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六日連続稽古を終えて

 私はSNSとは距離をおきたいタイプであるが、仕事の窓口看板として必要なホームページと、私の日々の情報をお知らせするこちらのブログとYoutubeで必要最低限な動きを紹介している。その他は無料のイベント情報掲載サイトも利用しているが、基本的に今の時代、武術と言っても仕事を承るにはインターネットでのやり取りが大半を占めている。

 武術稽古は日々の気付きの積み重ねでもあり、身体を練っていくには修錬は欠かせない。だから、SNSを利用させようとする時代の思惑にある程度の抵抗感を持っていなければ、日々の妥協に己のやるべきことを阻害させられてしまう。時間は誰にも平等にあるものであり、SNSに蝕まれないようにしなければならない。

 
 三連休が終わりました。私にとっては三日連続での講習会であり、この三日間全てにお越しいただいた方々や二日間お越しいただいた方々もいらっしゃいました。個人的には六日間連続の稽古会や講習会でしたので、このような時期に稽古が出来ましたこと大いに感謝しております。

 一年中作務衣に高下駄(たまに雪駄を履きますが)で過ごして七年は過ぎたでしょうか、毎年一年で高下駄は履き潰しておりましたが、昨年の元旦に履き下ろした朴歯が例年になく頑丈で、大体元旦から十月一杯、或いは十二月一杯で台の底面まで磨り減ってしまうため完全に履けなくなってしまうのですが、今回は年を跨いで未だ履き続けております。歩く距離がそれほど変化しているとは思えませんので、硬い朴の木だったのでしょう。鼻緒も全く痛んでおらず、このままだと八月位までは履けるような感じがしております。

 そんな格好で過ごしておりますと、稽古着の補修で何度かお世話になったリフォームのお店の方が、私の格好に興味を持って挨拶して下さいますし、数年前に一度だけお祝いのために日本酒を買いに行った酒屋の店主さんが、駅までの道すがらよくお会いするのですが、行きしなには「いってらっしゃい。」帰りしなには「おかえりなさい。」と偶然擦れ違うたびに必ずご挨拶して下さいます。数年前に一度しか行っていない酒屋さんですが、またいつか何かの時にはここで買わせていただこうと思います。

 今日の講習では、先週の日曜日におこなった体術の座りからの一点接触による崩しで、全く崩すことが出来なかったロードバイクのKさんと講習前に何度か手合わせをお願いいたしました。先日研究した落下による反動を試みたところ、一回目は崩せたのですが、二回目は対応されビクともせず。両手を使って崩すことは出来たのですが、やはりそんなに甘くないことを痛感。すぐに講習に入りました。

 講習では今回も「囲まれ稽古」をおこない、周囲から斬りかかられる際の体捌きを身のこなし方がそれらしく見えるようにおこなっていただきました。そうしている最中に、遅れてきた方がいらっしゃったので、確認に行ったところどうやら別の殺陣教室の生徒さんが時間を間違って訪れて来られたようでしたので、もうその教室は終っており、可哀想でしたので「よかったら、やっていきませんか。」と、周囲の生徒達の雰囲気の良さに引き込まれるように、一緒に稽古に参加されました。

 私もこの教室をおこなって七年目に入っておりますので、訪れる方を見て大体の予測が付いて来るようになりました。ただ、生徒になって間もない方や体験参加に来られる方は、指導者がどのような人なのか解らないと思いますので、その辺りで同情してしまうこともあります。そこはご縁もあれば、運もあるかと思いますので、見抜く力を養いながら時間と労力を無駄にしないようにしていただきたいものです。

 講習では、ひさしぶりに始めから通しで立廻りタイプMをおこないました。まだ生徒になって二年足らずの中学三年生になるK君と中学一年生になるK君も以前に比べて良くなってきております。イラストレーターのYさんが正面から見て拍手しておりました。

 私も立廻りに関して「どこで嘘をつくか」が、上手く見せるポイントになると解りました。これは、どちらを選ぶかということでもあり、状況に応じて、リアルな体捌きも必要であれば、嘘をつくことで下手な人でも上手に見える体捌きもあります。もちろん上手な人でも嘘が必要となり、その嘘によって成立させるものがあるのです。逆に言えば、嘘をついても成立しないものは、嘘をついてはならないのです。

