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金山剣術稽古会 2019年稽古納め

 昨日土曜日は夕方から金山剣術稽古会今年最後の稽古となりました。土曜日稽古会として月に一回ほど開催して来ましたが、昨日を最後に来年からは平日のみの稽古会とさせていただきます。

 そんな最後となった昨日の稽古では四名の方がお越し下さいました。基礎鍛練稽古から、体術、杖術、剣術、抜刀術を一通りおこない、特に杖術「二杖之位」から幾つかの操法を稽古し、体術では「触れ手落し」をおこないました。初参加Nさんが触れ手落しを受けて頂き大変驚かれておりました。筋肉質な男性なだけに力がぶつからずに通っていく感じが初めての体験だったようです。

 剣術では、斬り結びに対する抜き技と、それに対する打太刀の太刀筋というものを検証しながら稽古いたしました。この中で、私としては抜けられるだろうと思っていたこれまでの抜き技が通用しなくなっていることに驚き、あらためてこの太刀筋の重要性に考えさせられました。今後はこうした太刀筋に置いてもこれまで同様に消して動けるか、ということが課題となりました。万全なものというのは存在しないかもしれませんが、対応できるものという備えは稽古で身につけておかなければなりません。そういう意味では昨日の抜けられなかった瞬間というのは次に向うためのお題として、斬り結びにおける太刀筋の違いから何を得て行けるかが今後は考えて行かなければと思います。

 最後の抜刀術では、納刀法から各種抜刀をおこないました。こうした稽古で初めて感じる手順の精妙さや身体の審判に、今はなかなか道が見えずにどこにその先の道があるのか周囲を見渡している段階の方が多いかと思われます。一つ一つ進んで行くには、感覚を実感し、そうして感じた手掛かりをどのような手順で繋いでいけるか。そこに心と身体の居着きが生じて来ますが、それをどのようにして乗り越えていけるか。進む道にはさまざまな障害が待ち受けていますが、それを乗り越えるのは自分の身体の中にあるものですので、止まっている間の稽古というのが抜刀術では大いに重要なものとなります。

 抜刀術は難しいものですが、周囲に進んだ方がいらっしゃいますと、そこまでの道程は見えませんが、道程の先の道中にあるものは見えますので、みな集中して探究していけるのでしょう。

 稽古後は、参加された方皆さんと自由が丘に移動して忘年会。鎌倉のTさんやGold Castleから続けてWさんにSさん初参加のNさんとともに懇談いたしました。こうしてGold Castleの講習も無事に終える事ができ、金山剣術稽古会の稽古も最後に賑わいの中で終えられたことを感謝いたします。こうして滅多に無い忘年会に今日のお昼からお付き合い下さった方々もいらっしゃいましたし、遠方からお越しのお二人の方にもあらためてお礼申し上げます。

 来年もGold Castleの陰に隠れながら、源泉の場として濃い稽古が出来る環境を維持していこうと思います。ここでご縁のある方はかなり濃いものですので、そうした方とのご縁を来年も大事にして行こうと思っております。

 今日参加出来なかった平日稽古会の皆様におきましても、今年一年ありがとうございました。来年もさらに深く進めて参りますのでよろしくお願いいたします。


2020年1月18日(土) 『抜刀術 特別講習会』(お申し込み受付中)

金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


金山剣術稽古会

2020年1月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-29(Sun)
 

Gold Castle 殺陣&剣術スクール 2019年稽古納め

 日曜日に家に居ることが不思議な気分である。昨日は私が主催する活動の稽古納めとなり、Gold Castle 殺陣&剣術スクール、金山剣術稽古会ともに2019年最後の稽古をおこないました。

 年末はなにかと忙しくお越しになられる方も少ないのではと思っておりましたが、なんとか都合をつけてお越しいただいた方々もいらっしゃり賑わうものとなりました。

 講習では、杖の新しい技「燕打ち」と「大燕打ち」をお伝えいたしました。これは裏の動きに目が向くようになり、裏の働きというのは目に付きにくくなるべく簡略化して少なくした方が良いとどこか思っていたのかもしれませんが、その事が自然と消え、裏の動きに興味を持つようになっており、そのことから今までに無い動きに気が付く事になりました。

 こうしたことは面白いもので、殆どの人が表の動きは直ぐに入り、裏の部分はゆっくり見せていてもなかなか伝わり難いものでした。どうして表と裏に気がついたかと言えば以前にも記しましたが、目の使い方、誘われ方、「表裏の見眼」という目に誘われないように眼を使うことで見えてくるもの気が付けるものがあるということからです。つまり物が見えていても、その実態までは見えていないということです。表を見れば裏が見えない。裏を見れば表が見えない。というように実態を見るには目に誘われないということです。そのためには目に誘われずに観る眼をいかに養っていくかが重要になります。表ばかりを見続けてきた人ほど、裏の部分を観る眼は退化してしまっている可能性があります。私自身の課題としましては、その「表裏の見眼」を意識的なものから無意識レベルで感じられるように、何年掛かるか分かりませんが、そのことは全てにおいての課題として取り組んで参ります。

 全てのことを意識的に支配してコントロールするのは心に悪影響を及ぼしてしまいます。武術稽古でもそうですが、そのことを意識的に考えなくとも伝えてくれる何かがあります。つまり、深層心理に強い思いがあれば状況に合わせて勝手にお膳立てしてくれるものだと思うのです。それを、稽古において全て段取りし遣るべき内容、話す言葉を全部決めてしまっては全く無駄な労力とストレスになってしまいます。そうした思いが強ければ、自然と御膳立てしてくれる能の優れた働きの出番を封じてしまうことになるのです。

 ですので、何かを本質的に進化させたいという事に対して、どういう想いで取り組むのかという事が、それぞれの人にとっての目指すべき目標に定められる在り方であり、今の根源的な想いや表も裏も含めた存在そのものに生まれ来る自然な導きが、その人の道ということになるのでしょう。深層心理からは逃れることが出来ませんので、深層心理と自身が望むことへの表裏が一体となった生き方が無意識に置ける己の助けとなるのではないでしょうか。

 気が付けば講習内容から話が逸れてしまいましたので軌道修正。

 最後におこなった「捧げ首潰し」や「捧げ首潰し返し」なども初めての方には興味深く取り組んでいただきました。昨年11/7にBABジャパンのDVD撮影をおこないましたが、あれから一年が経ち、杖術や体術などさまざまに有効な技や不思議な身体の使い方が見つかりました。今後はさらに利きを高めながら、根本的に変えていけるような身体の使い方を模索し、さらなる向上へと続いて行きたいと思います。

 今年一年、生徒のみなさまにはお世話になりました。新しく生徒になられた方、仕事の都合などでなかなかお越しいただけない方、体調を崩して長期療養されている方、学業のため勉強に専念しお休みされている方、出会いが増えればそれだけいろいろな状況をご連絡いただくことになります。Gold Castleがこれからも皆様にとりまして、得難い場であるように私自身も精進して参ります。稽古始めは一週間後の1/4(土)となりますが、新年を迎え新たな気持ちで進められるよう皆様良いお年をお迎えくださいませ。
ありがとうございました。


2020年1月18日(土) 『抜刀術 特別講習会』(お申し込み受付中)

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金山剣術稽古会

2020年1月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-29(Sun)
 

古流剣術との交流稽古

 暮れも押し詰まった気配をようやく感じ始めた本日27日は、金曜日ということもあり仕事納めの人が多かったと思われます。私自身は、明日28日が自ら主催する講習会や稽古会の稽古納めとなります。年末年始の状況といたしましては、これといっていつもと変わらない一週間となりそうです。勿論講習会や稽古会は会場がお休みのためありませんが、私自身に掛けられる時間がありますので、2019年動いてくれた身体と、2020年の流れに乗っていけるための身体として調整に時間を掛けたいと思います。

 2020年は、私の感じ取る中ではサバイバルな一年になりそうな気がいたしますので、周囲に流されず自らの力量範囲の中で、育ててきたものを大事にして行きたいと思います。

 それでは稽古記事へ入ります。

 昨日木曜日は高田馬場にて渡部氏とA氏との稽古。

 開始前に杖術で二杖之位から感覚を探していた際に、フト気配を感じて目を開けたところそこに五十嵐剛さんがいらしてお互い満面の笑顔でご挨拶。五十嵐さんとは2013年から毎年甲野善紀先生のDVDに受けとしてご一緒させて頂いており、同じく井上欣也さんともずっと一緒に参加させて頂いております。お二人とも素晴らしく技も生き方も進展されておりますので、今こうしてお二人のお名前を書くことすら緊張してしまうようになりました。

 身内のような温かい気持ちが湧いてきてしまうものですが、社会に出て、いろいろな事を経験しそうした中で、今こうして自分と言う存在を知ってくださる、そして親しみを持ってくださる方々と出会えることの有り難さに感謝いたします。幾つものあの頃には、到底今のような生活や思考、今まで出会うことのなかった方々とのご縁、そうしたものは考えられるものではありませんでした。ですから人生と言うのはそうなるものであったとしても、全く解らないものであります。絶望や将来の不安、手掛かりのない日々の繰り返しに、一年、また一年と歳が重なることの恐ろしさを感じたものでした。

 おそらくそういう方は沢山いらっしゃるものと思いますし、今の段階で苦しい中でもがきながら、いずれ想像もつかなかった人生に突入する人もいらっしゃるでしょう。今日の稽古で、意識と無意識の話をいたしましたが、無意識の働き「無意識力」を高めるためには意識の在り方、育て方が大事であり、環境に負けない己の意思や信念というものが、無意識の決定や選択の際に、その人に合った流れに導く「偶然」というものを誘発するのではないかと思うのです。

 稽古では、杖術で新たな抜き技を発見し、それが剣術にも遣える事が解った。
 さっそく剣術で試みたところ、身体も太刀筋もその変化が分からない内に喉元へ切っ先が突きつけられてしまうという打太刀側の景色であった。しかしながら、大して技という操作が無いので果たしてこれは、有効なのは有効であるが、これだけの事になぜ気が付かなかったのかということと、きっと何かしらの落とし穴があり、やはり有効では無いのではないだろうかという思いがどうしても消えず、そこにどのような粗があるのかを感じ取れない奇妙なまま、安易に有効なものなどある筈が無いという思いが残ったままこの稽古を切上げた。

 正面斬りの稽古では、A氏にこの日から歩を付けての正面斬りをおこなっていただいた。その場でおこなうものと歩をつけておこなうものとでは、重心移動と慣性から貰い受ける身体の整い方が必要になり、一気に考えなければならない情報が増えてくる。そのため、A氏は構えから振り始めるまでにかなりの時間を要していたが、「それはそれで良い事ですので、動けるように予測と把握に努めて下さい。」とお伝えした。

 渡部氏とは木刀を使っての「峰返し潰し」をおこなった。素手でおこなう「触れ手落し」の感覚のせいか、この峰返し潰しが全然上手く行かなくなってしまい、おそらくはバランスが崩れてしまったのだろうと思われるが、そのバランスとは重心の事ではなく、素手でおこなった触れ手落しの身体感覚が、木刀を握っておこなう峰返し潰しとは何か合致しないものがあったと思われる。そこで、手之内を弛めフッとおこなったところ、いつものようにストンと落すことが出来た。何度かそれを確認し、手之内を弛めることで、全身を緩めた(瞬間の働きを存分に活かせる状態)状態の働きが繋がったのだと実感。そうしたことから、手之内をこの感覚で弛めた状態から、袈裟斬りの威力にどのような違いがあるのかを検証してみた。

 結果として、同じ強さで打ち込んだ場合、今までの手之内の締め具合と今回の弛んだ状態とでは、同じであるか、もしくは少し弛んだ方が打ちが重いことが確認できた。(打ち込む寸前までの締め具合)これはまだ時間を掛けて検証していないのでなんとも言えないが、システマで、私も受けたことがあるが脱力して拳を相手の肩などに上から打ち下ろす際に、力んだ状態と脱力した状態では驚くほど重さに違いがあり、今こうして思い出しながら書いていると色々稽古で試したいことが浮かび上がってきたが、身体に抜けが無ければ発揮できない力の繋がりがあり、それは自分で詰まらせて駄目にしてしまっていることに気が付いていないことがまだまだ多いのではなかろうか。勿論、ただ脱力しただけで働きは生まれないが、働きの操作技術が養われた上で脱力の感覚をその動きに合わせて整えることが出来れば、新たなる何かに気が付けるかもしれない。

 
 そして本日金曜日は、高田馬場にて青木賢治さんと稽古。

 青木さんとの稽古は、WEB動画「かざあな。」で杖術編、剣術編、抜刀術編のいずれも打太刀をお願いし、その際におこなう技を検討するとき以来である。2017年の暮れから2018年の1月頃に計四回おこなったので、それ以来の稽古となった。

 10年近くの付き合いなので、青木さんも身内と言えば身内の最たる関係である。現在は武蔵円明流判官派で稽古をされており、今日はその古流の剣術を目の前で見せていただく貴重な稽古となった。

