、声のトーンであったり、静かな間の中に、押さえた声のトーンだからこそ話せる言葉というものがあるのだろう。

 T氏の正面斬りが修正されてきた。この稽古をおこなうようになって、私自身刃筋が自然と整うようになったと思う。それはおそらく手の内の使い方が、袈裟斬りにしろ正面斬りにしろ胴斬りにしても共通する感覚があるからだと思う。

 睡蓮では、斜めに構える構造の強さをお伝えした。これは昔、鹿島神流にあった「位の構え」から参考に、今の身体の使い方に変換したものでもある。中心を取る斬りと、中心をずらす斜めの使い方は、剣術を通じた身体技法、身体の構造の整備など、各流派さまざまに研究されているものと思われるが、私としても、稽古の中でその元にあるものに近付いて行きたいと思っている。幸いな事に、流派の縛りがないからこそ、さまざまな形やそれまで良しと思ってきた自身の技法を否定できるというのは健全でいられる一つの要因でもある。

 抜刀術では「隅返し」をおこなった。これは私の中でも二転三転変更してきている。それは、抜き心地が悪くなってしまったからである。相手が付いた演武では斬り付けて留めるのであるが、その斬り付けという部分に疑問が生じ、これまでおこなってきたものとの速度の開きに考えあぐねていた。だが、この日の稽古で一つの兆しが見えた。それは重心移動とその際の柄の位置と切っ先の角度にここしかないと体感しえるものを感じ、さらにこれまでおこなわなかった刀に残り身が引かれて行くことをこの隅返しでもおこなったところ、これまでにない抜き心地を体感出来た。しかし、そうなってくるとこの抜刀術の難しさはこれまでの比ではなくなってしまい、その難しさの反面興味の湧く技へと進化した。

 気がつけば武道場は混雑していたが、T氏とともに集中した稽古を終える事が出来た。

 そして昨日火曜日は、午前中に「高齢者のための剣術教室」に向かい、皆さん安定的に元気に稽古に取り組まれました。おそらくこの教室以外の場所では元気でないお姿もあるとは思いますが、この教室では皆さん安定的に元気で笑って過ごされております。人の想いはどこか伝染するものですので、私も肉体的に疲れてこちらに伺っても、教室に入って皆さんにお会いすると元気にいつもの状態になっていきます。こうした安定感というのは、いろいろなところで稽古会や講習会などをおこなってきましたが、こちらの教室がもっとも安定しているものと思われます。今年の8月で丸4年となりますが、これからも安定した教室でいたいものと思います。

 帰りの電車では、京王線が人身事故のため、立川まで出て中央線に乗り換えることに。今日水曜日も帰りの京王線で同様の事故が起きていた。なにかのデータに出ていたがこの時期は多いそうである。以前から思っていたが、こうした事が日常的に起こっているのにあまり大きなニュースにならないのはなぜだろう。このあたりみんな分かっているけど分からないように振舞おうとしているのだろうか。以前鉄道関係に勤めていた人にその辺のことを聞いたこともあったが…。

 連日の暖かさで桜が早くも緑色になってしまった。一週間でこれほど姿が変わるとは儚いものである。夜からの稽古では、遅い時間だったせいか電車内では疲れ果てた社会人一年生の無防備な寝姿が印象に残った。私も社会に出てから25年が過ぎたが、さまざまな25年間だったと思う。今も含め、これからも同様にさまざまな年を重ねていくことは間違いないだろう。自然もそうであるが、4月というのは日本中が大きく蠢いている。そこには期待も絶望も人の数だけあるのだろう。厳しさも優しさも時間は与えそして和らげる、その定めにおいて人はどう動かされていくのか…。

 そして本日の稽古は約二ヶ月振りに戸越体育館へ。2015年から隔週水曜日にこちらを利用していたが、とある原因がありいつも空いていたこの曜日の時間帯がなかなか利用できなくなってしまった。それについては今日こちらのスタッフの皆さんにもお話し、苦笑しながらこちらの方でも何か感じているところがあったように受け取った。しかしまあ、次元の低い事にはあまり巻き込まれたくないので、時の審判に委ねるしかないが、世の中には表面的には分からないように演じている闇のある人間がいる。世の中の事件をしても、なんで騙されるの?と思ってしまうが、皆騙されるつもりで騙されているわけではない。だからこそ、人とは分からないものである。

 しかしながら、そうしたこととは無縁な日常で生きていられることは有り難いものであり、そうした人と出会えることも有り難いものである。それは私が望んだ生き方でもある。武術や武道をおこなうのであれば、やはりそこは間違ってはならないだろう。

 今日の稽古では、W氏とともに最近おこなっていなかった体術を中心に取り組んだ。W氏も先日甲野先生から「あの方は相当やってますね。」と仰られていましたが、年数にすればまだ三年である。だが、その稽古内容の密度と稽古日数は、私の知っている限り誰も追従出来ないだろう。密度の濃い稽古と日々向かい合って集中的に稽古をおこなうことは、短期間であれば可能であるが、三年間となると、とくに私に対しては難しいものと思われる。現に、W氏に対してもそうとう厳しい対応を何度かとったこともあるが、そうした状況でも潰れずについて来ているのはW氏の人間力であろう。仮にW氏と張り合おうとするならば、技量でなく、私への取り入り方などでもなく、周囲へ迷惑を掛けない配慮とその洞察力、そして決して見せ付けようとしない、勝ち負けになろうとしない物事の捉え方、それでありながら継続的な進展が心身に浸透しているという事実。そういう人物がこれからさらに評価されていく事が私としても楽しみであり、次に続いてくる人の指標となるであろう。あまりこいうことを書くと氏の為にならない事は重々承知であるが、そのぶん稽古での厳しさというものを、私からでなく自身で気付いていっていただければと思う。


2018年4月14日(土) 「剣術 特別講習会」
(お申し込み受付中)

2018年4月30日(月)&5月1日(火) 「関西特別講習会」
(お申し込み受付中)

金山剣術稽古会  

2018年4月 稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文


2018-04-05(Thu)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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