 これまでに、リズムやアングルといった、剣の扱い方や体捌き以外にも必要な要素はありましたが、「嘘の使い方」が今後は、より見栄え良く楽しめる立廻りの演出として欠かせないものになってくるような気がしております。そのためには、嘘を嘘と思わせない、身体の使い方と剣捌きが基盤になくてはなりません。そうしたものは殺陣クラスだけでなく、剣術クラスや杖術クラスで、より説得力のある身体の使い方を身につけておく必要があります。

 若いお子さん達は飽きずに成長しております。近くにおりますと目を合わせられないお子様でも、離れたところにいますとしきりにこちらを伺うように気にしております。そこに子供の可愛さがあり、見てあげなくてはならないものがあるのです。今日は、杖術クラスで「慣性」の話になったときに、ちょっとした笑いが全体を包み込みましたが、あの皆が一緒に感じられるもの、真剣であるからこそのちょっとした笑いが、大人と子供が混じってそれぞれが自然な環境として稽古されております。「上手になりたい」というそれだけの純粋さは、ライバルを蹴落としたり、自分を良く見せる必要が全くありません。「それだけじゃ、何かの証が残らない。」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのようなものは、見た目の形に残ったものよりも、そうしたものが無くても続けられ、なぜ続けられて来れたかの方に、大きな何かが残されております。

 講習後は、ふたたびロードバイクのKさんに相手をお願いして、座りでの一点接触からの崩しによる体術稽古をおこないました。ここで、再度落下と反動を試みたのですが、強引に崩すか止められるかといった具合は変わらず、落下は相手に先回りさせる時間が十分にあるため、「ああ、これはまた研究し直さなければならないか…」と思った瞬間、何となく雰囲気から背面が使えるのではないかという気がして、早速試みたところ、Kさんがワザと力を抜いて倒れたような感じになり、「ああ、なんかタイミングが悪かったのかな…」と信じきれずもう一回おこなったところ、ときにビクともしない頑丈なKさんが後ろに飛ばされて倒れたので、二人して驚きました。Kさんが「なんだか、もうこの時点で(腕を交差した形)防げる気がしません」と、今までの形勢が一気に逆転した感想に信じられない思いがいたしました。最後にKさんが「いなす感じでやってもいいですか?」と構わずにやってもらいましたが、手を使っていないのでいなされてもほとんど影響を受けず、そのまま後方へ突き飛ばすように崩すことが出来ました。 その後、Kさんが帰られたのち、杖整体操に参加される私よりも体格のいいK君やWさんにも試みたましたが同様に勢い良く崩すことが出来ました。

 背面への気付きでしたが、この三連休でもっとも興奮した瞬間でありました。この発力が他にも応用できないか、(尤も他から応用したのであるが)実感を得られましたので、今後の稽古でさらに研究してみたいと思います。

 
 講習後は、『杖整体操』をおこないました。今回大学一年生になるK君が初参加。身体が硬いほうで、相手を付けておこなう「寝返し」や「両手持ち上げ」など、あまり効かないかもしれないと思いましたが、様子を見ていて「おっ!これは効いてるな。」と感じられましたので、四回ほど寝返しを続けておこないました。女性陣にはYさんとSさんがうつ伏せからの両手持ち上げをおこない、これが一番気持ちよかったと、そのままうつ伏せで暫くまどろんでいただきました。(分る人には分るあの感じです)常連のOさんも、うつ伏せでおこないましたが、身体の可動域の関係上難しく、椅子に座っていただき後ろへ軽く釣り合いをとるような形で引っ張り、ゆっくりと戻しました。これには、戻しの気持ちよさが感じられましたので、私としましても安堵いたしました。

 今回も、私自身身体の状態が抜けて気持ちよく帰路に着きました。講習をしながら、自分の身体も気持ちよくなるというのは申し訳ないような気もいたしますが、私の経験上、これは剣をやっている人には特に効き目が強く表れますので、この感じを知っている人と共にこれからも身体を労ってあげる講習をおこないたいと思います。