 一刀による型と二刀による型、居合も拝見でき、青木さんから「金山さんならどう扱われますか。」という私がアドバイス出来るものなのかと思いながらも、興味深い突きの動きであったり、二刀における脇差の使い方を、私がおこなっている小太刀稽古で気付いた片手持ちでも強い身体の使い方をお伝えし、深く感銘を受けてくださいました。これは能の動きに非常に良く似ており、私も品川区総合体育館で土曜日の金山剣術稽古会の稽古時に突然浮んできたのであったが、特に競った状態で押し合う場合、両手持ちの方が負けるほど強いのには驚いた。私にも二刀の型を教えてくださり、相手の上段からの真っ向斬りを左手に持つ小太刀で受け止め、そのまま押し込むことが出来たため、圧を掛け前に進みながら右手に持つ大刀で胴を斬り払うことが出来た。尤もこれが示現流のような強い斬り込みだと厳しいと思われるが、その際にはそれに適した型が合ったように思えた。対薙刀の構えであったり、宮本武蔵の壮年期に工夫された武蔵円明流には二刀に至る経緯を型の中に感じさせられるものがあるようにも思える。こうして青木さんと交流させていただけるお陰で、古流の剣術というものを感じられる願っても無い機会である。勿論私は、青木さんから古流の剣術を学ぶというのではなく、私がおこなっている剣術と身体の使い方という観点から互いの稽古に活かせるものを研究稽古を通じて学びあうというものである。

 剣術では大きな発見があった。それは昨日の稽古で発見した抜き技の粗である。普段の袈裟斬りであれば抜き技は有効なものであるが、袈裟斬りと斬り結びに共通する斜め太刀筋というのは、同じであってはならないということに今更ながら気が付いたのであった。袈裟斬りの場合、相手との間合いが一足一刀であっても肩口に刃が達していなければならないが、斬り結びの場合、それほど深くは間合いを詰められず、相手は柄を握る手元を斬りつけてくる。それに応じなければ拳を斬られてしまうため自然斬り下ろす動きとなる。しかし、そこで袈裟斬りのように斜め下まで切っ先を振り抜いてしまっては、抜かれた際に終ってしまう。そのため、斬り結ぶ際の太刀筋というのは、決して相手の身体から切っ先が外れてしまわないように振り下ろすことが肝要であり、仮に抜かれたとしても、我が太刀筋は相手の籠手を斬っており、相手も迂闊には抜き技をおこなえないことが今ごろになって解った。

 身を守るためには、斬るための軌道から外れてもそこに当てられる太刀筋が必須であり、そうでなければ簡単に終ってしまう。当然斬るための軌道から外れても、刃が立っていれば相手の血管は切れるものであり、手首であればそれは有効な太刀筋であると言えるだろう。袈裟斬りが一つであるとは、何たる不覚!さまざまな間合いや状況により求められる太刀筋が異なるのは当たり前である。今日得たものからさらに広げて行けるように研究したい。

 杖術では「二杖之位」からの技をお伝えし、興味深く取り組んで下さいました。体術でも「触れ手落し」を受けてくださり、立ちと座りでそれぞれ驚いていただけました。他には「蠢動」をお伝えし、身体の質量が上がるような強さと持続性に驚かれておりました。

 そして最後は「杖整体操」と、幾つかの講習会でおこなうメインテーマを今日一気におこなったような私の生徒からすれば贅沢だと思われる時間でした。杖整体操も初めて受けられましたが、剣体研究会や韓氏意拳等も学ばれている青木さんですので、とても深部まで効いており、私がこれまでおこなった方々の中で二番目に深い反応を示されました。最後は「寝返し」や「両手持ち上げ」「片手持ち上げ」などおこないましたが、もう起き上がれないほど、そのまま寝てしまいたくなるほどの状態になり、完全に表情が変わり、視界が変わり視野が広がりましたと仰っておりました。時刻は21時近くとなり、17時から始めた稽古があっという間に過ぎ去ってしまいました。

 帰りに居酒屋で積もる話を交わし合い、笑いと愚痴の情報交換がこんなに楽しいのも数える人しかおりません。お仕事がライターでもある青木さんですのでさすがに聴くのが上手で武術ライターになったらさぞ楽しみな記事になるだろうと思います。

 さあ、まだまだ記事を書きたいところですが、もう4時になろうとしているのでこの辺で終わりにしたいと思います。
 明日は、じゃなくて本日は12時30分から戸越体育館にて今年最後のGold Castle 殺陣&剣術スクールの講習となります。本日は杖術です。そして、15時00分からは金山剣術稽古会「土曜日稽古会」最後の日となります。最後という事もあってか、また私主催の稽古納めということもあってか、四名ほどの方がお越しになれれる予定です。来年からは平日稽古会のみとし、長く間を空けずに続けられる方とともに、少人数にしかならないと思いますが、そのなかで研鑽しこの源泉の場を大事にご縁のある方とともに稽古していきたいと思います。

 それでは本日もみなさまお待ちしております。


2020年1月18日(土) 『抜刀術 特別講習会』(お申し込み受付中)

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金山剣術稽古会

2019年12月 武術稽古日程

2020年1月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-28(Sat)
 

身体と心 それぞれの修錬

 24日火曜日は「クラーチ剣術教室」の講習でした。この日は関西の講習会などで世話人を務めて下さる川原田喬生氏がゲストで参加。前日にオーストラリア旅行から帰国したばかりの氏と津田山駅で待ち合わせし、ともに会場へ。

 講習前にさっそく「触れ手落し」を試みる。私より10㎏近く重い川原田氏でも力を抜いて立っていれば両手が床に付くほど崩れた。出来てしまえば誰でも直ぐに出来てしまいそうな感じがするが、私自身杖による「お辞儀潰し」や木刀での「峰返し潰し」という変遷を辿ってきたのでまだ出来る人は少ない。これまで立った状態でストンと崩されたのは、渡部氏とGold Castleの先日土曜日の講習でおこなった際のFさんのお二人である。だがこれは座りでおこなうと比較的やり易いため、川原田氏も直ぐに私を崩すことができた。クラーチ剣術教室のSさんが、座りの状態から耐える準備で望まれましたので、「じゃあ少しだけ力入れますから気をつけて下さいね。」とお伝えしましたが、大きな体のSさんが鼻を打つほど前方に倒れ飛んでしまい、これには冷や汗を搔いたのですが、同時に両手も付いていましたので大事には至らず安堵いたしました。

 休憩時間に軽くおこなったものが皆さん不思議がってそれぞれに始め出しましたので、そのまま他の身体の使い方による力の伝え方をお見せし益々不思議がっておられました。私如きこの程度のことは本当に何でもないことですので、それでも喜んで興味津々に取り組んでいただけて良かったです。

 杖術では、両手寄せの操法を川原田氏にもお伝えし興味深く稽古されておりました。体術が相手に力を通していくのであれば、杖術や剣術では得物にロスなく力を伝え、それを身体が貰い通していけるか、だと思われる。

 自ら発したエネルギーに遠心力や慣性が掛かり、それらが身体とぶつからず最適なタイミングで自然に運ばれていくようにおこなうということは、得物と身体が「通り合う」ということとも言える。

 身体が求めるものの審判に狂いが無くなって来れば、身体に委ね身体に判定を仰ぐことが出来る。身体と心が繋がっているのなら、身体の流儀とは心の流儀でもある。その心の在り方が何かを習得する際に、立ちはだかるものに対する向き合い方を決定する。心が下した判定に応えるべく身体が身に付けたもの。それがその人の流儀となるのかもしれない。

 そうしたことの積み重ねが、ものの考え方、思考法、等に表れその人そのものの評価に繋がる。つまり、同じことをやっても心の流儀が異なれば身体観も異なり、全く別物になってしまうということ。それだけに何かを伝えるということは難しいのであろう。

 日にちが経ち記事の内容もどこか置き忘れて今の心情を綴っているが、道場稽古は意識の修錬、道場以外の日常は無意識の修錬、というような事を帰り際に川原田氏に思わず口からこぼれてしまったが、身体と心においてもその役割はそれぞれに分かれて実践修錬されているのだろう。勿論それらが通じ合って何かを生み出すのであるが。


2020年1月18日(土) 『抜刀術 特別講習会』(お申し込み受付中)

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2019年12月 武術稽古日程

2020年1月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-26(Thu)
 

少しずつ浸透していく活動

 柚子湯に浸かり湯冷めをしないように暖かくして今日一日の最後の作業に取り掛かる。

 現在2時を少し過ぎたところ。カラダがポカポカして気持ちいい。パソコンの後ろには窓があり。割と強めの雨音がなんだか気を静めてくれる。

 舞台を観に行くとさまざまな公演案内のチラシが付いて来ますが、俳優さん達はテレビだけでなく忙しく舞台にも出られているのだと、あらためてチラシを見ると大変な仕事だなぁと思ってしまいます。その陰ながらの努力と、エネルギー、スタッフの方々も含めて関わっている人は、お芝居だけでなく音楽やダンスも合わせると相当な人数が都内に蠢いているのですね。都心部はとにかく人が多い。よくよく考えれば、自分の速度で歩けない人がどれ程多いかを思い知らされます。歩くだけでも思うようにならない時間帯を日々過ごされている人は本当に大変だと思います。そうしてゆっくり歩かざるを得ない簡単な道程を、人がバラけた瞬間に取り戻すかのように急ぎ足になってしまう人間心理は致し方ないものです。

 あるとき、カフェの窓際で外を眺めていたときに、こうやって景色を見ていても、あのビルの中が透けて見えたり、乗り物が透けて見えたり、地面が透けて見えたら、そこら中人間だらけだと、当たり前のことですが凄まじいなと…そしてそこに人間ドラマがあり、皆がそれぞれをを主体に世の中を見ているのだと、そしてそのあまりに多い視界に入った人の群れの数の全員が一つのこと、一人のことを知っているというのも凄いことだと、エネルギーの分散と集約に、情報が大きく関わっているのだと感じます。

 
 さて、本日のGold Castle 殺陣&剣術スクールの講習では、体験参加の方がお二人お見えになられ、生徒ではR君が一年七ヶ月振りにお越しになられました。小学校六年生の頃に入会され現在中学三年生です。身長も私を超えてしまったようです。ご両親様にもお久し振りにお会いすることができ、最後までご見学下さいました。こうして部活動をやり遂げ再び再会して下さる事にR君ご本人の思いも感じますし、ご両親様のご理解とご協力に教室を主宰する者として責任を感じながらも大きな力が湧いて来ます。

 今日は同じ中学三年生のK君が風邪気味で体調の悪い中よく集中して付いて来ましたしもう一人のR君も月に一回ですが、その一回を大事に考えながら自然な笑顔で受け答えが出来ております。昨日は小学校六年生のK君が参加され、この年頃のお子さんは私も経験がありますので安心して観ております。高校三年生のお兄さんとなったA君も続いております。とにかくみんな素直です。自然と素直になりました。何より一番なことは、親に言われて来るのではなく、自分の意思で遣りたいという思いがあれば、あとは結果が付いてくるものです。それがなければ全ての事は成立いたしませんので、ご本人が遣りたい気持ちであることが肝心です。

 11月12月に新たな女性陣が四名生徒になられました。1月も早々にお一人生徒になられますしその他にも体験参加を終えられそうな方も数人いらっしゃいます。フレッシュなメンバーが揃う縁というべきか、そういう必然的な時期の到来を感じておりますので、七年目を迎えるこの教室を盛り上げていっていただきたいと思います。

 気が付けば日曜日の講習は今日が最後でした。28日土曜日が年内最後のGold Castleの講習となります。そして年初めは4日土曜日となります。稽古納めと言っても、土曜日に関しては間が空きませんので、長く感じる一週間ではあると思いますが4日は殺陣基礎クラスもスタートいたしますので、とくに生徒になられたばかりの方や、体験参加で躊躇されていた方々にとってはお勧めのクラスでもあります。2月、3月も、二回ずつ土曜日の殺陣基礎クラスは開催いたしますし、3月に関しましては日曜日に二コマ開催いたしますので、他の予定との調整も付き易いですし、まとめて同じ日にダブル受講しても大丈夫です。特典といたしましては、一コマ終って次の二コマ目まで一時間強間がありますので、その時間帯は、私の手が空いていればフリーで質問を受けながらお伝えすることも可能です。3月の状況を見て今後の開催コマ数の調整をして行きたいと思っております。

 今年一年、良い生徒達に恵まれました。

 昨年から若い生徒達が続いて入会されたことも良い出会いでしたし、良い成長をしていると感じます。大人の生徒達も安定して続いております。これまでは、何か別の習い事と併用して技術を身につけたいという方が多いものでしたが、おそらくこれからは、私の稽古会も含めて、ここから始めたいと思い訪れる方の割合が増えてくるように感じております。教室も七年目となり、少しずつ少しずつ何かが浸透し始めてきたように感じます。「自由さと統制」という相反するものを両立させながら、その最適なところをそれぞれが感じ取り実践できるように、眼を養い心と向き合える習慣が育つことを観ております。

 本日もお越しいただいた皆様ありがとうございました。

 次回は28日土曜日、12時30分から戸越体育館で杖術クラス、年内最後の講習をおこないますのでお待ちしております。


2020年1月18日(土) 『抜刀術 特別講習会』(お申し込み受付中)

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2019年12月 武術稽古日程

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2019-12-23(Mon)
 

