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疲れる稽古が疲れないように疲れる稽古を選ぶ

 心地良い疲れに懐かしさを感じる。やはりこうした追い込むような稽古は私の好むところである。

 
 昨夜は連日の稽古のため23時前には床についた。慣れない時間に夜中何度か目覚めてゴロゴロしていたが、それでも十分に休息をとることが出来た。

 そのお陰で今日は午後から編集者のYさんと三時間近く集中した打ち合わせが出来ました。たまたま今日は月刊秘伝9月号の発売日でもあったので、本屋さんで購入しお渡しすることが出来ました。打ち合わせでは懐かしい想い出の記憶が蘇ってきたり、その中から思いがけぬ秘密の略語が出てきたときのYさんの表情が印象的でした。今、学生当時の私が目の前に現れたら、一体どんなふうに見えるのか、基本的なものは今と変わっていないと思いますが、何かに対する気合いのようなものは感じられたのかもしれません。若さゆえの純粋なエネルギーのぶつけどころが私の場合はボクシングに全てを捧げることが出来ましたので、ボクシングと出会えて本当に良かったと思います。

 人間の資質や性分、そういったものと学びが繋がっていけば、人生学び続けることで救われるのかもしれません。そうした学びに出会えることが大きなテーマになりますが、今日の打ち合わせでも話題になりましたが、何を捨てていけるかが自らにとって必要なものに気付かせてもらえる一つの手立てであると思います。

 教えていることや宣伝していることの真逆を実践している指導者もよく見聞きしておりますが、それはそれで需要が成り立つのであれば私が言う事ではありませんが、器機の進化や時代の流行に今一瞬の間風が吹き込んでしまっただけであり、その後のことがなぜだか見えていない方も感じられる世の中になってきました。しかしながらそうしたことは私が感じるように多くの方も感じていることだと思いますので、元号が令和になった新時代に向けて、情報過多の時代から何を選び得て行くのかを見極めることが大事になってきます。結局のところは、その人に合った学びと出会い、実践継続していく中で見極める感を養い、こうした時代を生き抜いてゆく術を身につけて行かなくてはならないということだと思います。

 より、捜し求めることが困難な時代だからこそ、信頼信用を得ていける生き方が判断材料になりますし、そうした中で周囲に関わってくる人も整ってくるということでしょう。そうして整った方々と世の中に対し何ができるのかということが、多くの責任ある関わりの中で真剣な生き方に向き合っていくことになるのではないでしょうか。

 
 打ち合わせの後は高田馬場に移動して郁己君と川原田氏とともに稽古をおこなった。

 今日でまたしばらくお二人とは稽古が離れてしまうこともあり、身体への置き土産となるキツ目の稽古をおこなった。武道場の長い距離を使って「蟹の前歩き」「雀」「蛙」をおこなったのち、杖による「馬突き」「旋風」などを「蛙」以外は長い距離を使っておこなうことが出来た。

 剣術では、「十文字斬り」「陰陽之太刀」「陰陽之祓い」「陰陽之型」などお二人にとって初めてのものばかりをおこなった。とくに杖術では郁己君の成長ぶりに驚く。今日初めてお伝えした動きでも三回見せただけで理解し動けるようになっていた。脳も含めた身体の性能が向上したことで、これまでおこなってきて身についた感覚が、稽古をしていなくても上達に通じるのだという事実を見せられた気分だ。これは私にとっても初めての経験だった。

 彼のこの一、二年の成長は目覚しいものである。その期間実質稽古をおこなったのは数回程度だが、完全に動きそのものが進展しているので、身体と心の成長は動きの進化へと自然と繋がってくるのだろう。尤も小学生から中学生に掛けての成長期なのでそれは大いにありえる事だと思うが、それでもやっていないのにいい動きになっているというのは驚いて然るべき事実といえる。