 本日もお越しいただいた皆様ありがとうございました。そして連日お越しいただいた皆様にも重ねてお礼申し上げます。


金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』


金山剣術稽古会

2020年3月 武術稽古日程
(新宿スポーツセンター臨時休館に伴い改定いたしました)

2020年4月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2020-03-23(Mon)
 

今日は9歳の生徒から教えていただく

 このところは、深夜2時前には寝るように心掛けているが今夜は少し遅刻してしまうだろう。

 本日土曜日のGold Castle 殺陣&剣術スクールの講習では、昨日の特別講習会や懇親会から連日の参加となられた方が何人かいらっしゃいました。昨日は両手寄せの操法をメインにお伝えいたしましたが本日は、ひさしぶりに「繋之型」をおこないました。

 この「繋之型」は六年程前に考案したものでありますが、名前の通り、動きの繋がりを重視したものであり、ゆっくりと一定の速度で踵を上げずに、足を止めずにおこなうものであります。

 力み癖、重心の偏り癖、踵が上がる癖、足運び癖、おもにそのようなものを炙り出す稽古法であり、杖術が大好きな役者のMさんは、普段から一人稽古をされているだけに、この繋之型を通して自覚されるものから、稽古として必要であると仰っていただいております。

 次に、「払い突き」の上段を、これまでのように手前側の手首を三回巻き返しせず、二回とすることで、一回分の工程が無くなりその分払いからの突きが速くなります。しかし、巻いて突くのではなく返しで突く場合は、力が出にくいものであり、そのために後ろ足の踵を上げて爪先を真後ろへ向けるような形でおこないますと、下体から上体へ返しの手首と体側部が繋がり、鋭く突きが出るようになります。

 最後におこなった「捧げ首潰し」では、雀の掛け方と右手の持ち替えと沈ませ方で九割方決まってきます。そんな中今日は9歳のYちゃんが、雀に雀を合わせ、首を差し出されずにすぐに次の沈み込みに備える位置に両手を備え、その先回りにより、相手が被せようとした杖に合わせて手を離しては持ち替えるという見事な対応をいたしました。

 私は嬉しくなってYちゃんに「どうやったの?先生に教えて。」と、自ら考えた先の対応を動きで見せてくれました。あらためてこの技は雀で首を差し出させる崩しが無ければこのように対応されてしまうものであることが解り、それを9歳の女の子が雀合わせに対応して来た事に驚きました。もちろん、力を使えませんので抑えておこなっておりますが、それでも一つ課題をいただけたことは、今日の私にとってのプレゼントになりました。この夢中に対応しているときの真剣な表情はこれまでに見たことのない瞬間がありましたので、なかなか感じ入るものがありました。

 講習後、正座で道場に礼をして退出されるYちゃんへ、「今日の対応は素晴らしかったです。また今度先生にも教えてください!」と話しかけると、「家でいつも(杖のことを)かんがえています。今日はやっててかんがえつきました。」と、これまた見事な対応!嫉妬される大人たちもいらっしゃるかもしれませんが、好きなことは誰から言われなくても家で練習し、練習できなくとも考える事ができ、そういう準備があって(本人はただ好きでやっているだけかもしれませんが)講習の場で前にすすめるのでしょう。ただ、気をつけなければならないのは、勝ち負けだけの畜生心を芽生えさせてしまってはなりませんので、私としては納得される崩し方を考えておかなければなりません。

 明日も12時から講習です。さらに15時からは『杖整体操』をおこないます。丁度明日は杖の講習もありますので、そのまま続けて参加される方は、自らの体を労うつもりで参加されてみてはいかがでしょうか。明日も暖かい一日になりそうです。身も心も穏やかに調整したいと思います。


2020年3月22日(日)『杖整体操』(お申し込み受付中)

金山孝之 指導・監修 DVD
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2020年3月 武術稽古日程
(新宿スポーツセンター臨時休館に伴い改定いたしました)

2020年4月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文

2020-03-22(Sun)
 