出会いのご褒美

 昨日はKAAT神奈川芸術劇場ホールにて生徒の佐藤誠さんがご出演と方言指導された舞台『常陸坊海尊』という作品をGold Castleの生徒三名と観に行きました。

 3時間を超える舞台でしたが10分間の休憩が二回入りましたので身体も楽に観られました。
 白石加代子さんや中村ゆりさんの迫力ある演技、佐藤さんのリアルな青森弁など新鮮な気分でした。内容は1964年に秋元松代さんが書かれた大変評価の高い戯曲ですが、それだけに難しく、観るにはそれなりの心構えが必要なものでした。しかし、パンフレットを読んでよく解らなかった内容も、観劇後に再度読み返して見ますと理解出来るようになった部分も多く、史実や東北地方ならではの雰囲気といいますか勉強にもなりました。席も最高の場所でした。終演後スタッフの方に話が通っておりましたので、楽屋前までご挨拶に伺うことができました。こんな事はなかなか無い機会ですので、いつもと変わらず誠実な佐藤さんのご対応には舞台と同様感動いたしました。

 観劇後は昨年同様中華街にて食事会。

 やはり中華街は夜になると華やいでおり、どのお店に入るか選ぶのが困難。結局昨年と同じお店に決定(笑)。一階は混んでいたものの二階は空いており落ち着いて皆さんと楽しく舞台のお話など懇談いたしました。こうして生徒が舞台に出演し、生徒達とともに観に行き食事をおこなうことは私にとって出会いのご褒美みたいなもので、お金にはかえられないものです。今日と明日は新国立劇場ではYちゃんが舞台に出られますし、人と出会うだけで関係性が生まれるだけで感情が動かされるというのは心の働きなのでしょう。その心がどういうものであるのかは場の整い方が重要であると思いますが、これからもそうした場の中で出会った人たちとご縁を繋いで、豊かな時間を増やして行きたいと思います。

 
 そして本日土曜日は戸越体育館にて剣術クラスの講習会。
 今日は「胴斬り」「十文字斬り」の後、予定を変更して「陰陽之太刀」「陰陽之祓い」「陰陽之位」をおこないました。さらに講習のバランスを考えて「反し突き」と最後に「触れ手落し」をおこないました。こうして見ますと結構いろいろやったなぁと思います。剣術では何のために相手に切っ先を突き付けるのかを考えておこなわなければなりません。日常では出来ない相手との遣り取りをただの形だけで終らせてはなりません。そうした型の前、型の後、そこに通じる相手と自分との遣り取りがそれぞれの動きを通しておこなわれます。ただ形を正確に動くだけでは目的がなっておりません。(尤もそれでは形が正確に出来ておりませんが)言葉が絶えず出てしまうという時は考えが及んでいないという事でもあります。「沈思黙考」し初めて気が付く多くの事に眼が向けられるのですが、いつもの自分ではいつもの状態から抜け出せません。何かを手に入れるためには、今までに無いことに対する自らの状態を整えておくという事が、道場に入る礼を通じて準備されて置かなければならないということです。自らの力量を棚に上げて申し上げるのは甚だ恥ずかしい限りですが、こうして手が動くものですから、これはよどみの無い無意識から意識に通された言葉として文字に起こしております。

 最後の「触れ手落し」をおこなう予定はありませんでしたが、今日は口やかましくおこなったものですから、最後に楽しんで終えていただけるように身体の不思議さ面白さを感じていただきました。「蠢動」のようにお伝えすれば誰でも出来るものではありませんが、それだけに出来た時の喜びは大きいものです。これは力よりも身体の使い方と精確な操作ですので、身体操作の精度を高めるものとして受けと取りの互いに楽しめる体術系稽古であります。

 それと今日はFさんの木刀に斜めに斬り込んだところ、さほど強く振らなかったのですが、中心を喰うように狙ったところひび割れなど入っていなかったと思われる木刀が折れて飛んで行ってしまいました。木刀の材質の差があると思いますが、それでも大体木刀が折れるときと言うのは断面が斜めに真っ直ぐ鋭利に折れていくものですが、今回のように毟り取ったような凹凸の激しい断面は初めて見ました。折ってしまったのは私の責任ですので明日代わりの木刀を持って参ります。

 今日は帰りにオンとオフの精神状態という事について考えることが出来ました。つまり、「表裏一体」ということに当て嵌めますと、表を司るためには裏が表のままであってはならないということ。何も考えなければ表と裏のオンオフは自動的に出来ているのですが、そこに何らかのバランスを変える気付きや習慣が加わってきますと、オフの使い方が下手になってくるのです。それは表に引き寄せられた結果なのかもしれませんが、表に誘われずに裏のオフをどう使いこなしていくかがこれからの私の精神状態としての進展に繋がってくるようにも思えます。何となく、武術稽古と関連してくる感覚が芽生えて来ましたが、このことはよく解らない方が多いと思いますが、何かを変えるためには普段何気なくやっていることに実は大きな意味があるものです。その何気なくを掘り下げて、質の高い何気なくにしたいものと、今日の帰り道にフト考えさせられました。まあ、学んだつもりが馬鹿になってしまったということもありますので、そのあたりは急がず焦らず見つけたいものです。


(最後に昨日の写真を掲載させていただきます)

2019.12.20 KAAT神奈川芸術劇場楽屋前

佐藤さん今回もいろいろとありがとうございました!


2020年1月18日(土) 『抜刀術 特別講習会』(お申し込み受付中)

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2019年12月 武術稽古日程

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甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-22(Sun)
 

一日の内に起こることは大きい

 今日は高田馬場で渡部氏と稽古をおこなった。その向う道中に誘われることと誘いに乗らないことは意識的な問題ではなく、そうしたことにエネルギーを使わせられてはならないということで納得出来た。世の中は色々と神経を逆撫でるように仕組まれているが、そうした誘いに乗らないことは当然であるが、乗ろうとしないことに意識を努めさせる事も実は誘いに掛かっているのである。

 例えばアフリカの難民は昔から飢餓に苦しんでいる。顔に蝿がたかっていても、目や鼻の中に蝿が入り込んでいても、全く意に返さず生き延びるための日々を送っている。「ああ、なんという愚かな私の思考であったか…」目や鼻に蝿がいても気にならないなんてことはどのような心境なのだろうか。そのようなことは当たり前の事で気になるものではなくなってしまうのだろう。それどころかもっと切実な問題があり、そのような些細なことは無意識の中に収められるのだ。余計なことに自然とエネルギーが使わせられてしまわないように人間の神経や感覚というのは切り替えられるのだ。

 そのようなことを渡部氏に話しながら剣術稽古をおこなった。意識的に余計なエネルギーを使わせられてしまわぬように稽古をおこなう。精度に関しても意識を薄めて精確におこなえること。そのためには、複雑で手数の多い打ち合い稽古よりも、一息で終ってしまう程の稽古が無意識で反応出来るレベルに近づけるように思える。

 悪い意味で我を忘れるというのは、無駄なエネルギーを使い過ぎているのだろう。それは物理的な力みや強さだけでなく、気の持ち方としてのエネルギーというべきか。確認癖というのは余計なエネルギーである。手順に拘るのも余計なエネルギーとなる。精神的な力みともいうべきか、兵法家伝書ではそうしたことを「病」と表している。

 ではエネルギー(気のもちかた)を何処に向かわせるのか?

 その答えは現時点ではまだ解らない。自然に任せ、身体が心地良く整っていたならそのエネルギーの通りは誤っていないのではなかろうか…しかし、そうした身体との出来事は終りなき遣り取りとなっているので、無意識に近い状態で自然に対処できることが最適な手段といえると今は思っている。

 そうした思考から、杖術稽古、剣術稽古、抜刀術稽古、それぞれの求める働きは異なり、無意識に思いのままに動けるためには、精密な何かの装置の如く動ける必要もあり、その両方を各得物の稽古では明確に分けておこなっている。

 今日は昨日に続いて体術というか身体操作の働きを検証する稽古を30分程おこなった。突きの稽古であるが、これは本当に色々なところが気になってなかなか難しい。ただ言えることは意識的な考えでは出来ないという事だ。精密な操作と何かの気付きが合わさりながら微かに進展する。何で良かったのか何で悪かったのか、曖昧なだけに難しい。しかし、身体感覚を練るにはとても身になる稽古といえる。そのためには微かにでも興味深く感じられる働きが実感できるように進められることが大切である。

 あらためて稽古では、「動きを練り上げるもの」、「新たに開発するもの」、「自由に身を任せて動けるもの」、この三つが大事となる。誘われずに目の付け所、気の置き所、そうした無意識に近い状態で対応できる身の養い方を修錬し、生き方とともに進展させて行かなくてはならない。

 一日の中で感じること、整理すること、把握すること、改善すること、そうした日々を一日、また一日と過ごして生きていく。解ったことを実践出来る、または実践しようと試みることが出来るということは有り難いことでもある。

 誘い云々もあるが、私自身の思い上がりも余計な意識が余計なエネルギーを生み出してしまっていたのだろう。そこに気が付けたことが今日は一番の収穫であった。

 明日は、気分を整えるには絶好の機会である舞台鑑賞に行って来ます。KATT神奈川芸術劇場にて生徒の佐藤誠さんが出演される舞台『常陸坊海尊』という作品です。Gold Castleの生徒三人とともに観劇いたします。大きな会場ですので非常に楽しみにしております!


2020年1月18日(土) 『抜刀術 特別講習会』(お申し込み受付中)

金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


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2019年12月 武術稽古日程

2020年1月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-20(Fri)
 

敏感になることの弊害とこれからの期待

 時に訪れるが、先週の13日頃から身の回りの出来事が悉く悪い方向となっている。さすがに呼吸も苦しくなってきたがなんとか回復した。しかしこれからの日々、人混みの中で目にするものに誘われず如何に自らを保っていられるか…たとえ人混みでなくとも、対人において如何に誘われずにいられるか…これは今後永く続くであろう日々の対応法をまるで地獄とはこの世の中の今目の前にあるその光景だと思えてしょうがないので、本気で探っていかなければ潰れてしまう。恐らく考え方を変えれば救われる。そう、大層な修業に出かけなくとも、今そこにある状況をどう誘われず同じ穴のムジナにならず過ごしていけるかが試されている。これはなかなか大変であるが、日進月歩で下降している世の風潮に対し生きていかなければならない。

 
 稽古記事に入る。

 月曜日は高田馬場で竹田氏と稽古。「触れ手落し」を試し、杖術、抜刀術を稽古した。竹田氏との稽古では色々と生きていく事に対する話が多い。聞き上手な方なので、つい過去のことや今思っていることを話す事が多くなってしまう。それは私にとっても重要な時間の一つでもあり、私が今生きていることの全てはこの稽古を発端に循環しているからだ。稽古を通じて何を学ぶかは人それぞれであり、決して武道武術を通して心が磨かれたとか人として成長したということは、ただやっていただけであったり、エゴの強い人には、成長どころか悪い部分を増徴させてしまっている。そうしたことは、10年間でさまざまに感じてきた。

 生き方に対する問いかけがあるという事は、竹田氏自身もそこにこれまでの選択で曲げなかった部分があるのかもしれない。私など生き方について語れることなど無い。ただ、自分の好きなことだけをやって生きてきただけである。しかし、好きなことと言っても趣味とは違う。その道でずっと生きて行こうと思いながら、今の道になっただけのこと。好きなことと言うよりは、そこにしか自分を保てる居場所が無かったのだろう。だから好きなことと言うよりも正確にはやり遂げたいと思ったことなのだろう。

 ボクシング、役者、武術、そうした変遷を辿ってきたが、そこに共通した思いは生き方である。高校からボクシングを始め、卒業後会社に入り実業団でボクシングを続けた。そこからずっと一人暮らしが今の私を作った。福岡から、広島、大阪、埼玉、そして東京。人との縁だけで今この地で生きている。才能も無く学歴もない。だから時間を使い一人で生活していく人生を選んだ。勿論その事には後悔していない。これまでに色々な出会いもあった。私は決して優しい人間ではない。さまざまな仕事をし、その環境に見合った自分を作り出した。それは役者という仕事の勉強でもあったが、そうしなければ生きていくのが大変であったからだ。おそらく今の生き方である武術は私の求めている私の姿である。これまでたくさん寄り道したせいで武術を始めるのに随分遅れをとってしまった。しかし、生き方については高校に入った時点で覚悟を決めていた。常に悩みながら喜び勇み失敗し、その都度自分で解決しなければならなかった。そうした経験は今になってようやく生きてくるものとなった。これまでの時間が今の私を導き、誤った選択や誤った誘いに引っ掛からないように助けとなっている。

 私がお子さんとの稽古に待ち焦がれていたのは、おそらく生涯ないであろう自らの子を育てられない思いが、何処かに強い想いとして自らが幼き頃に経験した大人に対する不信感を反面教師とし、子供たちを感じ取り何かを伝えようと向き合っているのだろう。高齢者の方々については、共働きで家に居なかった両親に代わり、私の幼き頃に育てていただいた祖父母に対する感謝の想いが何処かで働いているのかもしれない。心を込めて下さった想いというのは色褪せることがありません。