 川原田氏も今日は午前中に本厚木で井上欣也さんと稽古をおこなってきたので、長丁場での関東での締めとなる稽古になったが、熱意は昔から変わらず、今日私の口から出た言葉に、「実感予測に対し、それを上回れば心地良く感じられ、足りなければ違和感や心地悪さが感じられるものであり、実感予測を高めるには、日々の稽古で無意識レベルで吸収したものが、いつしか整理が付いたときに、出来るかもしれないという実感予測に変わり、あとはそれに対する技法を探すことが稽古です。そのため、実感予測を邪魔するように意識の介入思案思考などの分析が先に立ちますと、その先からのお膳立てを無視して、今まで経験したことに縋っていくことになってしまうのです。自らを変えていく、克服していくには、無意識の支えが必要ですので、そこの働きを信用信頼し共に作業していくことが大事であると思うのです。」というような内容を発したと思うが、中学二年生の郁己君が真剣にその話を聞いておりましたので、彼の中にも感ずるものがあったのなら今日の稽古は活きたものとなっただろう。

 抜刀術をおこなった後、最後に「連続切り返し」切り返し四回を百回おこなった。一回毎の身体に掛かるエネルギーは大きいもので、私としても合間に数回一呼吸置かなければ息が上がるため、今後はどれほど楽にシッカリと四回切り返せるか、力の抜きどころを探って稽古をおこないたいという興味も湧いた。もちろん数のために手を抜いてしまっては本末転倒なので、前回よりも息が上がらない身体の使い方を得ていくことで、六回、八回、十回に対する切り返しの精度が高まるのではないかと感じている。同時に心肺機能も鍛えられるため、私のオリジナルの稽古法の中でもこの「連続切り返し」は、今後も身体作りと剣の操作精度を高めるものとして取り入れて行きたい。

 それにしても、郁己君の成長と体力には驚かされた。週に七日間(長いときは一日十二時間)はバドミントンの練習をおこなっているそうだが、なんでも東京都内から自転車で友達と高尾山まで行き、頂上まで登った後再び自転車で帰り、さらにボウリングに行ったそうだ。こういうことは私も嫌いではないが、生涯忘れない想い出の一つになっていくのだろう。今日も身体への置き土産にと、脚鍛稽古と最後の切り返しなど多めにおこなったのであったが、ケロッとしていたのでお土産にならなかった可能性が高い。私も緩い稽古をしているつもりではないが、今日の稽古は私にとっても大きな刺激となった。次にお会いするときには置き土産を渡せるように私自身励んでおきたい。
 
 お盆最終日に合間を縫って稽古にお越しくださった郁己君、最後にお越しいただいたお母様、去年と同じく今年も関西からお越しいただいた川原田氏に感謝いたします。また次回稽古が出来る日を楽しみにしております。


 金山孝之 指導・監修 DVD
『古武術は速い~“型の手続き”を追求した剣・杖の実践的な体使い~』

(2019年5月20日より発売中)

2019年8月24日(土)『剣術 特別講習会』(お申し込み受付中)

金山剣術稽古会ホームページ(お問い合わせ受付中)

2019年8月 武術稽古日程

2019年9月 武術稽古日程

甲野善紀先生からの紹介文


2019-08-17(Sat)
 

稽古が出来ることのありがたさ

 本日は高田馬場にて金山剣術稽古会の稽古。今日はめずらしく四名が訪れる。

 武道場も混雑しており、盆休みとはいえ稽古の優先順位が高い人にはあまり関係ないようだ。

 私自身今日で八日間連続で講習会や稽古会が続いている。おそらくこのままの日程で行けばあと五日間続くため十三日間連続となる。

 明日は出版社の方と打ち合わせの後、高田馬場で稽古の予定。

 稽古後に、渡部氏と川原田氏とともに会場から駅に向かう道すがら、空模様が怪しくなってきたため駆け込むようにレストランへ飛び込んだ。飛び込む前にはすでに降り始めてきたが、程なくしてスコールのような雨が幾度と無く続いた。

 夕方であったが、三人で乾杯をした。今日の参加者でお酒を飲める年齢は我々だけであった。先に帰られた二人も雨に濡れたかもしれない、それぞれに集中して稽古をされていた。一杯しか飲んでいないが連日の疲労も重なり今夜は頭が回らない。だが、今日もありがたい時を過ごさせていただいた。

 今夜は早めに就寝し、明日の打ち合わせと稽古に備えたい。


2019.08.15 新宿スポーツセンター


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2019-08-15(Thu)
 