自らを掘り下げて新たな習慣を生きていく

 本日は、午後から免許証の更新手続きのため都庁第二本庁舎へ行ってきた。優良運転者講習だったため(ただ運転していなかっただけであるが)30分程であっという間に終了。あの30分というのは、免許証の写真をカードに貼り付けるための時間であり、ほとんど端折った講義やビデオの視聴は全く意味を成していないと感じるものだった。まあ、優良運転者といっても運転をしていないだけの人も多い筈であり、そういう人が何年ぶりかに運転する方が一番怖い。私も二年ほど前に運転したっきり全くしていない。以前は仕事で毎日のようにいろいろな車でいろいろな所を運転していたが、今では運転席に座ることが考えられない。習慣で当たり前のようにおこなっていたことが、数年経てばその感覚が感じられなくなってしまう。もちろん、運転をしてしまえばまだ勘は直ぐに戻ってくると思う。普通に過ごしていた日常でも習慣があればこそのものであり、武術を始めて来月でまだ十一年にしかならないが、当時は最低でも週二日の稽古、直ぐに週三日となり、2014年頃からは、最低週五日の稽古や講習となっている。こうした習慣が今の私には当たり前の日常であり、そう感じていられるから、その日のことは自然に任せられ、その先の事を同時に考え計画を立てることが出来ている。殺陣や剣術、杖術、抜刀術、体術、それらを稽古し進展させながら、講習会ではその趣にあった内容をおこない、ときにはアドリブ的にそこでおこなうものもある。稽古以外にも、運営に関わる手配や足を運んでやらなければならないことも多い。その他にも学ばなければならないものや本を読んだりなかなか時間を捻出するのが難しいが、そのように時間に追われながらやりくりして生きていることが、理想的な習慣と言えるのかもしれない。

 もっと楽をして、時間に余裕を持ちながら今よりも生活を全般的に上げていこうなどと、どう考えてみても、そのような時間が見当たらない。全てに自分の納得出来る向き合い方をしたいので、どうしても一つ一つに時間が掛かってしまう。だから、私の場合の習慣と言うのは、「納得出来る不器用さの中で、確実性を持って生きていく。」ということなのかもしれない。その時間の中には大笑いする時間も含まれているが、それも私という人間のバランスを保っていく上で欠かせない時間である。

 
 さて、昨日のGold Castle 殺陣&剣術スクールでは、昼の部と夕方の部と二コマ開催いたしました。
 昼の部では、小学校4年生のM君がお父様とともに体験三回目にお越し頂き、予てよりご注文いただいておりました武道具一式をお二人にお渡しいたしました。殺陣クラスでは、払いからの胴斬りを行っていただいたところ、M君が斬られる動きが上手く出来ていたようで、お父様もお母様も喜んでいらした姿が印象に残りました。M君も「ぼくは、斬られるほうが上手にできた!」と、いつも緊張気味の彼が自ら答えてくださいました。

 来週舞台本番を迎える中学一年生のRちゃんもお忙しい中お越しいただきました。舞台のチラシをいただき、ご本人に確認をいただきましたので、のちほどGold Castle のホームページにある「こくっち!」に舞台に関する詳細を掲載させていただきます。

 それにしましても、この時期に舞台公演やイベントの中止が相次ぎ、劇団など舞台活動を主軸に活動されている役者の皆様は本当に不安な日々を過ごされているものと存じます。人に生きるためのエネルギーを与え、感動を、その人の魅力を通して伝えていく芸術活動…それはいままでに数知れず多くの人々を勇気づけ感動を与えてきたものであり、そこに危機が訪れた場合、誰が勇気と感動とエネルギーを与えて行けるのか…今はスポーツも力無く同じように不安な日々の中で時が過ぎるのを待っているような状態といえるでしょう。

 こうした時期に元々採算の厳しい演劇の世界では、元に戻れるのならいいですが、このまま長く続きますと、多くの芸術の芽が犠牲にあってしまうものと思われます。これが時代の変化を生み出すキッカケとなるのか、それはまだ分りませんが、今はまだ多くの方がこれに対する問題から何かを見落としてしまっているのかもしれません。それは地球環境の破壊とも通じているものであり、いずれそこに世界中が足並みを揃えて携わっていかなくてはならない誤魔化せなくなってきたものに対し、自然の成り行きがあくまでもただ自然に導いているように思えます。