 話が逸れてしまったが、15歳の頃の覚悟は今も変わらずにやり遂げたいことを生き方にしているということだ。

 火曜日は「クラーチ剣術教室」での講習。この日は「貰って動く」という事をテーマに杖でも剣でもお伝えすることが出来た。この日は休憩も忘れるほど武術色が強過ぎてしまった。体操のようなものを混ぜると効果的なものでも興味が失われてしまうので、このへんのバランスは難しい。しかしこのところは皆さんのほうが自主的にこれまでおこなった動きを練習されているので、予定を変更してそれをおこなうこともある。

 そして本日水曜日は、戸越体育館で渡部氏と稽古。私の体調が精神的に思わしくなくまったく酷い状態からの稽古となった。二杖之位からは、新たな打ち込みが見つかった。それと貰う動きとは別に「蠢動」をかけて非常に強固な構えとなる事も両手寄せの操法の利点であることが解った。

 抜刀術を最後におこなったが、この日は体術というか、身体操作におけるエネルギー伝達の有効な検証稽古に幾つか進展があった。

 まず「触れ手落し」に進展があり、浮きと姿勢の関係に気が付く。これは身体の働かせ方により姿勢も異なるが、こんなことぐらい気が付けよと思えるような事に今更ながら気が付けた。 お陰で「触れ手落し」の威力が上がったのと、足を高く上げなくても十分に落せる事が出来た。座りにおける働きも有効であること。そのほかには「突き」にも進展があった。これも下手なりにこだわって稽古している内容であるが、まだ書くには至らない内容なので触れ手落しのような感覚になるまでまだまだ時間が掛かりそうだ。

 少しずつであるが、前に進めるのはありがたいことである。出来て嬉しいことでも、その次に向えば今までと同じになる。それは何事においても同様の気持ちであろう。何か根本的なことが変わらなければいつまでもいつまでも同じことの繰り返しに苛まれてしまう。何かが変わる前の転換時期なのかもしれないが、そうした違和感だらけの日々からどう私が変わっていくのか、これは稽古以外の滅多とない出来事にもしかしたら遭遇するのかもしれない。


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2019年12月 武術稽古日程

2020年1月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-19(Thu)
 

先を見て舵を切れること

 今年も残り半月余りとなった。2020年という数字になると、子供のころ想像した近未来を今過ごしていることになる。空飛ぶ車やタイムマシン、衣服のデザインや建物の姿、そうしたものはアニメや空想のイメージとなったが、スマートフォンについては近未来を象徴したアイテムとなった。時代の主役はスマートフォンが握っているが、私がスマホ嫌いなのはこの記事でも何度か書いてきた。伸びた髪の毛のように皆均一に一斉に同レベルでの出来事が巡回している。結局のところ人間を育てるのはツールではなく、心なのだ。スマホによって(パソコンも同じであるが、依存度が違うと思われるので)心がどう育つのか甚だ疑問である。そうしたお金お金広告広告が渦巻いた便利なツールに見事に人は依存させられている。だがそれも自然の流れの内といえる。東京オリンピックも全く興味が無いが、そうした少し距離を置いたところで見て感じて行動出来る生き方は私に合っている。


 さて本日の講習では、体験参加の方々や新しく生徒になられた方々など賑わいを見せる講習でした。殺陣クラスでは前回に続き「近間の胴斬り」が効果的でした。しかし、通常の間合いに戻ると、間合いを詰めすぎてしまう感覚が残りがちなのでこれはこれで副作用があるなと感じました。

 久々におこなった「一対四瞬殺」では、手数が少なく手頃に立廻りが出来ますので楽しめるようです。タイプMが終りましたら集中的に一対四の方をおこないたいと思います。

 杖術クラスでは、「十一之型」をおこないました。これはGold Castleのホームページ「映像記録」の中からも見ることが出来ます。杖は手の感覚が鋭敏になりますし、同時に足捌きが身につきます。もちろんやり方次第ですが、目に頼らず感覚を一つずつ得ていくように、全体を観察しながらおこなうことです。その観察とは勿論目で確認するのではありません。

 後半は「呼雀」や「雀返し」そして「捧げ首潰し」をおこないました。これは身体の不思議さ面白さを感じやすい内容であり、とくに初めて浮きを掛けた身体の強さを体感した方は驚かれると思います。私自身武術を初めて一年ぐらいだったと思いますが、相手と向かい合って立った状態で片腕を合わせて、それを肩を落とした状態で斜め下に引き下げたところ体重100㎏の人が転がったことがあり、それは相手の人がシッカリ立てていなかったということもありますが、それでも大変驚かれ、私もそれ以上に驚き、もう一度試したのですが転がすまでには至りませんでした。それでも、当時は無意識でも筋力に頼る使い方しか身体が知りませんでしたので、そうした今までに無い身体の働きで相手が崩れたことに訳が解らず頭の中は「???」だらけでした。今となっては、肩を下げてたまたま軌道が相手とぶつからない軌道を描いたことでその先端の重さが相手に乗ったのだと思われます。

 しかし当時は、こうした初めての出来事にまるで夢を見たかのような感動があり、次の日の朝に出来なくなっていたらどうしようと不安になったりいたしました。その時からすれば今おこなっている「触れ手落し」は当時の私には気が付く術も無かった技だと思われます。まだまだ改良の余地がありますが、それでも普通に立っている人が触れた部分には殆ど圧を感じずに両手が地面に付くほど落とされてしまうので、その威力に反して痛みが無いということが受けている人に遠慮なく何度でも受けてもらえるという、研究には持って来いの技でもあります。

 最後は「捧げ首潰し」(別名、飛んで火に入る夏の虫)をおこないました。これは初心者の方でも順を追っていけば形になりますので興味を持っていただける技です。これまでにも相手に杖を掴まれた際の対応法をおこなってきましたし、今年の5/20に発売されたDVD「古武術は速い」の中でもお伝えしてきました。ですが今回の「捧げ首潰し」はまるで自ら首を捧げ出すように走り込んで来ますので、それに「はい、どうぞ」というタイミングで杖を被せております。一見簡単に強引にさっさとやってしまっているように思われがちですが、全てにその理由があり、その理由を精確に遂行して行っております。その精確さと即遂行につなげられるのは、目を使わずに身体で感じて自在に動く、昨日土曜日におこなったような稽古法が活きてくるのです。数年前にシステマの講習会に何度か行ったことがありましたが、そのときに型が無く、躊躇無く相手を崩す両手両足の使い方に感嘆いたしましたが、それを真似しようとしても出来るものではなく、身体の使い方と相手の反応の経験を無意識で把握出来るレベルまで持っていかなければなりません。当然目で確認していては出来ないことであり、如何に身体の中を観てそれに応じた反応が自然に出るかを観察し続けなくてはなりません。

 講習後にもお伝えいたしましたが、目でなぞって覚えてしまってはそれは表面的なものしか知ることが出来なくなるものです。武術では自らを如何に観察するかが大事になりますので、その養われた眼というのは自分のみならず相手の中身の部分まで瞬時に解るものがあるのです。そうした内なる眼を持って感覚を養っていきますとある時突然出来るようになる動きがあるのです。それらは全て繋がっているものですので、楽器の演奏と同じように、両手の動きが別々に動いてくれませんと譜面どおりの曲にはなりません。杖の動きも同様に両手両足が別々に先に例えた曲となるように動けなければなりません。そこには意識的な学習もありますが、もっと優秀なのは無意識の計算力ですから、そうした経験を身体に味わわせてあげるのです。箸の使い方と同じように、指をどのように操作してこれを食べようなどと思わなくとも、これを早く食べたい、次はあれを食べたい、と思えばそのように手は考えなくても動いてくれるものです。そうした身体各部の調和感覚による経験値のストックが、「こうしたい」と思った動きを容易にさせてくれるものになっていくのだと思います。とくに杖術というのは、無意識で把握出来る身体感覚が養われる稽古法として非常に有効な働きがあるように思われます。ですからクドイようですが目に頼っては台無しなのです。

 来年一月にはまた何人かの方が生徒になられる予定ですので、私自身も講師としてさらにレベルアップして努めて参りたいと思います。子供達やお仕事として必要とされている生徒も増えて来ました。全体の中で何をどのぐらい優先させるべきかを判断しながら、教室の空間を保ち、新たな人たちをより伸ばせていけるように舵を切って行かなければならないと感じます。

 本日もお越しくださった皆様ありがとうございました。


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2019-12-16(Mon)
 

表の誘いと裏の実

 今年はどの木も台風の影響で葉が崩れてしまっている。枝が折れた木々も相当あっただろう。外苑前の銀杏並木などは寂しい限り。来年は自然の生命力で綺麗な紅葉を見せてくれるか、はたまた再び台風の直撃に見舞われ彩が失われてしまうか、近年上陸後衰えない台風の勢力や都市部に直撃するという因果に人間は何を感じ行動出来るのか、なんにせよ、人間の抑えられないエネルギーをどのように使うかが地球環境の向上とこれまでのように相反するものではなく、互いに良好な関係となるようにしていくしか道は無い筈。しかし、それには相反することで大きく文明を発展させた近代の権力者が許すことは考えられない。自然は自然のままにあり、人間がどうしようとその結果訪れるという事が自然なので、愚であれ賢であれ、人間がどうなろうと自然にとっては知ったこっちゃないということだろう。だが、そうはならないという事も信じている。そこには何かしらの意思が働いているだろうから…。


 ハラハラと間を空けることなく葉が落ち続ける文庫の森公園。その向かいにある戸越体育館にて今日はGold Castle 殺陣&剣術スクールの講習をおこないました。本日土曜日は杖術の講習。ひさしぶりに自由に動くことをテーマに単体技から持ち替え、打ち込み、突きなどそれらをどのようにして自由に動けるかを考えていただきました。自由に動くという事は、自らの身体と得物に眼を向けてあげなければなりません。ですから、複雑な動きの型稽古をおこなうよりも自由に動くことのほうが実は難しいのです。

 自由に動く稽古を講習でお伝えするのは難しく、何をもって楽しめるかということに表面的な動きが出来るようになって出来たと思えることと、身体の動かし方を自得しその感覚を先に進んだ者と共有できる楽しみ方。当然始めから後者のような楽しみ方は出来ませんが、ある段階から変えて行かなければならないと身体が教えてくれるものです。その教えとは表面的な動きのコピーは飽きてしまい感動が薄れてしまうのです。身体にはこれまでの経験が無意識のうちにストックされていますので、無意識にストックされた情報をいかに意識下に置くことが出来るかが次の段階といえるでしょう。おそらくこれまで意識下にあるものは、視覚的に捉えた記憶の再現に近いものと思われます。映像であったり講習中の目の前の動きであったり、そうした記憶というのは表の些細な情報にしか過ぎません。無意識にストックされている裏の情報をいかに引き出すことができるか。そのことをここで全て私の経験を話すよりは、それぞれがそれぞれに考えて実践された方が効果的でしょう。

 本日は俳優のTさんが体験参加に来られました。お仕事の関係で急遽刀の使い方を学びたいと私に連絡が入りましたので、今回は杖術の講習でしたが、剣にも通ずる身体の使い方などを個別でお伝えいたしました。とても丁寧に感覚を持って稽古されておりました。

 生徒の皆さんは後半から型稽古「玉簾」「渦潮」をおこないました。上手く行かない部分は大抵裏の部分ですので、表の動きに誘われずにその人のレベルに応じて表と裏を見極めていくことが大事かと思います。当然私にも言えることですが…。

 小学六年生のK君も少し身長が伸びてきました。色々なことに興味がある時期ですので、今の経験が今後どのように活きて来るのか、もう少し深い部分で感じられるようになればさらなる成長が期待できます。お子さんは、ポンと急に驚くような変化を見せますので、一回毎の経験がさまざまに響いていくのだと思われます。

 明日は12時から品川区総合体育館柔道場で講習をおこないます。来られる方の見通しから賑わう講習になりそうですので、楽しみにお待ちしております。


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2019-12-15(Sun)
 

『抜刀術 特別講習会』のお知らせ

2020年1月18日(土) 品川区総合体育館 剣道場にて抜刀術の特別講習会をおこないます。

居合刀で抜刀術の稽古を集中的におこないたい方や、抜刀術独特の身体感を得るために、二時間抜刀術と納刀法をおこないます。(鞘付木刀も可)

この特別講習会では、現在私の稽古としている抜刀術や納刀法をお伝えして参ります。その中から参加者の方々に合った稽古法をお伝えしていきたいと思います。(初心者の方でもおこなえる内容があります)


2019.04.06 抜刀術 特別講習会
(写真はBABジャパン制作によるDVD撮影の一コマ)


【開催時間】
15時00分~17時00分 『抜刀術/納刀法』
18時00分~20時00分 『懇親会』

【会場】
品川区総合体育館 剣道場


【参加費】
講習会 3.000円


【お申し込み方法】
ホームページ、または「こくちーず」より下記の内容を明記してご連絡下さい。
①「氏名」 
②「年齢」 
③「性別」 
④「帯・居合刀の有無」(鞘付木刀でも構いません) 
⑤「懇親会の参加または不参加」
上記の内容を確認しましたら、こちらより折り返しご連絡させていただきます。