直感と無意識の教え

 本日水曜日は戸越体育館で渡部氏と川原田氏とともに稽古をおこなった。

 体術稽古から始まり、私自身最先端のものを身につけるというより体術稽古としての基礎的な動きの精度を自己分析できるものを求めた。剣術でいえば、正面斬りや袈裟斬りに胴斬りのような生涯追求し続ける基準の動き。

 身体の求めに応じるように、受けと取りのやりとりを今の私の身体感覚で何を吸収しようとしているのか、そこに私自身興味がある。

 関西から帰省中の川原田氏に、まだお伝えしていなかった組杖をおこない、続いて一人稽古で取り組まれている「三十連円打」をおこなった。最後まで動きはほぼ覚えておられましたので、滑らかな重心移動や杖の打ち合わせる位置など、そういった精度が上がってくればもっと良くなると思います。

 その後ひさしぶりに「十一之型」をおこない、渡部氏も川原田氏も動きは入っているので、合気道をされている川原田氏ということで、思わず「膝行でやりましょうか。」と、私もふだんは殆んどやらない膝行での十一之型をおこなった。十一之型自体は武術を始めた十年前から数え切れない程おこなってきているが、膝行では数えても二十回はやっていないだろう。

 膝行自体も十年前は稽古前に必ず新宿スポーツセンターの端から端(時計から時計)まで三~五往復はおこなっていた。これはかなり足にきたが、それが終ってから稽古に入るのが普段の流れであった。現在は膝行に代わって「蟹の前歩き」や「雀」に「蛙」となったが、「十一之型」を膝行でおこなうのは動き方も含め良い稽古になりそうだ。なにより、苦しいはずのものが興味深く取り組める。

 今回、どういう動きになっているのか休憩の合間に渡部氏にスマートフォンで撮影して頂いたが、合気道家の方に杖術は興味を持っていただいているので、膝行でおこなう今回の動きは稽古法の一環としても興味を持っていただけると思う。私もほとんど練習をせずにおこなったので動きは粗いが、いずれ精度が上がってきたら映像を差し換えようと思っている。
https://www.youtube.com/watch?v=2EUy-aNE9fQ
 

 最後は抜刀術を稽古。

 「懐月」で唯一有効だった「鞘出し」をお伝えした。私がおこなっている稲妻抜きに渡部氏の動きがかなり近付いてきた。そして懐月も格段に向上した様子だ。

 川原田氏の要望で「鷲眼一閃」をおこなった。これは昨年の暮れ頃に少し構えの角度を変えて中丹田の意識で姿勢を少し高めにとりおこなっていたが、移動距離に捉われ抜刀術における調和感覚が失われつつあった。そのことに気がつきしばらくこの技はおこなわずに寝かせておいたのであるが、今日ひさしぶりに集中的におこなってみて、名前の由来にもなった猛禽類が攻撃する前に身を屈めるような姿勢を取ることで、抜き打ちに鞘から奔った剣にアソビを取ったその姿勢から身が引かれるとも追従しているともどちらともいえない一体感の中でおこなっている。あらためて、身体が感じ教えてくれる心地良さというのは、動きの方向性を左右するものでありその感覚は大事にしておかなければならない。動きの予測、それは無意識の計算力からなる実感予測であり、それを実際に上回るか同等であるかにより心地良さが感じられるように思うのである。その実感予測に到達しないものは違和感や不満となって身体が教えてくれる。そんなときは時期が来るまで待ったほうがいい。不思議なもので時期はだいたい訪れる。何度も例えているが、ジグソーパズルと同じように、どうしても解らない箇所は他から埋めていくことで見えてくるものだ。だから他の稽古をする。


 抜刀術の後は「杖整体操」をおこなって終了。先日の講習会でおこなわなかった二人一組での垂直上げをおこなった。これは受ける側は特有の気持ちよさが得られるし、操作する側は真っ直ぐに立つ実感が得られる。個人差はあるかもしれないが、渡部氏も川原田氏もその変化は感じ取られたようだ。

 明日は高田馬場で稽古。台風の影響で連日突然の豪雨が降り出しているので、明日も雨具は用意しておこう。


 金山孝之 指導・監修 DVD
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2019-08-15(Thu)
 