 講習にもどしましょう。

 昼の部の剣術では、納刀法を幾つかおこない、後方突きを稽古いたしました。鞘引きは、単に鞘を引くことを学ぶのではなく、鞘を引ききる最後の処理を覚える事が重要です。刀と鞘は、互いに真っ直ぐに入っているものですので、どのように抵抗無く抜ききるかは、現実逃避せず、シッカリ向き合って、自己解決せずに学んで行かなければなりません。

 後半は体術をおこない、前日土曜日におこなった正座からの片腕一点接触からの崩しを再び、私よりも体格のいい一年振りに復帰されたK君と手合わせいたしました。やはり前日のような中心に向う方法ではビクともせず、そんなことは以前からよくよく解っていたのですが、先日中心を探る稽古をおこなったため、そこで得たものが、今回の内容に入ってきてしまい妨げになっておりました。この日は落下とバウンドを使い、それを一点接触の右腕前腕部に働かせ相手を跳ばすように後ろへ崩したことで、まあ何とか形にはなったかなと、皆さんも興味津々で取り組んでいただきました。私自身驚いたのは、それを正座で両手を腿の上に置いた状態で相手に押さえ込んでもらう所謂「合気上げ」をおこなう前のような形から、落下のバウンドと背中の操作をおこなったところ、全員声を出して吹っ飛んでしまったのには驚きました。私もどのような違いがあるのか受けてみようと、四月からH大学の学生となるK君にその方法でおこなっていただいたところ、思いのほか後方へ飛ばされましたので、前日の上手くいかない出来事が幸いし、受けていただいた女性の生徒さんから「なんだか、アトラクションみたいです!」と、後方へ一回転するほどのエネルギーの伝え方には私も興奮を覚えました。この身体の使い方は元々やっていたものでもありますので、今後は、より利きが高まるための検証を探り、いずれロードバイクのKさんにどこまで利くかを試みてみたいと思います。

 夕方の部では、四月から中学一年生になるK君がお越しになり、高齢者のHさんと後期高齢者のOさんもお越しになられました。他にもいつものメンバーがお越しになられ、とくに高齢の方にとっては命の心配もある中で、Oさんなどは昨日今日と二日続けてお越しになられ、私も当然開催を私の判断で中止にすることはありませんが、「命を懸けて来て下さっているなぁ」と、体重30㎏前半のOさんにとっては、この日一日の稽古を、しかも殺陣はやりませんので、後半の一時間だけのために電車を乗り継いで来て下さっていると思うと、感じるものはあります。

 前日はそのOさんより先輩のSさんもいつものようにお越しになられ、なんというか、親御さんや子供たちもいつものように参加されておりますので、世間での外出自粛報道と、私の目の前の風景とのギャップにかなりの温度差を感じます。

 講習中は換気を良くするため、高いところにある窓を開けたまま行いましたので、風が武道場内の国旗を揺らすほど入ってきておりました。殺陣クラスでは「囲まれ稽古」をおこない、フリーにおこなっていただく中で、それぞれの間、緊張感、見せ方、そうした雰囲気の纏い方を身につけて普段の立廻りに芝居勘として取り入れていただく内容です。

 子役のお子さんや大人でも役者の方が(ある程度仕事を重ねた経験のある)上手なのは、それまでにそうした訓練をしてきたこともありますが、それだけでなく、「駄目なら仕事が取れないから。」という厳しさが根底にあります。頑張るのは当たり前の世界で、その皆が当然のように頑張っている中でどうやって己の個性を引き出して行くか、その状況で人と同じにならず、かつ意図するものを汲み取っておこなうにはどうするのかを、多くの失敗の中から、盗み、活かし、経験値を積み、場に適する術を身につけられているのだと思います。

 殺陣と剣術の違いについてこれまでに何度も訊かれてきましたが、特に大きな違いは、芝居が関わっており、その芝居とは、嘘を嘘と思わせないように嘘の上塗りを逆算的に積み重ねていることにあります。それが成立ということです。

 大袈裟に言えば、芯は全く何もしなくても、絡みがそれに応じたリアクションを取れば、芯は超能力的な何かを使っているようにも見せることができるのです。そのため絡み役の人達は、嘘の上塗りを成立させるために日々稽古に励んでいるのです。