≪プロフィール≫
松聲館技法研究員
金山剣術稽古会 主宰
Gold Castle 殺陣&剣術スクール 主宰
高齢者住宅 クラーチ溝の口 剣術教室講師


≪参考動画≫
2019年 抜刀術

かざあな。抜刀術編

2019-12-13(Fri)
 

「触れ手落し」が進展

 今夜は綺麗に満月が見えてます。そして気温の変化が大きい一日でもありました。一ヶ月後には世間的にも空気の色も大きく変わりますので、まだ一年の締めくくりに入っていない今からが、一年のうちで最も変化の大きい一ヶ月と言えるでしょう。

 さて、本日は高田馬場にて渡部氏とA氏と稽古。
 まずさっそく渡部氏に「触れ手落し」を試みる。先日月曜日に竹田氏相手に通りが良くなったので、渡部氏に通用するかどうかと思っていたが、両手が床に付くほど落とせたので進展したと言っていいだろう。今日はこの「触れ手落し」にかなり時間を割いた。接触の具合、身体と手の方向の確認などさまざまに試してみたが、身体に任せる対応が最も利きが良いという結論に至る。勿論まだまだこんなものでは駄目なので、今後もさらなる検討研究しなければならない。実感として通して行くためには、接点が自分を止めてしまうような使い方に陥り易いので、目に付き難い裏の部分の何処に眼を付けるか、目に見えやすいものに誘われないように観ていきたいと思う。

 剣術では脇構え(車の構え)からの対応について研究した。中心を外しながら足を差し換えれば相手の籠手まで伸びるものである。下段と異なり、脇構えには体全体を使って剣を発する特徴があり、その体の使い方に、相手の太刀を外したり間合いを縮める働きがある。今回おこなってみて、これが稽古になるのかどうか未だ不明な実感しかなかったが、この脇構え(車の構え)そのものをもう少し改める必要があるような気もしている。

 抜刀術では先日月曜日に「懐月」の納刀を変更したためこれをお伝えする。私もまだ慣れていない動きであるが、次回1/18(土)におこなう『抜刀術特別講習会』でお伝えする予定。今回、鎌倉のTさんからの情報で居合刀が安く販売されていることを知り、数人の方がこれを注文されていますので、今回の特別講習会では絶好の機会かと思われます。

 私自身先月11/4に抜刀術の映像を撮影し、2017年のものと差し替えました。全十二本、名称と順番は変わりませんが、動きと二之太刀、納刀法が変更いたしました。そうした変更箇所も踏まえて今度の特別講習会ではお伝えしていきたいと思います。


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2019-12-12(Thu)
 

技術の向上とは、そこに至るまでの関門突破である

 12月も二週目に入っており、Gold Castle 殺陣&剣術スクールの方は体験受講のお申し込みを頂いております。来年は開催コマ数も増えますので、生徒が増えても余裕を持って一コマあたりの講習が見られるかと思います。また、どのような事がありましても私以外の人に肩書きを付けて指導を任せ組織を大きくするつもりはありませんので、これまで通り今後も全ての受付連絡から会場手配、講習指導を一人でおこなってまいります。団体としての規模は制限されるかもしれませんが、目の行き届いた組織運営でなければ育つものも育ちませんので、一貫性を持って長く続けていくための最善の方法として今後も信頼を得られる教室運営を目指します。


 昨日月曜日は、高田馬場にて竹田氏と稽古。
 昨日は「峰返し潰し」の手刀版、「触れ手落し」に進展があった。竹田氏相手に今までの「触れ手落し」を試みた際に利きがイマイチだったので、それまで落としていた腰を上げ、「蠢動」の利きを向上させたときのように、何もしない方が働けることを思い出し技をかけてみた。すると、今までと違って下まで落とせるようになった。しかしながらまだまだバラツキがあり、稽古の後半もう一度試みたところ、方向に気が付くものがあり、初動時の負担が少なくなりスコンと落とせた。ならば、右でやったほうがもっと上手く行くだろうと位置を変えておこなってみたが、全然ダメ。これには意外であったが、抜刀など水平に腕を振る体の使い方は左手よりも右手の方が機能的に上であるだろうと思っていたが、これまでずっとこの系統の潰し方として、杖で初めておこなった「お辞儀潰し」や木刀を使っての「峰返し潰し」は相手の左後ろに立ってからだったため、この位置関係からの身体の使い方の回路のようなものが、これまでの経験値から微妙な働きの精度を見分けられるようになった。右側では全く経験が無いので、左手で箸を使うような下手さである。この「触れ手落し」は、「蠢動」のようにお伝えしたら誰でも出来るような持続力の短い即効性のある感動ではなく、持続力の長い遅効性の感動である。そのため上手く行ったり行かなかったり、身体の使い方の精度を高める稽古内容としては私にとって今後も長く取り入れていくことになるだろう。

 だが、まだまだ気が付かなければならないことが沢山ある筈なので、色々な人で試みながらちょっと驚くような事が見せられるレベルには持って行きたい。しかしこれは接触部に殆んど抵抗感が無く足元までガクンと通るため大変興味深いものである。

 試しに、「明日はクラーチで講習がありますので、座りで受けてもらって良いですか?」と竹田氏にお願いし、座りならば崩れても危なくはないだろうと、互いに座った状態でおこなったところ、凄まじい勢いで竹田氏が両手を前に付いたので、私も驚いて「これはやめましょう!」ということになり、座りならば首でなく背中でも激しく崩せることが解った。こうしたことから「触れ手落し」のレベルを上げていくとさまざまな技の精度が高まり技術が向上すると思われる。しばらく体術稽古はこれに没頭しそうだ。

 抜刀術では「懐月」の納刀を変更した。これまでは三歩下がっての縦納刀であったが、今後は二歩下がっての引手納刀となる。


 そして本日火曜日の「クラーチ剣術教室」では、久しぶりに「三十連円打」をおこない、次に「渦潮」をおこないました。今までの状況からすれば、みなさん難なく出来ると思っておりましたが、渦潮はかなりの方が苦戦されておりました。おそらく膝を抜くということが心理的不安を引き起こし、そこに集まる注意が杖の操作を見失わせるものになっているように思われます。ですが、誰も膝を抜きながら杖を持ち替えることに「こんなこと出来るわけないじゃない。」と言う人は居らず、一生懸命に持ち替えて払うタイミングと膝を抜く動作を合わせようと努めておりました。簡単に出来る動きを簡単におこなうことは、恥ずかしい思いや出来ないという自己嫌悪に陥ることは無いでしょうが、それは私の役割ではありませんので、興味を持ってもらえる動きを分かり易くお伝えし、それが一瞬でも出来た時の喜びを味わっていただき、再度それに向って取り組んで頂くことが私がおこなう役割であると思っております。これは人それぞれですので、すぐに出来る簡単なものを選ぶか、何度も失敗して諦めずに取り組み続ける時間を選ぶか、そこにはさまざまなものも関わっておりますので、何かが出来るようになるということは、それなりの関門を突破してそこに至るという事です。そしてそれを続けることが出来るには、さらなる関門を突破して行かなければなりません。しかし、技術を上げるというのはひたすらにそのことを稽古するのではなく、じつはそうした目に見えない関門を突破したことで自然と出来るようになっているということだと思われます。ですから、技量と言うのは身体のことだけでなくさまざまな状況判断や、その状況判断を生み出す心の部分も大きく関係しているのです。

 最後は30分間抜刀術をおこないました。ご要望にお応えし今回も「鷲眼一閃」をおこないました。七十代後半のSさんの動きに目を見張るものがあり、転倒させないため靴下を脱いでいただきましたが、このご年齢の方の動きとしてはチョット驚くような動きが見られるようになりました。何せ、抜き付けと同時に宙に浮いていますので、その姿勢と着地も含めて、「こういう動きが出来るのか…」と、指導しながらも驚きます。もちろんまだ完成形ではありませんが、ご本人が身体の働きの面白さに気がつき、エネルギーを使う抜刀なのですが、何度も何度も抜いておりました。その時の全ての対応が、稽古で何かを得た瞬間のものになっておりました。「信じて掛かる」ということが、その答えを自らで潰してしまわぬように信じきれるかどうか、自らを誤魔化すことの無いようにできるかどうかということも含めて、稽古は問われるものです。勿論私自身もそのことには向き合いながら、少しもで出来た、上手になった、と一瞬は良いでしょうが、いつまでもそのように感じてしまってはそこで終わりですので、逃げずに恥を晒しながら稽古で失敗を繰り返して行く事です。そこには当然前に進もうとする考えがなければなりませんが。

 武術稽古をしていて、楽な気分と言うのは皆無です。楽しさや感動というのは何かを見出した瞬間ですので、常に自問自答し、その自問自答が合っているのかどうか、もっと外側から観られる眼を養いながら同時に内なる眼も養わなければなりません。眼を養うとうことは一体どういう事なのでしょう。

 それは生き方とも直結していますし、見直し修正邁進、生きる指標を手掛かりに次の地点まで進んで行くのでしょう。そうしたことの繰り返しで、いずれ眼の養い方の差が人生の選択や周囲の環境、日常の習慣などに大きく影響してくるものと思われます。そしてそのことは、身体を通じてでなくては実感できません。殺人刀、活人剣、どの時代においても兵法からなる生き方の探究は求められているものです。人間の凄さ、身体の不思議さ、そこに目を向ければ日常の情報に捉われず、我が信ずるものを大事に他に邪魔されずに突き進むのみ。それで大丈夫。ということなのです。


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2019-12-10(Tue)
 

大人数でできることと少人数だからできること

 本日は品川区総合体育館にてGold Castle 殺陣&剣術スクールの講習をおこないました。生徒の他に体験受講三回目のTさんと初参加のIさんがお越しになられました。Iさんは女子中学生のお子さんですが、剣に興味があるようでお母様も楽しみに見守っておられました。

 今年に入って小学生や中学生の入会が増えております。10月にフランスからティーンエイジャー向けの雑誌取材を受けましたし、そのなかで若い生徒達がインタビューを受けている姿も印象に残りました。殺陣の教室は多いですが、複数の子供達が大人と混じって殺陣や剣術をおこなう教室も珍しいかもしれません。子役のお子様も何人かいらっしゃいますので、全体的に甘えることなく何を身につけるのかということが明確になっておりますので、退屈するような時間はありません。

 身体にたいする興味というのは、私が経験したことから言いますと年齢に関係ありません。私の動きを見せて、それをどのようにおこなうのかをお伝えしながら稽古しております。その動きに説得力が無ければ生徒は興味を持っていただけませんので、私に出来る事は、これまでの稽古で私が先に経験した身体の使い方を、その方々にとって手に入れ易い方法でお伝えしております。個人差がありますので、なかなか上手く行かない方もいらっしゃると思いますが、色々な方向から繋がってくるものですので、ある時に出来る身体に変わって行く事があります。その変化は経験しなければ想像できないものと思いますが、今までできないと思っていたようなことが出来た感動というのは、私自身が沢山経験してきましたし、勿論今もまだまだ出来ない事を出来るようになるために、さまざまな手掛かりの中から稽古をおこなっております。

 子供の成長というのはいかに興味を引き出してあげるかだと思いますので、ドンドン吸収して、出来なかった事が出来た喜びを増やし、そこに身体との信用が生まれ、諦めず投げ出さずに集中力が養われます。

 塾に通っていたり忙しいお子さんが多いですが、その合間を縫って私のところへ来て下さっております。初めは人見知りがあったり笑顔が少なかったりしたお子さんも、次第に笑顔で挨拶や日常会話が増えて来ましたし、質問や掃除などの手伝いも自発的におこなえるようになってきました。子供は良くなろうと真っ直ぐですので、その真っ直ぐな思いを裏切らないようにこの場を整え、笑顔で帰って行かれることが私にとって大きなものでもあります。

 来年は少しクラスを増やそうと考えております。1月2月は土曜日に殺陣基礎クラスを不定期で開催。3月は土曜日の殺陣基礎クラスの他に日曜日をもう一コマ増やそうと思っております。毎週定期的にという訳ではありませんが、会場が確保出来た時は追加で開催したいと思います。

 以前も、このように土曜日日曜日合わせて4コマ開催しておりましたが、立廻りに最低限動ける人の人数が必要だったことから、殺陣のクラスを一コマにしたのですが、もう少し細かい部分をジックリ観て行くには、少ない人数でおこなうクラスも必要だと思いましたので、人数が少ないときは集中的に抜き出し稽古をおこない、一コマ開催など人数が集まった場合は全体で合わせての立廻りなどをおこなえるようにしたいと考えております。

 新しい生徒も増えて来ましたので、いきない立廻りに合流するよりも、基礎的な部分や、少人数でおこなえる時にジックリと身に付けて頂くことが出来るように指導して行きたいと思います。

 来年のオリンピック期間だけは、会場の確保が多く取れないと予想しておりますので、それまでの間はなるべく確保出来ればと思っております。

 本日の殺陣クラスでは、近間の胴斬りが続く掛かり稽古(胴斬り)に活きたものとなりました。今後も近間の胴斬りが体捌きや目線など注意すべき点を身に付けやすくさせるものですので、講習に取り入れていこうと思います。