身体の今も一期一会

 さあ、今夜も道衣を洗い終え一日最後の記事を書き始める。

 今日の金山剣術稽古会は、中学二年生の郁己君とパーソナルトレーナーのM氏とともにおこなった。

 郁己君とは今年の四月以来の稽古となったが、前回からさらに背が伸びていたので驚いた。会話も雰囲気もずっと落ち着きと余裕が感じられ、良い日々を過ごしているんだなと安心した。

 訊くと週に七日間はバドミントンの練習をおこなっているという。部活としての練習よりも自分達で集まって練習している時間の方が圧倒的に多いそうだ。長いときは朝9時から夜9時まで12時間。青春ですね!

 顧問の先生が練習を自由にやらせてくれるそうで、自分達で練習法を考え楽しんでやっているという。そのせいかみんな仲が良くダブルスは誰とでも組めるそうだ。実力は三年生よりも郁己君達二年生のほうが高いそうなので、来年の大会での成績は今よりも良くなると自信を持っていた。

 そういう意味では、私の稽古会でも興味を持てる内容を考え、真剣さの中でそれらを楽しめるようにおこなっている。嫌な事を我慢してやらず、興味のあることを存分に夢中になってやることで、結果として嫌々やったものよりも、時間も集中も増し進展に繋がってゆく。そして、そうした身体性からなる発想や思考法は、ものごとを上手く運んでいける術を同時に養っているのである。嫌な我慢よりも良い我慢を。良い我慢は我慢と感じない。だから心が育まれる。

 三十連円打では、前回四月に二十番以降の三十番目までお伝えしていたが、短い時間でしかお伝えしていなかったにも関わらず忘れずに動けていたので、さすが私と小学校五年生の頃から毎週二時間マンツーマンで一年間を通した生徒であると感心。

 見た目も中身も完全な青年となったが、笑顔は小学校五年生の頃と変わらずにニコニコと可愛いものである。

 今日はパーソナルトレーナーのM氏も一緒だったので、筋肉に関する専門的情報を得ながら基礎鍛練稽古、杖術、剣術をおこなった。杖術では抜き技、「鶺鴒突き」「影突き」をおこなった。バドミントンでもフェイントや相手を騙すフェイクも技術の中にあるだろう。そうしたフェイクも、視覚的に騙すというよりは、相手の反射反応を引き出すような肩の動きであったりそれらを、出すも出さずも有効に使えるものがあるかもしれないよとお伝えした。

 杖の抜き技を受けての説明だったので、それを聞く郁己君の眼が印象に残った。M氏には基礎的な動きを稽古していただき、同じ一足の足運びでも、ただ突くだけなのか、それとも誘いを掛け抜きながら突くのか、始終一致を変えずに突きを変えること。その身体感覚の調整を感じていただきながらお伝えした。

 この杖の抜き技では、攻め手側も受け側も互いに良質の稽古となる。気配を出さずに変化させる工夫や、打とうと思って抜く、或いは、抜こうと思って打つ、そうした意識における無意識レベルでの身体の整い方が相手の反射反応を引き出しはしないかと、そうした甲野先生の影観法とまではいかないが、なるべく意識を本来の動きに介入させないように、杖術の型稽古の中で意識しておこなっている。これは相手にとっても、抜かれた瞬間に対する反応が間に合っているのか遅れているのか、はたまた抜かれていないのに、抜かれた際の対応に動いてしまわないか、など非常に集中と身体の咄嗟の対応を養うものとして予定調和に無い稽古法として互いに技を掛けられるか、それに対し見極めることができるか、そういう攻防が稽古の中で養われる。

 合間に体術「蠢動」をお伝えし、郁己君やM氏に違いを体感していただく。最後に剣術「連続切り返し」をおこない、四回の切り返しを五十回おこなった。M氏はほとんどやったことが無いため、二回の切り返しにて一緒におこなった。

 以前は郁己君と百回おこなったが、一回一回が大変なので、これを五十回おこなうといっても結構大変なものである。しかし、やりながら「ああ、これは身体を練る稽古だけでなく、身体調整法としてこれからも必要なものになるな…」ということに気がついた。