 剣術では、ひさしぶりに講習で「連続切り返し」をおこないました。これは動画でも配信しておりますが、この動きの意図するものが解る人は少ないでしょう。BABジャパンのYさんに最初映像をお見せしましたときに、当時は六回までだったと思いますが、「マニアックですね、私は好きですよこういうのは!」と仰っていただいた記憶があります。その後、DVD「古武術は速い」の中身に基礎稽古法として、身体を練るための稽古としてやり方を解説しております。最初は三回の切り返しを、切っ先が正中線を三回渡り、その際に身体の幅よりも外に切っ先が出てしまわないように高速でおこなうことがなかなか上手く行かないでしょう。そこに、剣術稽古での基盤となる、身体の使い方や、体を作っていく、ということが関わっていきます。

 連続切り返しの後は、幾つかの技や、最近発見した鍔競り合いからの刀奪りをおこないました。とにかく全てに通じることは、逆境から学ぶということでありますので、武術稽古も然り、社会の出来事でも然り、逆境から自分が何を自得できるのかが、生きていく中で前に進んだといえることになって行くのだと思います。いつまでも、前に進まず、逃げて誤魔化してばかりでは、余計なものばかりを身につけてしまいます。その余計なものから解放される新たな我が身の在り方に身を置き、そこに預けることが出来た人は、ようやく習慣を変えることができますので、かつての習慣に足を引っ張られないように、新しいものを取り入れ、入れ替えていかなくてはなりません。そしてようやく、環境を整えたことで見えてくる世界、生まれてくる言葉が誕生するのでしょう。それが掘り下げてから成る行為なのです。

 話が逸れておりますが、生きていくことと自らが時間を費やしている活動或いは仕事、そうしたものが通じておりませんと、生きながらにして死んでいる時間を消化しなければなりませんので、それは私も二十代前半の頃に長く過ごしただけに、よく分っております。もちろんそうした逆境があったからこそ、今の私が存在している訳であり、逆境は逃げなければ必ずその後に活路を見出してくれます。「逆境無き活路は無い。」「活路は逆境から学べ。」まるで本のタイトルのようですが、それが生きて行く術に関わっているのだと思いますが、武術稽古そのものが逆境を想定した身体を通じての学びでありますので「生きて行く」という事に対して自然と考えるようになっているのだと思います。

 昔は、いつ死ぬかが分らない時代でもあり、死が身近にあった時代であります。何十年後どころか、数年後も分らない命に対して、武士であるなら死に場所を考えて生きていたのです。長生きして老後は年金で長寿を全うするなんて、「それで、どう生きたのか?」と、恥ずかしくてそんな事は言えないだろう。かつての武士は命よりも名誉を重んじていたため、それが生き方として当然の習慣となっており、切腹という「死」への意識が、次第に死に対する重さをも軽減していいたのではないだろうか。当然、いつの時代も色々な人がいた訳であるが、それでも時代が作り出した習慣というものが人々に与える影響は計り知れないものであり、何が良いのか悪いのかは、時代によりまったく反転するものでもあり、陰と陽がある限り、必ず恩恵の裏に報いが待っている。

 だから、いつの時代においても恩恵に甘んじながらも、その報いが生じたときに、逆境をどう乗り越えていくかの備えを心得ておかなければならない。それはテレビやインターネットという、広告がらみの商売を通過した情報からではなく、日頃の工夫、知恵、そういったものを働かせる己の身体と心に委ねられるのだと思う。それは師からでもあり、信頼出来る知人からでもいい。だからこそ、恩恵を受けている間に、自らの習慣をどのように預けているかが問われてくる。

 生きていくというのは、そのようなことなのかもしれないし、現代の経済利益と効率優先社会の向う先に、歯止めと言うものが仕組み的に当て嵌まらないのであれば、これは自然に破綻してしまうか、感情の乏しいロボットに近い人間達とそこそこ人間に近付いたAI達が、共になって何のためにか分らない利益と効率化を押し進めていくのであろう。だから私は、そうではない習慣に身を預け今を生きていたい。その日々が妨げられないことを切に願っている。


2020年3月20日(金/春分の日)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

2020年3月22日(日)『杖整体操』(お申し込み受付中)