 剣術クラスでは、「無拍子突き」や「二段抜き」、「劉之型 月」、「劉之型 霧」などをおこないました。いずれも久しぶりにおこないましたが、殺陣と違って剣術では動きの不思議さに、「いったい身体をどう使っているのだろうか?」と皆さん興味を持って取り組まれておりました。高校一年生のOさんは、まだ生徒になったばかりですが、ニコニコと色々な動きに興味を持って反応されております。ダンスをされておりますので、9歳のYちゃんのお姉さん的存在になりそうです。そのYちゃんが今月12/21(土)&12/22(日)新国立劇場中劇場にて「アニークリスマスコンサート」の舞台に出演されます。私は講習がありますので観に行けませんが、アニーと言えば泣く子も黙る、ミュージカルが好きな女の子の憧れでもあります。今回はアニー役にOさんの知り合いのお子さんが出演されているそうですので世間は狭いものです。

 Gold Castle にはさまざまな方がお越しいただいておりますので、今後もサークル的ではない礼の心持ちで、皆がそれぞれ相手を考えられるように指導に努めて参ります。

 本日もお越しいただきありがとうございました。


 金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


金山剣術稽古会

2019年12月 武術稽古日程

2020年1月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-09(Mon)
 

新たな杖術の操法をお伝えする

 本日は品川区総合体育館にて『杖術 特別講習会』を開催いたしました。会場に向う頃には雨が上がっており、寒さも真冬並とまでは行かない程度でした。

 さて、この特別講習会では月に一回三ヶ月周期で得物を変えておこなっておりますので、単発講習会ならではの出会いというものも御座います。これまでお越しいただいた方の中でも、ご自身で主宰されており、海外での公演や国内でのステージでおこなう演舞における得物の扱い方を学びに来られる方々もいらっしゃいますし、他流で殺陣や剣術など学ばれている方もこうした機会にお越しいただいております。

 今回は常連の方々の他にお二人女性の方がお越し下さいました。お一人の方は全くの初心者で、もう一人の方は殺陣を五年程学ばれており、5/20に発売された私のDVDを観て来られたそうです。その方が学ばれている殺陣団体はその昔舞台でお世話になったプロデューサー兼役者件殺陣師のTさんであり、それ以来お会いしておりませんが魂の熱い方でした。私は現在の道に大きく進路変更しましたが、それは自らそうしようと思ってそうなったのではなく、自然とそうなるしかなかったというものであり、不思議な運命というか流れに身を任せて無理なくここまで進んで来られました。

 講習開始前にフト懐かしい想い出が蘇りながら、今の自分の生き方である武術、その中でも今日は杖術をお伝えいたしました。

 今回の杖術は前もって記事でお知らせしていた通り、全て新しいものであり、その動きは今までとは全く異なるものです。杖という得物の特性を新たに発見したということから、支点を使い体の転回、軌道からの転換、そういったものがこれまでに無かった新たな操法として私自身衝撃的でした。これまで10年間やっていて気が付かなかったものがここ数日で一気に押し寄せてきましたので、それまで予定していた講習内容を全て変更いたしました。

 そのため、常連の皆様も今回は脳が疲れたようでした。基盤となる形が違えば操法も異なるため、全ての動きに関して意識の度合いが高くなり、そうしたことから情報の整理も付きにくくなり、脳が疲れるのだと思われます。今回初心者の方には、途中から杖の基礎的な打ちこみや突き、単体技などをおこなっていただきました。

 「大燕打ち」では貸し出し用の軽い杖が折れてしまうほど威力のあるものでした。ここ最近動きの中で表と裏に分けて考えるようになりましたが、裏を考える事が表の働きを活かすものですので、裏を観る眼を養いそこを稽古して行く事が大切です。私はそれに対するアドバイスをするだけですので、自らの身体を私ではなく自分で気が付きどのように直していくのかを、発見修正していく一連性を身につける事です。

 今までの杖術でも他流にはない技が多くありましたが、今回おこなった技は杖術としては益々珍しいものだったのではないでしょうか。作り始めたジグソーパズルのようなものですので、今後もドンドン新たな形が見えてくるものと思われます。

 
 懇親会はいつものキリンシティ大崎店でおこないました。まことに残念ながら12/27を持ってこちらのお店が閉店となってしまいます。今年の3月から毎月お世話になっておりました。お店の雰囲気も良く店長さんもとても良い方で、予約で困ったことは一度もありませんでした。以前のデニーズも閉店してしまいましたし、飲食業界も厳しいのかもしれません。お客が入っていていいお店がなぜ閉店してしまうのか不思議に思いますが、色々な兼ね合いやバランスが崩れてしまうと誰かの負担が増えてしまうのでしょう。

 今回は色々とお話が広がった懇親会でした。私もまだまだ勉強不足な部分が多いですが、こうした場も貴重な経験であります。男性のYさんも楽しんでいただけましたし、今回二度目の遠方から新幹線で来られるNさんともいろいろお話が出来ました。今回は写真は撮らないつもりでしたが、キリンシティー大崎店が今日で最後となりますので店長さんと一緒に写真を撮りました。今回はYさんが撮って下さりありがとうございました。恒例の写真もおそらく今回で最後になるかと思います。

 今回お越し頂いたみなさまありがとうございました。そして、キリンシティー大崎店の店長さん、スタッフの皆様、大変お世話になりました。良い時間を提供してくださりありがとうございました。


2019.12.07 キリンシティ


 金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


金山剣術稽古会

2019年12月 武術稽古日程

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甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-08(Sun)
 

峰返し潰しが手刀で出来るようになる

 本日は高田馬場にて渡部氏とA氏との稽古。二人が訪れるまで納刀稽古をおこない「稲妻抜き」を二本抜いて終了。今日はこれ以上やらない方がいいような感じだったので、丁度訪れた渡部氏を相手に木刀を使って「峰返し潰し」を確認。

 この峰返し潰しは、Gold Castle殺陣&剣術スクールの講習会や関西での講習会でも好評をいただける内容である。どういった技かというと名前の通り、相手の首筋へ木刀の峰側を付けて浮きとともに下まで崩すというもの。好評の理由は、上手く通ると首への負担が感じられないどころか、心地良ささえ感じられるのである。なぜ気持ちが良いのか不明であるが、身体の中を抵抗無くエネルギーが抜けて行くところになんらかの心地良さが得られるのかもしれない。だから、見た目は痛そうであるが受けている側は、心地良さに喜んで受けていただけるのである。しかし、腕力で強引に行ったり、方向が間違うと首への負担があるため、この稽古では腕力に頼る人にはお勧め出来ない。

 峰返し潰しの利き具合を確認し、フト手刀でやってみようと試みた。
 これは以前にも試したことがあったが、全然通用しなかったので即諦めたのであるが、今日は反対側の手で試みたのである。「たぶん駄目だろうな…」と思いながらおこなうと、「おやっ?」渡部氏が軽く崩れた。そこで、木刀による峰返し潰しを私から数百発受けている渡部氏に感触を聴いてみたところ「ちゃんときてます。」とのことだったので、俄然やる気を出して丁寧に何度かおこない峰返し潰しと同じように崩せることが出来た。

 そうしているうちにA氏が訪れたのであらためて稽古開始となる。
 A氏にも手刀での峰返し潰しを体感して貰い、首が痛むことなく下まで崩せることが出来た。私も受けてみたいと思い渡部氏にやり方をお伝えし楽しみに待っていると「ドンッ!」と足が浮かされ体が沈んだ。これには「おおー!」と歓喜の崩され方であったが、今日は杖術も重要であったが、この手刀による峰返し潰しが出来たことは大きな収穫であった。

 この峰返し潰しは、相手が普通に立っている状態でエネルギーが通っていくかを検証するものであり、構えてやられまいと準備している相手に対しても万能という訳ではない。ただ、普通に立っているだけでもエネルギーを首から下まで通すのは難しいものであり、力技でおこなわないことで身体運用の質が高められることを目的としている。この技は、DVD【古武術は速い】の中でも細かく解説しており、木刀の付け方、足の使い方、重心についてなど私が試行錯誤して得た方法をお伝えしている。また解り辛いかも知れないがWEB動画「かざあな。剣術編」の中でも、受け流しの直後にこの峰返し潰しをおこなっている。(02:44~02:48辺り)

 とにかく、手刀で痛み無く首から足元へ崩せる通し方が出来たのは興味深いものであり、手の使い方も繊細で微妙なところが面白い。機会があれば講習会などでいろいろな人を対象に試してみたい。

 杖術では、「二杖之位」に下段と中段があり、そのいずれも形は少し異なるが、体感的なものは同じであることが解った。おそらく今後上段にも気が付くかもしれないが、左右対称に出来るのかどうかも含めて「二杖之位」からなる操法を研究して行きたい。今日その中から一つ、下段からの払い打ちと分かれる形として払いからの突きが生まれた。つまり、下段の構えから、どちらも瞬間的におこなえるため、相手は非常に対応が難しいものとなってしまう。一つの動作が二つに繋がる。まさに表と裏が一つになっておこなわれている。これは明後日土曜日の『杖術 特別講習会』でお伝えする予定。今回は私もこの講習会に先駆けて急激に訪れた新展開に興奮気味であるが、これまでにない杖の操法であるため、杖に関心のある方は本当にお越し頂いて損は無い筈である。ここまで言い切るのも私としては珍しいが、杖というより、武器術として有効な使い方を求めている方にもお勧めしたい。

 それにしても連日、新たな展開が訪れ驚いている。全ては流れのままに、そこに身を落し順じて行くしかない。

 本日もありがとうございました。


 金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


2019年12月07日(土)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

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2019-12-05(Thu)
 

二杖之位

 このところ連日私の中で展開が進んで来ている。これは、自分でどうにかしなきゃ、というものでなく、勝手にそうなっているような、今これを書いている心持ちからすれば、他人事の出来事を記しているような感がある。

 そうした日々より少し前の11月中旬辺りは、武術の厳しさ、というものを深層部で感じるものがあり、それは生存に対する厳しさというよりは、「稽古の今すべてがどうであるか」という事に感じさせられるものがあり、しばらくは自分を責めたくなるような思いに苛まれていた。

 だが、その思いを断ち切り、前に進ませてくれたのも稽古からの教えである。そしてそのような教えというのは誰かに伝えてもらうものではなく、自らの身体と感覚で断定的に気づくことである。しかしながら、そこには無意識レベルでの教えが既に心身に与えられてているので、結果として直接観て触れて学んだものを、無意識のうちに自らが意識下に引き出したということなのだろう。

 そんな11月中旬の心境は、いずれ何らかの状況が訪れる前触れだったのかもしれない。今だからそのように感じることができる。

 稽古記事に入る。

 本日は戸越体育館で渡部氏と稽古。
 稽古の大半は杖術をおこなった。「攻防一体」「燕打ち」「大燕打ち」を一通りおこない、あらためて点検。技というのは突然生まれるものである。出来たものが技であり、そこに練習してなんとか出来るようになったというものは無い。技という原理や理合いに身体が合っていなければ稽古を重ねても出来ないものである。逆を言えば、原理や理合いというものを身体が感じられれば、突然出来るようになるということでもある。勿論そのレベルに応じての話であるが、それでもその世界というのは安易には拓けないものであると思われる。そこに身体の面白さがあり、稽古における「一寸先は気づき」が待っている。

 今日の記事のタイトルにある「二杖之位」(にじょうのくらい)。これは新たな杖術の操法における構えの名称である。二杖とは、杖を二本使っているかのような状態であり、そうした状態で人が立つことを意味したものである。

 その構えから新たに「二杖転換」という組杖における攻防の型が生まれた。これは「攻防一体」の原理を互いに用いたものであり、その特性から間髪入れず転換した動きが生まれ、そこに両手を寄せ支点を転換に用いた二杖之位から放たれる技は、私にとって大変新鮮なものであり、今後の展開がどうなるのか非常に興味深い状況となっている。

 「表裏一体実と成す。」という自分の中から湧き出た言葉が、私の中で大きく堰を切ったように杖術を変える事になった。勿論今までの操法も今後研究して行くと思われるが、この「表裏一体実と成す。」という、眼の使い方からこの言葉が誕生したが、こうした思想であったり、信仰や、真理を求めることが技や身体の使い方の原理に関わってくることを、今回初めてといえるほどの驚きとともに身を持って痛感している。

 最後におこなった抜刀術にもそれは関係してきた。
 「稲妻抜き」の研究で、まだ講習会でお伝えしていない新たな脚足の使い方(見た目には区別が付かないと思われるが)の理解が進んだのであった。それは、表を意識して身体の使い方を工夫しても、どこかに無理が生じ、それが違和感や居着きに感じられてしまうことにある。しかしながら以前までは、それが一番心地良く抜けるものとして身体が選んだものであり、身体が馴染んできてようやく違和感を覚えるのである。