 つまり、今週の月曜日におこなった稽古前の杖整体操による解しが利きすぎてその後の稽古に支障をきたしたことからもそうであるが、これはそれ以前からすでにその兆候に身体が染まりかけていたのかもしれない。身体がどういう状態であるかが重要で、硬すぎても駄目であり、柔らかすぎても駄目である。どの動きに対しどういう感覚で動きたいかが身体からのサインであり、そのサインが稽古内容を決定するといっても過言ではなく、私がおこなう武術稽古の方向性として、今後どのように身体を調整しておかなければならないのかということに気がつかされた気がする。人体のバランス性というのは、いつかの記憶どおりにならないもので、今の今ある状態にとって必要なものが大事であるということ。きっと「身体の今も一期一会」なのだろう。

 今日の稽古も得るものがあった。夏休みの期間を利用して稽古に来てくださる郁己君とご両親様のご理解、同じ身体を使う仕事をされているパーソナルトレーナーのM氏、それぞれの人生ひとときの時間を共有して学ぶこの瞬間をこれからも大事にしていきたい。


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2019年8月12日(月/祝日)『杖整体操』(お申し込み受付中)

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2019-08-10(Sat)
 

稽古法で如何なる身体性を身に宿すか

 昨夜はどうにも眠れず、四時半頃から蝉が鳴き、小鳥がさえずり始める六時頃にようやく意識が落ちたものの八時過ぎに目が覚める。そこからモゾモゾと寝たか寝てないかの間ぐらいで9時過ぎに起き、合わせても三時間弱しか眠れなかった。しかし床に入る五時間ほど前から何も食べていなかったのでそれほど身体が重たくなっていない。内蔵は十分休めたという事か。

 起床後はいろいろと連絡をおこない、ホームページのページの追加など眠れない間に考えていたことをおこなった。殺陣と剣術の違いはよく訊かれる質問であるが、これを端的に説明するのはどうしても長くなってしまう。人によっては、殺陣はお芝居で剣術は実戦などと安易な回答で済ませるが、剣術にも演武があり実戦の演武とお芝居の殺陣はどう違うのか?という疑問もとうぜん沸いてくるだろう。長く言葉で説明すれば解決することであるが、昨晩は布団の中でフト突然に「そうか、殺陣は身体の外側を稽古するものであり、剣術は身体の内側を稽古するものなのだ。」という言葉によりこれまでの端的に説明するための難問が払拭された。

 つまり殺陣は見た目を重要視し、その見た目を集団で作り上げるために構成と拍子を考えそれに見合う動きを当て嵌める。安全かつ見栄えのいい動きを身体の使い方と剣捌きにより表現していく。それに対し剣術は、自らの身体を細かく観察しそこで得られる感覚を大事に身体統御をおこなえるように稽古する。見栄えという発想は無く、結果として見栄えが良くなるものであり、とうぜん鏡を使って視覚に頼る稽古は極力避けている。

 このように、殺陣と剣術における違いは自らの身体において、外側の意識なのか内側の意識なのかによって大きく異なる。そういう意味では、剣術で内側を練りながら稽古し、殺陣により外側を意識して稽古をおこなうことはGold Castleならではと言えるだろう。

 さて、本日の金山剣術稽古会は高田馬場で渡部氏とA氏とともに稽古をおこなった。

 開始前に誰も居ない武道場で五十分ほど一人稽古をおこなったが、今年からエアコンが付いたとはいえかなり汗をかいた。帰宅して風呂敷から道衣を取り出したが思ったよりも汗で湿っているのでこうして記事を書きながら洗濯していることもしばしばである。

 稽古では、今週月曜日の稽古前におこなった身体を解し過ぎることの弊害を意識しながら、適度な緊張を保ち意識的な動作より若干先に行っている位の速度で動けることを淡々とできるか。そうした身体の状態が整えられているか。それらを考えながら渡部氏にお伝えし、A氏にはまずは基礎的な動きをおこなっていただいた。