金山孝之 指導・監修 DVD
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2020年3月 武術稽古日程
(新宿スポーツセンター臨時休館に伴い改定いたしました)

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2020-03-16(Mon)
 

本日は役者のKさんが正規受講生になられました

 東京では桜の開花宣言がされた本日、まさかのみぞれとなり寒い一日であった。もはや寒暖差の乱高下は珍しいことではなく、驚くことも飽きた。飽きるという事も、場合によっては負の感情を立て直すキッカケになっていく。


 さて本日の講習では、先週に続き役者のKさんが正規受講生となられました。今日は会場を間違えてしまわれたようで、急いで駆けつけて下さいました。そのKさんと手合わせした体術では身体の強さに驚かされました。体格も大きく、座りでの互いに腕を交差させた状態で中心を取っていくことが難しく、「これはちょっと無理ですね。」と、両手でなんとか崩すことは出来ましたが、片手一点接触での崩しに関しては、中心に捉われすぎていた部分もあり、それは技の特性において中心を取り続けていくことは当然重要なのですが、力が強い方から弱い方に流れるという私が感じている原則に則りますと、この場合、体格差に対し、中心を取っても逆流してしまうものであり、今後座り技に対して見直し検討していくことが必要であると痛感いたしました。突きのように中心の働きが活かせるのか、あるいは以前稽古でおこなっていた円の方向と共に浮きを掛けて膝下から浮かせるか、しばらく生徒達を待たせてKさんと手合わせしておりましたが、今後に活きる時間でした。座りでは触れた感触に規矩が感じられ、訊くと「雨の日以外は毎日20㎞~30㎞ロードバイクで走っています。」という事に納得。その姿勢は正座(跪座)になり肘を曲げて腕を合わせる形に近いものがあり、規矩になっていたのだと知ることになりました。今回私も勉強になりました。雨の中他会場から駆けつけて下さりありがとうございました。

 体術「引込潰し」では、先ほどのKさんも驚きながら崩れ落ち、もう一人体重が100㎏ぐらいありそうな初参加のKさんにも何度か崩れ落とすことができました。この方の場合、むかし剣道と柔道を習っていたため、間単には崩せませんでしたが、「そう甘いものではないな…」と感じながら、抵抗する巨漢のKさんとも良い稽古になりました。この場合体格差はさほど影響ありませんので、技として成立しているものと思われます。しかし、見た目には解りにくい精確な部分が関わってきますので、同じようにやっても力技で潰そうとしてしまう場合が多く見受けられます。これは力技でなく、相手の膝を始めとした下半身が抜けるような状態を利用しての崩しですので、出来るようになるのは、「出来たときを待つ」しかないと思います。この言葉の意味は、駄目なものは何度試みても出来るようにはならず、出来るときは、自動的に何かが備わったときであり、そのためには、出来るものと出来ないものを確認し、基礎的な稽古の中で、精度を高め条件を厳しくし、そこで気付いた身体の使い方などを参考に、ふたたび出来るか出来ないかを試みてみることが解決法の糸口になっているかと思います。

 剣術では、相手の剣を奪う技を二つほどおこないました。9歳のYちゃんは相手を倒しながら奪うもう一つの技が好きなようなのでそちらもおこなっていただきました。最初に「正面斬り」や「胴斬り」、「斬突き」に「払いからの斬突き」などもおこないましたが、全般的に体術的な内容になったと思います。

 明日は品川区総合体育館にて12時00分~14時00分は柔道場、15時00分~17時00分は剣道場にて開催いたします。明日も剣術クラスは、昼の部と夕方の部では内容が異なりますので盛り沢山になるかと思います。(講習内容はホームページの各ページに毎度掲載しております)

 本日もみなさま、寒い雨の中お越しいただきありがとうございました。


2020年3月20日(金/春分の日)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

2020年3月22日(日)『杖整体操』(お申し込み受付中)

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2020-03-15(Sun)
 