 そこで、11月後半辺りに一人稽古で脚足の使い方をあらためたところ、居着く感じが無くなり初動の違和感が解消されたのであった。しかし、この左右の脚足の操作手順の難しさになかなか身体が馴染めず、どうしたものかと、一人稽古の度に感じていたのであったが、今日の戸越体育館での稽古で、それは、表表で考えているから結果として実にはならないのだということが解り、裏の動きがどこにあるのかは、身体が感じているものなので、目に付き難いこの裏の脚部の操作には一瞬一手間掛かるのであるが、その裏の動きを省略してしまっては、全体としての実にはならないことが「表裏の見眼」の原則から悟ることができ、身体はこちらの採用を選んでいるのだが、手間が掛かっているような気がしていた不安は、「表裏一体実と成す。」という言葉で納得できるものとなった。当然であるが、表に見える手間は無駄な手間であり、表裏一体にはならないが、裏である裏方の影なる働きは省略していいものではなく、その辺りの見極めが「表裏の見眼」には重要となってくる。

 稽古の成果というのは、自身の身体でも感じることが出来るが、より成果を感じることができるのは、そのことを目の前でおこなっている人の動きによってである。今回の「稲妻抜き」の稽古では、渡部氏の動きと音がこれまでにないものとなっており、私も共に研究しながらおこなっていたが、音により進展具合が解る。それは、瞬間的に断定的にそう感じるものなのである。そうした事も関係してか隣の道場で稽古をされている団体の方が珍しいことにこちらの稽古を覗きに来られていた。もう四年ほどこの時間帯で稽古しているが、隣もいつも同じ中国武術の団体で慣れている筈であるが、見えない稽古風景をこうして覗かれたのは初めてであった。

 何か自分の中で、技量はさておき、今までと違う展開になってきたことは感じているので、そうした時期と流れに身を任せてこれからも稽古に向き合っていきたいと思う。さまざまなことに感謝いたします。


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2019年12月07日(土)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

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2019-12-05(Thu)
 

メジロでおだやかに

 昔から寝ているときの夢をよく覚えていて、普段の生活リズムのときは滅多に不思議な夢は見ないが、先週の月曜日は一度目覚めて、トイレに行ってから再び同じ夢の続きを見るという不思議な現象でした。設定も登場人物の集団も同じ。寝坊気味に目覚め、よくこんな事を私の頭は思いついたなぁと思い、一時間掛けてその内容をメモに記録。一週間経った今でも夢の雰囲気を覚えており、まるで本当に見たような記憶の中に収められている。

 書くつもりは無いが、人生で不思議な現象は度々経験している。この目で見たことや、一緒に居た人と不思議な現象にあったこともある。霊的なものは見えないが、怖くない不思議な経験は度々訪れて来る。今はそうした事にあまり驚かなくなったが、そういうことに対し妙な安心感が湧いてくる。不思議なもの怖いものはこの世の目に見える日常に他ならないので、ネットが人の悪意を増長させている時代の中で、それに染まらないように距離を取っていかなくてはならない。


 さて、本日火曜日は「クラーチ剣術教室」での講習でした。今日は杖術の新たな展開となる「攻防一体」の原理で身体の使い方をお伝えいたしました。これは私自身にとっても「旬」の原理であるため、支点の使い方、それに応じた脚部の流れ、体の転換と支点の関係、等々から杖に導かれ身体が働くことに身体が興味津々なのであります。

 これは今までに無い感覚であり、「支点」、「慣性による転換」などは、杖を滑らせる持ち手や操法では考えられない働きであります。これを70代~80代の方にお伝えするのですが、とうぜん上記の「」を理解して頂くのは難しいのですが、身体の実感というのは受けを付けて打ち込んだ際の抵抗感の有無の差によって感じていただくことができ、そこで支点の使い方の意味を感じていただくことは出来たかと思います。

 開始後30分して休憩。次に三十連円打をおこなおうと思っていたのですが、休憩中にもそれぞれが攻防一体の続きをおこなっていたものですから、この流れを断ち切る理由は無いと、そのまま残り30分この内容を続けて参りました。けっきょく、約1時間ほど杖術の新原理「攻防一体」の稽古にみなさん夢中になり、夢中のままに杖の講習は終了となりました。

 最後の30分は最近は抜刀術を毎回おこなっておりますが、今回は抜刀術「鷲眼一閃」をお伝えいたしました。これはみなさんにお伝えするにはどうかと考えていたのですが、やって良かったと思いました。私も分かり易くお伝えするために色々な事を考えるのですが、その噛み砕いてお伝えすることが私自身の理解や深まりとなり、あらためて実感を持てることに喜びが訪れるのです。

 重心が先導し、柄を噛む右手が身体を引っ張る。そこに左大腿部を引き上がらせ、鞘を逆に出しながら左足がともに回りこむように送り出される。重心、慣性、浮き身が手順良くおこなわれることで、得物の重さが劇的に軽減され切っ先が実感予測を超えて奔ってしまう。

 鍔は正中線より左側。体からは二寸以内。構えでは右足前の状態から、左足が鞘とともに前に出ながら両足ともに床から脚が離れている間に抜き付けられている。常識からは大はずれとされる抜刀であるが、身体の実感としては稽古に値するものであり、実際に有効であると思われる。

 Sさんが、何回かに一度、得物の重さが軽くなる抜き方が出来たと喜んでおられました。こうしたご本人の身体で実感出来ることは、紛れも無い事実を身を持って体験されていることですので、稽古に夢中になり続けて下さるのも納得できます。

 稽古や講習では、初めておこなう事というのは喜ばれることが多いものですが、それは前提として伝える側の指導者の熱が新鮮なものを自分で興奮に近い思いで受け止めているからであり、それが空気としてみなさんに伝わっていくのだと思います。つまらない稽古や講習というのは、その人自身の身体で得たものではなく、どこかで学んだり映像で見たものをおこなっているだけであり、知識的なアドバイスが豊富でも、伝わってくるものに実感が少ないように思われます。もちろん私自身も全て自分で得たものではありませんし、師の動きや原理を稽古しながら、ようやく自分なりに感じた一瞬のものを、なんとか形にしようと努めております。しかし、「これは発見だ!」と思っても、よくよく考えたら数年前に既に師がとっくに説明されていたことであったり…ということが多く、その都度、師の凄さを感じるのです。

 「表裏一体実と成す。」この原理は今後の私の稽古において重要な意味をもってくると思いますので、敢えてそこにこだわって、これからの稽古に望みたいと思います。


 講習後は、月初め恒例となる食事会。もう私もここに来て六年目。擦れ違う方々や、フロントスタッフの方、レストランのスタッフの方、皆さんとにこやかに挨拶が出来ることの嬉しさが、週に一度の私にとっての癒しでもあります。レストランに入るとWさんが窓際にそっと近付いておりましたので、私もそっとWさんの後ろから驚かそうと思って近付いたのですが、そこに全く誘われること無く、どうやら庭の木の枝になにやら鳥が居るらしく、「どれどれ、」と私も探して見たところ目の周りに白い淵があり小さくて丸っこい形をした鳥が居ましたので、「メジロですよ!かわいいですね。」とWさんにお伝えし、直ぐに居なくなってしまいましたが、久しぶりにメジロを見ることが出来ました。生徒の中でもWさんは一番若く昨日が誕生日だったそうです。そんな今日も食事中の会話は色々と花が咲きました。帰りは家の近くの木の枝に偶然にもメジロを見つけることができ、のどかな一日となりました。本日もみなさまありがとうございました。


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2019-12-04(Wed)
 

杖術が思いがけぬ展開に

 本日月曜日は、雨のあがった夕方から高田馬場で竹田氏と稽古。今日も会場へと向う道中で新陰流兵法の先生とバッタリ遭遇。「よくお会いしますね。」とまだお名前も伺っていなかったことに後から気が付く。会場まで一緒に向かい、自然とそれぞれの流れに入る。

 17時に竹田氏が訪れるまでの10分程、杖術で先週木曜日に気が付いた「燕打ち」と一昨日土曜日に気が付いた「大燕打ち」と「攻防一体」を確認していた途端、身体がまさかと思える感覚に芽生え始めた。

 それは、杖を両手寄せで操作するというものである。


 これは講習会や稽古会、またはこうした稽古記事などでお伝えするために奇をてらったことをやろうとしたものではなく、また、剣術と同様に両手を寄せておこなってみようなどと安易な発想からではない。もしそうだとしたら数年前からとっくにやっている筈である。

 なぜ、これまで杖を両手で寄せて扱うことを試みもしなかったのだろうか…

 おそらくそれは、杖は滑らせるものであるという強い意識が根幹となって働いており、それを基盤に技というものを考えていたから、滑らせることありきで全てがおこなわれていたのである。もう一つは、杖の手触りと形状から、これを寄せて持つのは道具の働きを活かしきれていないという手之内の感覚が、自然とそのようにさせていたのだろう。まして中途半端に滑らせると利きが悪くなってしまうため、より滑らせることに対する執着が今の今まで私が私に言い聞かせていたのだ。

 では、どうして両手を寄せる試みを始めたのか?

 それは先週の木曜日からの流れがあり、渡部氏とA氏が互いに向き合っておこなう、杖の突きを見ていた際に、突如として「燕打ち」の動きに気が付いた。それは手之内を滑らさないものであり、この発見に至ったキッカケは、このところしきりに言葉にも文字にもしている目の使い方と表と裏の事が、潜在的に動きを考える上で、裏の一手間に気が向うようになったからではないかと思うのである。

 つまり、これまでの技や操法というのは、淀みなく瞬間的におこなえるものとして審判していた。しかし、それは表の動きを素早くおこなうという事だったのかもしれない。裏の動き、裏の眼、表裏一体となって実と成す、という自分で考えたフレーズであるが、裏の部分に眼を向けることで、これまで考えていなかった手間が、実は表を活かすものであり、まさに表裏一体となる動きとなるのだと思う。さらには、裏の部分というのは目で捉え難いものなので、手間を掛けても、そうした裏の動きから繋がる表の動きは読みづらく、如何に素早い動きであっても、表表のつながりは目で捉えやすいものであり、表裏の動きはよく解らないのである。

 何をもって、表なのか、裏なのかは、実感としての判断であるが、現時点のレベルにおける捉えられる動き、目で確認出来る動きが表であり、捉えられない、目で確認しづらい動きが裏の動きである。さらに言えば、動きというものは表裏一体であり、表があるから裏があり、裏があるからまた表になって行くということ。その表と裏の境目は身体で感じるものであるが、それは見るのではなく観る感覚が求められる。

 少し説明が長くなってしまったが、そうした裏の動きに目が向かうようになり、手間を使ってもそれが良く解らない捉え難い動きであり、それが今までにない操法の扉を開いてくれたような気がしたのであった。

 そして一昨日土曜日の金山剣術稽古会でまたしても突然「大燕打ち」が生まれ、よくこんな手之内に迷い無く断定的な形が生まれたものだと驚いたが、こうした突如として生まれたものというのは、稀に訪れるが、身体の使い方や手之内に全く迷いが無く、身体が先に知っており、それを教えてくれているような不思議な感覚なのである。

 その「大燕打ち」を渡部氏におこなってもらい、私がそれを杖で受けながら威力を確かめようとしたところ、これがなかなか強力で、手之内がビリビリと痛くなるので、思わず両手を寄せてみようと試したところまるで平気なのであった。

 「これはなんだ?」と、不思議に思い、もう一度両手を離して構えた状態に打ち込んでもらったが、やはり手が痺れる。あらためて寄せてみると平気だ。そこで手之内を含め色々検討してみたところ、まず、杖の握り方が大事であることが解った。次に解ったことは、両手を寄せることで支点が支点たる働きとなり、相手の力を自然に流してくれる作用がある。この手之内の使い方と支点の使い方は、新たな両手寄せの受け方として得るものがあり、さらにその働きを活かした「攻防一体」なる動きが誕生した。この日、土曜日に得たものはとても大事な芽であった。

 そして本日の稽古で、両手寄せの受けの形や攻防一体の動きをおこなっていた時に、「そうか、両手を寄せても杖は出来るのだ!」という事に身体が気付いたところで竹田氏が訪れ、その興奮冷めやらぬ瞬間を説明して稽古に入ったのであった。

 
 稽古では、「燕打ち」や「大燕打ち」「攻防一体」などをおこなったが、この「攻防一体」が体捌きのための稽古だと思っていたが、抜き技に使えば十分技になることが判明し、そこでまた両手寄せによる操法の新展開に身体が、新しいジグソーパズルを手にしたような、最初のうちに埋められるピースをドンドン埋めようとしているような身体の状態で、今後しばらくは取り憑かれたように没頭するだろう。12/7の杖術特別講習会では、「攻防一体」「燕打ち」「大燕打ち」の三本柱が急に生まれたので、これをメインにお伝えすることになりそうだ。

 今日は竹田氏から、「杖を打ち込むときは手之内を強く握り締めていますか?」と質問があり、お応えする形で実際に握り締めた場合と、指関節で締め込んだ場合とで打ちの強さを比べてみた。

 どちらも大して変わらないものだとお伝えしたかったのであるが、どうやら握り締めた方が身体が使えず弱くなってしまうことが判明した。これは昨日おこなった体術稽古で、「蠢動」の利きが良いのは、身体に不安なほど何もさせない方が良いのと同様であるということだ。しかし、「蠢動」をかけなければ、何もさせていない身体の状態は脆いものであり、杖で強く打ち込む際にも、身体の働きが無ければ、手之内を強く握り締めた方が、指関節で締め込んだ場合に比べ腕の力が使いやすく強力であろう。ただし、それでは身体の他の部分が働かないように止められてしまうので、身体の使い方によって身体の状態というのは臨機応変に合わせて行かなければならないということである。