 休憩時に思わず、現代における武道武術が求められているものとは?また、時代に対応するもの(生き抜く術)として武術が存在するのならば、今の時代は戦後の昭和と掛け離れてしまっていることは言うまでも無い事であり、不便な時代だからこそ通用していた考え方と、余りにも便利な時代となった今、通用しなくなってしまったこともあるだろう。辛抱しなければならなかったものと、辛抱しなくても済ませられる事などなど…

 もちろん辛抱は必要であるが、どういう状況で辛抱を育てていけるかにある。嫌な事を我慢してやり続ける辛抱なのか、自らのやりたいことの中で一つ一つを確実におこなっていけるか、待つことができるか。

 ハラスメントがこれだけ騒がれるようになったのは、時代の転換期における価値観の違いもあるだろう。子が親になったときに言われている虐待の連鎖のように、気合いや根性で身に付けた身体性はおそらく相手に気合いや根性を求めてしまうのではないだろうか。私はかつてボクシングをやっていたので、気合いや根性というのは当たり前のように意識していたし、ボクシング以外でも緊張感のある学校や土地柄でもあったので、気合いや根性が無ければ見抜かれ危険な目にあってしまうという、子供の頃からそうした意識の持ち方は自然に養われたのかもしれない。

 近年の稽古では技術の追求が気合いと根性を押さえ込んでいるような気がしている。つまりは、集中して自らの身体をつぶさに観察し続けることが稽古の中では何よりも重要なものであり、気合いと根性というより、「静なる覚悟」が技術を狂わせないものとして気合いと根性に変わり今の私を司っているように思う。もちろん大きな声を出すこともあるが、それは出しているというより出てしまうものであり、身体の自然な働きとしてその場その瞬間に応じた最適な発声(呼吸)となっているようにも思える。

 ただ、うるさければ良いという発声は声ありきの考え方なので、身体感覚の追求を求めるならば、そのあたりを冷静に考え納得出来るものでありたいと思うのが自然だろう。これからの時代に対処できる身体性はどのように身に付けていく必要があるのか、その時代に求められるものが武術にあるのならば、これからの時代を見据えた身体性を養う稽古法が重要であると考えている。(ここでいう身体性とは、身体を通じて感じられる発想であり、その人物に擦り込まれた性質や法則に作用する核の部分である)

 まだ若いA氏であるが、これからの稽古においてさまざまな発見が自らの身体と向き合う事で得られるものと思われる。一人でも黙々と楽しめるタイプは、独自の世界観を構築していける可能性が高いので。

 自らの一人稽古、門人や生徒達への指導、そうしたことが自然と身体を通じての学びとなり続け、これからの私を形付けて行くだろう。私自身も不思議に思うが、どうやらそういうふうになっているらしい。


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2019-08-09(Fri)
 
プロフィール

金山孝之


     金山 孝之
  Takayuki Kanayama


1975年生まれ
福岡県北九州市出身
東京都世田谷区在住

松聲館技法研究員

金山剣術稽古会主宰

Gold Castle
殺陣&剣術スクール主宰

高齢者のための剣術教室
クラーチ剣術教室講師


1999年
映画監督中田秀夫氏との出会いにより映画に出演。そのほかマンダムのモデルや舞台のプロデュース公演などをおこなう

2006年
小林照子先生とのご縁から
「からだ化粧」のモデルを務める

2009年
武術の道を志しそれまでの活動を一新し武術稽古と研究に励む

2011年
武術研究家甲野善紀先生に師事し「抜刀術」「剣術」「杖術」「体術」などの稽古と研究に取り組んでいる。また、先生の書籍、番組撮影、記録映像、その他演武等における打太刀や受けを務めている

2013年
刀と身体操作の技術向上を目指し裾野を広げるべく「Gold Castle 殺陣&剣術スクール」を発足

2014年
甲野善紀先生より
「松聲館技法研究員」を拝命
自身の経験を活かした指導法を各道場等でおこなっている
 
シニア住宅にて
「高齢者のための剣術教室」をおこなっている

日信工業株式会社の製品
「SAMURAI BRAKE」のプロモーション活動に携わる

2015年
「金山剣術稽古会」を発足
現代における武術稽古の必要性を身体と心で学べる場として活動している

2018年
「関西特別講習会」として定期的に関西地域での講習会を開催

2019年
BABジャパンよりDVD『古武術は速い』刊行

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