笑い溢れる殺陣クラス

 一晩経っての講習記事。窓際で午後の日差しをカーテンで遮りながら書くのは新鮮に感じられるほどこれまでにも少ない。

 就寝前と就寝後では一日の出来事を振り返る感じが異なるが、幸い午後でも窓の外は静かな環境なので、今日おこなうさまざまな作業の前に記すとしたい。

 
 昨日は深川スポーツセンターでの講習。予約の関係上ずっと柔道場が続いていたが、ひさしぶりに剣道場を利用できました。
 剣道場のほうが鏡の前に奥行きがあり、とくに最初に行う脚部鍛練稽古では、生徒達との距離感が遠いと感じます。

 雨か曇りの印象がつよい深川での開催ですが、最寄り駅は東西線門前仲町駅、また京葉線越中島駅があり、いつか行ってみようと思うのですが、目の前の国道463号線清澄通りを門前仲町方面と反対側に向いますと、割りと近くに相生橋という橋が見えます。それを渡れば石川島、そのむかし人足寄場があった場所です。人足寄場といえば、鬼平犯科帳で有名な長谷川平蔵宣以がその構想と実現に大きく関係しておりますが、その後ペリーの来航をキッカケに軍艦の製造拠点となり石川島播磨重工業が誕生し、現在のIHIに続いております。

 その昔、六年ほど製鉄所で働いておりましたので巨大なブロワーやタービンを監視室から運転したり現場で点検作業などおこなっていた経験からIHIや石川島播磨重工業という名前にはピクンと反応してしまうものです。

 話が逸れてしまいました。

 殺陣クラスの講習では、簡単なセリフをつけておこないました。このセリフというのは効果的な働きがあり、その言葉に見合った動きやリアクションが導かれ易くなります。そして、上手く行っても行かなくても楽しいものです。ですがこれが、舞台などで発表しなければならない金銭を頂く価値に値するまでにしなければならなくなりますと楽しめるものではなくなります。誰でも楽しめる場として在り続け、かつそれぞれのレベルに応じた技量の提供をおこない続けて行くことは、一回毎の講習に神経を注いでいかなければなりません。セリフはあくまでその雰囲気に望まれる感情移入の導入やタイミングの向上を図ったものであり、皆さんがここで身につけて頂くことは、剣を通じたその場の雰囲気の纏(まと)い方です。純粋に楽しめる、笑える内容も必要ですので、今後もバランスを見ながら講習をおこなって参ります。

 杖術クラスでは、多くの方がダブル受講で残ってくださり、基礎的な杖の操作をお伝えしながら思わず私の口がいろいろと話しておりました。聴き上手な方というのは特別な才能なのかもしれませんが、そういう方が一人でもいらっしゃれば、脳の回路が何かに繋がったかのように言葉を発していくことがあります。場の雰囲気というのは不思議なものです。音が無くても、その空間のなかに響くものは感じられますし、それは周波数なのか、人間も微かにイルカのようなパルス音を発しているのかも(そんな訳はないですが…)と思ったりしてしまうほどです。

 基礎的な動きをジックリおこないましたので、最後は「両手で幅広く掴まれた際の対応」をおこないました。これの特徴は、差し換えながら後方へ雀を掛けることと、円に入りながら途中で一手間寄り道をおこなうことで相手がシッカリと粘り強くおこなおうとしていても持ってられなくなってしまうものです。こうした互いの情報を身体と意識で感じ取りながらおこなう稽古は一人で自らを観察しながらおこなう稽古とはまた違った楽しみも感じられます。根底には同じ観察が通じておりますが、相手が付きますとより誘われて、観察力が低下してしまいますので、一人稽古での眼、対人稽古での眼、周囲を把握する目、色々な眼を養いながら、気がつけるための段階を皆と共に登って行きたいと思います。

 さて、今日はこれからやらなければならない事がありますので、記事はこの辺にいたします。
 
 次の土曜日の講習は、いつもの戸越体育館ではなく、品川区総合体育館柔道場で12時半からおこないますのでお間違えの無いようにお気をつけ下さい。昨日もお越しいただいた皆様ありがとうございました。


2020年3月20日(金/春分の日)『杖術 特別講習会』(お申し込み受付中)

2020年3月22日(日)『杖整体操』(お申し込み受付中)

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2020年3月 武術稽古日程
(新宿スポーツセンター臨時休館に伴い改定いたしました)

甲野善紀先生からの紹介文

2020-03-09(Mon)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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