 もう一つ「今ごろ気が付いたか」と思ったのは、「鯉口を切る」ことの意味である。大体は鎺(ハバキ)で締まっている鯉口部分から少し抜き出してすぐに刀が抜けるようするためだと思われるが、それだけでなく鯉口を握る左手の置き方に、鯉口を切る空間が必要であることが今更ながらに解ったのであった。もちろん、解ったからと言って何も変わる訳ではないが、下手な人が抜けずに引っ掛けてしまう場合、左手の置き所と鯉口の切り方が宜しくないと思いますので、鯉口の切り方から、鞘を引いた最後の左手の形、指の抜き方など工夫できるところは多々あります。

 竹田氏との稽古が終った後、30分ほど杖の一人稽古をおこなった。もちろん両手寄せである。

 さっきまで道場内が寒く身体も冷えていたが、一人稽古を始めて10分程で目が開け辛くなるほど汗が吹き出た。その間にまた新たな動きも生まれた。支点を使いこなすことが両手寄せ操法のカギであり、その分変化も多彩で全てが速い。その変化に脚足が導かれるようにこれまでとは違う動きの流れに、身体も喜んでいるようだ。自らの顔面を打ちそうな怖さもあるが、従来の滑らせる操法に比べ、支点からの多彩な変化と攻防一体の流れ、両手寄せにより打ち込みの威力も上がるので、今後興味を持って取り組むであろうこの杖術は何とも異質な動きである。今後、これが剣術にどう影響するであろうか、もしかすると体術にも何らかの影響があるかもしれない。だが、今はただ杖術の稽古に没頭したい。そんな気分である。


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2019年12月07日(土)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

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甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-03(Tue)
 

2020年1月 武術稽古日程


1月04日 土曜日  Gold Castle 殺陣&剣術スクール
         12時30分~14時00分
         15時30分~17時00分         
         品川区総合体育館 剣道場


       
1月05日 日曜日  Gold Castle 殺陣&剣術スクール
         15時00分~17時00分
         品川区総合体育館 柔道場



1月06日 月曜日  金山剣術稽古会
         17時00分~21時00分
         新宿スポーツセンター 剣道場



1月07日 火曜日  クラーチ剣術教室
         10時00分~11時30分
         クラーチ溝の口
         
 

1月08日 水曜日  金山剣術稽古会
         12時00分~14時00分
         戸越体育館 柔道場


            
1月09日 木曜日  金山剣術稽古会
         14時00分~16時00分
         新宿スポーツセンター 剣道場

         

1月11日 土曜日  Gold Castle 殺陣&剣術スクール
         12時30分~14時00分
         戸越体育館 剣道場



1月12日 日曜日  Gold Castle 殺陣&剣術スクール
         18時00分~20時00分
         品川区総合体育館 剣道場



1月13日 月曜日  杖整体操
         18時00分~19時30分
         品川区総合体育館 柔道場
         


1月14日 火曜日  クラーチ剣術教室
         10時00分~11時30分
         クラーチ溝の口
         
        

1月16日 木曜日  金山剣術稽古会
         14時00分~16時00分
         新宿スポーツセンター 剣道場

         

1月18日 土曜日  抜刀術 特別講習会
         15時00分~17時00分
         品川区総合体育館 剣道場
         18時00分~ 懇親会



1月19日 日曜日  Gold Castle 殺陣&剣術スクール
         15時00分~17時00分
         品川区総合体育館 柔道場



1月20日 月曜日  金山剣術稽古会
         17時00分~21時00分
         新宿スポーツセンター 剣道場



1月21日 火曜日  クラーチ剣術教室
         10時00分~11時30分
         クラーチ溝の口



1月22日 水曜日  金山剣術稽古会
         12時00分~14時00分
         戸越体育館 柔道場
                 


1月23日 木曜日  金山剣術稽古会
         14時00分~16時00分
         新宿スポーツセンター 剣道場



1月25日 土曜日  Gold Castle 殺陣&剣術スクール
         12時30分~14時00分
         15時30分~17時00分
         戸越体育館 剣道場
         


1月26日 日曜日  Gold Castle 殺陣&剣術スクール
         15時00分~17時00分
         品川区総合体育館 剣道場



1月28日 火曜日  クラーチ剣術教室
         10時00分~11時30分
         クラーチ溝の口



1月30日 木曜日  金山剣術稽古会
         14時00分~16時00分
         新宿スポーツセンター 剣道場






 金山剣術稽古会 入会希望の方へ


【 新宿スポーツセンターでの稽古時間 】
◇(月曜日)17時00分~21時00分
毎月第四月曜日は休館日のためお休みとなります。
(第四月曜日が祝日の場合は翌火曜日がお休みです)

◇(木曜日/毎週)14時00分~16時00分 


【 戸越体育館での稽古時間 】
◇(水曜日/隔週)12時00分~14時00分 


完全予約制ですのでお早めに御連絡下さい。
前月までに御予約の入っていない日はお休みとなる場合が御座います。
お申し込みは金山剣術稽古会のサイト
https://www.kanayama-kenjutsu.com より御連絡下さい。

都合により日程が変更となる場合がありますので御了承下さい。

2019-12-02(Mon)
 

本日はAさんとOさんが正規受講生となられました

 本日のGold Castle 殺陣&剣術スクールは深川スポーツセンターでの開催となりました。2013年10月20日に開講して以来さまざまな会場で開催してきましたが、ここ深川スポーツセンターは、会場の明るさ、綺麗さ、駅からの距離、スタッフの雰囲気など諸々含めまして総合的に一番かと思っております。

 これまでにGold Castleの講習で使用した会場は、戸越体育館、品川区総合体育館、スクエア荏原、世田谷区総合運動場体育館、文京総合体育館、文京スポーツセンターなど、深川スポーツセンターを含め全7施設が挙げられます。

 そこで私の個人的な会場別の感想を書いてみたいと思います。

 【戸越体育館】
 ここは、第1回目の開催会場となった記念となる会場です。2019年となった今年で戸越体育館は創立60周年を迎えたそうです。
 アクセス的には駅から少し歩きますが、それでも平均10分ですので許容範囲内です。武道場のスペースは7施設の中でも狭いため、立廻りのような講習には不向きです。更衣室も狭いため、混雑した場合は難儀いたします。常連の方々と濃い稽古をおこなうには適した会場かと思っております。
 
 【品川区総合体育館】
 こちらは、開講してからGold Castleの主要会場として最も多く利用しております。アクセス的にも五反田駅、大崎駅ともに10分程で、五反田駅周辺は飲食店が選びきれないほど多い街ですので、お店選びに困ることはありません。武道場も更衣室も広く、空調の設定温度も幅広く道場内で調整出来ます。しかし、地下二階で高い位置にある窓を閉め切っておりますので、埃っぽく感じられることもあります。

 【スクエア荏原】
 上記2会場と同じ品川区での施設としてこのスクエア荏原があります。ここは、武道場が無くホール(学校の体育館のような)のみとなっており、そこの半分を利用しております。広さはありますが、一般的な体育館であるためバスケットゴールや隣で別の団体がスポーツをやっている中での講習となります。高級感のある会場の割りに更衣室が狭いです。ここでは杖が使えませんので、木刀を使っての講習のみとなります。武蔵小山駅から徒歩10分~15分、長い武蔵小山商店街を歩くので時間は気になりませんが、総合的に優先順位の低い会場です。

 【深川スポーツセンター】
 先にも申し上げましたが総合的に一番の会場です。門前仲町駅から徒歩6分、京葉線越中島駅から徒歩5分、会場は一階にあり、大きな窓を開けて換気できます。広くて綺麗な武道場内に自然光も沢山入り、天井も高く二階のベンチから稽古風景を見学できます。更衣室は道場の直ぐ脇にあり、武道場利用者のみの利用となってますので、更衣室が混雑することは滅多にありません。師範室が整っており何かと便利です。ただ、会場費が全7施設で最も高いので、ある程度の団体でなければ負担が大きいでしょう。

 【文京総合体育館】
 文京スポーツセンターが改修工事のため利用出来なかった期間、こちらの文京総合体育館を利用いたしました。大江戸線本郷三丁目駅から約5分、丸の内線本郷三丁目駅からだと約8分です。武道場は戸越体育館剣道場よりやや広いぐらいです。更衣室も狭いようです。あまり利用することはないと思いますが、来年のオリンピックなどの影響で利用することになるかもしれません。

 【文京スポーツセンター】
 会場の綺麗さでいえば、深川スポーツセンターに引けを取っていないかもしれません。柔道場は、品川区総合体育館や深川スポーツセンターと同等の広さ。剣道場はやや狭い感じです。更衣室はやや狭さを感じます。優先順位でいえば、品川区、江東区、文京区となっておりますが、一ヶ月遅れでの抽選予約ができますので、保険的な位置付けとして重宝している施設です。アクセス的にも茗荷谷から5分程度で簡単な道程です。抽選が一ヶ月遅れでなければ、深川よりも優先順位は上になったでしょう。

 【世田谷区総合運動場体育館】
 こちらは、2回か3回しか利用していませんが、よほどの事が無い限り利用することは無いでしょう。小田急線成城学園駅にて、バスに乗り換えなければなりません。10分程乗った後、バス停から会場まで徒歩5分となりますが、いろいろと迷いやすくアクセスとしてはとても不便です。会場は戸越体育館の剣道場よりも狭かったと記憶しております。武道場、更衣室ともに古さの名残が感じられる会場でした。

 
 以上となりますが、結果としては生徒達のアクセスが負担にならず通いやすい場所が一番でしょう。しかし、都内は便利なものです。何処に行くにも電車で移動できますし、駅から平均10分以内で到着できる会場が多いですから。学校の体育館を利用している団体もいらっしゃると思いますが、私としましては武道場で稽古をしたいため、そうした施設での礼も含め場を整えていきたいと思っております。

 本日の講習では、AさんとOさんが体験受講を終えられ正規受講生となりました。このところ女性陣の生徒が増えてきておりますので、同期の生徒とともに切磋琢磨して楽しんで頂ける場になればと思います。

 殺陣クラスでは、基礎稽古から、立廻り抜き出し稽古をおこないました。少しずつですが、立廻りのほうも角度や距離感が良くなってきました。芯と絡み四人合わせて五人分の動きをそれぞれが覚えなければならないので大変だとは思いますが、身になる部分は大きいでしょう。完成度を上げるには五倍の時間が掛かりますが、色々な動きを全部おこなうことでその役割のコツを掴めるものと思います。おそらくですが、ある段階から急に全体的なレベルが上がってくるような気がしております。五倍の時間を掛け、それが達成できたときにどのような雰囲気になっているのか…。まだまだ先になりそうですが、継続しておこなえば毎回身になるものがありますので、団体競技ともいえる立廻りの世界観を皆さんで作り上げていただきいと思います。

 続く杖術クラスでは、今回柔道場ということもあり体術をおこないました。
 殺陣クラスに比べて参加人数は少なめでしたが、その分細やかに私なりにお伝えできたかと思います。中学一年生のS君と、中学二年生のK君が何度も驚きながら、エネルギーの方向性を探り、大人のYさんと一緒になって稽古しておりました。女性陣のWさんやFさんも、軽い割にはシッカリとした重さがありますので、身体の整え方が普通の一般的な方に比べて進んでいるようでした。あらためて「蠢動」の利き具合には驚いていただけました。今日は、崩すためのエネルギーの方向をテーマに、一つの方向から、二つを合わせた方向、それにテンションを掛けた方向など、方向とテンションと合成の実感を、出来た場合と出来なかった場合とで感じあえることが出来たのではないでしょうか。

 体術稽古はこれ以上無いコミュニケーションと言えるでしょう。身体の情報、それは言葉とは比べ物にならない純粋たる情報であり、その純粋さに人は惹かれ、やりとりが進んでいくのかもしれません。驚き、感動、純粋たる情報の交換、これは体術稽古に強く感じられるものであり、人が育まれる学びがあります。

 殺陣も剣術も杖術も体術もすべて「目の付け所」です。それは視覚的に見る目ではなく、体内的、心を観る眼であります。そうした眼の稽古は、他の環境でなかなか学ぶことは出来ません。世の中体裁や表側の見栄えを良くしようとしても、いずれ長続きしないことは何度も見受けられておりますが、長く続けられる何かを成し遂げていくには、表側に誘われず、体裁ばかりに気を捉われず、眼の付け所によって、自らがおこなうべき判断と行動が決まってくると思いますので、誤った選択をしないためには、学業のほかに眼の使い方を学んでおく必要があると思います。

 体験参加の方も体調を整えてお越しいただきありがとうございました。休講されていた方も復帰されましたし、新たに生徒になられた方や、粘り強く稽古に付いて来てくださっている方。人それぞれのペースや生き方があると思いますので、その中で共有する人生の時間帯をこれからも大切に生きて行こうと思います。

 本日もみなさまありがとうございました。


 金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


2019年12月07日(土)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

金山剣術稽古会

2019年12月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2019-12-02(Mon)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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